フリーランスにおすすめの クライアントとの契約書のひな形
契約書専門の行政書士の竹永です。
起業家、経営者、フリーランスの方が、 契約書で困らないようにアドバイスをしています。
フリーランスがクライアントと契約書を交わす方法
フリーランスの方が、納品しても報酬がもらえない、勝手にキャンセルされる、追加作業をさせられたのに追加料金がもらえない、みたいなケースをTwitterなどでみかけます。フリーランスが事前にクライアントとの間できちんと契約書を交わしているケースは、まだまだ少ないようです。
フリーランス協会さんでは、AI-CONドラフトさんとの協力により、契約書の雛形を提供しているとのことで、改善がすすんでいると思いますが、情報はあっても、仕事を受託する立場であることから遠慮があったり、そもそも契約書の知識がすくないためにどう活用していいかわからないといったハードルもあると考えられます。
何がポイントか?
フリーランスのライターさんやデザイナーさんは、どんな契約書を使えばよいのでしょうか?
以下のシチュエーションを想定
- ライティングやデザインなどを、フリーランスで受注する
- 受注金額はそれほど多くない(数十万円以内)
- 単発の取引(継続的受注とか複数契約とかではない)
- 著作権は渡さないで、あくまでクライアントに利用許諾する
- 著作者人格権は不行使とする
- クライアントは必要な範囲での改変はできるけどそれ以上はだめ
- クライアントは使いまわしや二次的利用がしたければあらかじめ許可が必要
契約書自体の方針として、
- あまり細かすぎたりボリュームの多い契約書にはしない
- あえて裁判や損害賠償は想定せずにシンプルな契約書にする
- できるだけ丁寧な印象を与えられるよう心がける
これらを念頭においたサンプル書式を公開します。大企業の契約書と比べると、すこし物足りない印象かもしれませんが、契約書は本来すべてケースバイケースです。(逆にシンプルな方がいいときもあります。)
フリーランスの契約書のサンプル(雛形)
以下が契約書雛形です。実情にあわない部分は上書きしてお使いください。オリジナルの取り決めがあれば特約として追加して活用してください。
(クライアントを「甲」、フリーランスを「乙」としています。)
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株式会社〇〇〇〇(以下「甲」といいます。)と、(屋号・フリーランス名)(以下「乙」といいます。)とは、(記事作成/イラスト作成/デザイン作成)業務の委託に関し、本日以下のとおり契約を締結します。
第1条 (業務の委託)
甲は、乙に対し、以下の(記事/イラスト/デザイン)(以下「本件著作物」といいます。)の作成を委託し、乙はこれを受託します。
(1) テーマ:(〇〇について、〇〇のイメージで、別途受領した仕様書によるテーマに基づいて、等)
(2) サイズや形態:(文字数〇〇文字~〇〇文字程度、データ形式、画像のサイズ等)
(3)資料等:(参考資料、ラフ、イメージ、指示書、仕様書、その他の定義や約束事がもしあれば)
第2条 (納入)
乙は甲に対し、本件著作物を、以下の形式によって、令和〇年〇月〇日までに、甲に対して納入するものとします。
記
(Word、PDF、JPEG、psdデータ等)にて、甲が指定するオンラインストレージ上にアップロードする(甲が指定するメールアドレス宛に本件著作物のファイルを添付してメール送信する)方法
2 甲は、前項の納入を受けた後、直ちに本件著作物を検査して、納入された本件著作物にミスがある場合や、あらかじめ甲の指定した仕様に合致しない場合は、その旨直ちに乙に対して通知するものとします。
3 前項の通知を受けた場合で、かつ、ミスまたは仕様との不一致が、明らかに乙の責に帰すべき事由によると認められるときは、本件著作物の納品日から(1年間/6ヶ月間/3ヶ月間)に限り、乙は、乙の費用と責任において、修正・訂正・補修等の作業を行います。
第3条(検品)
1 甲は、乙より本著作物の納入がなされた日から〇営業日(以下、「検査期間」といいます。)以内に、納入された本件著作物の検査を行うものとし、また、その検査結果について、検査を行った日から〇営業日以内に乙に通知するものとします。
2 乙により本件著作物の納入がなされた日から〇営業日が経過しても、甲が乙に対して、前項に基づく通知をしない場合には、本件著作物が前項所定の検査に合格したものとみなされます。
第4条 (権利の帰属)
本件著作物の著作権は乙に帰属します。ただし、甲が乙に対して、本契約の遂行にあたり提示した、作成指示書、参考資料、ラフ、スケッチ、画像等の各資料については、甲またはそれぞれの資料の著作権者に帰属するものとします。
2 本件著作物の制作途中に、制作案等の用途に使用して、納品物として採用されなかった制作物に関する著作権及び所有権は、乙に帰属します。
第5条 (利用許諾)
乙は、甲が本件著作物を、インターネット上に公開する目的で使用することを、甲に対し許諾します。
2 乙は、甲が本件著作物を、サイズの変更やトリミング等、前項の目的に必要な範囲内で改変することを許諾します。
3 甲が、他の媒体への掲載等、本件著作物を本条第1項の目的以外の目的で使用する場合には、あらかじめ乙の許可を得なければならないものとします。
4 甲は、乙の文書による同意なしに上記1および2で定める制作物の使用権、改変権を第三者に譲渡、移転、またはその他の処分を行うことはできません。
第6条(独占的利用許諾)
前条の許諾は、独占的なものとし、乙は、本件著作物を甲以外の第三者に対し、(1)印刷物としての複製、販売、(2)インターネット上(ホームページ、各種メディア、プレスリリース、SNS等)における掲載、(3)翻訳、の各形態で本著作物を利用することを許諾しません。
第7条 (著作者人格権)
乙は、甲が本件著作物を利用するにあたり、その利用態様に応じて本著作物のサイズ、色調を変更したり、一部を切除することを予め承諾します。但し、甲は、これら改変であっても本著作物の本質的部分を損なうことが明らかな改変をすることはできないものとします。
2 甲は、前項以外の改変を行う場合は、事前に乙の承諾を得なければならないものとします。
3 甲は、本件著作物を利用するにあたって、著作者の表示をすることを要しません。
4 本件著作物の公表名義は、乙の著作権の譲渡の有無及び著作者人格権の不行使にかかわらず、甲の名義とします。
第8条 (報酬)
甲は、乙に対し、本契約に基づく作成業務及び本件著作物の利用許諾の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、金〇〇万円(消費税込み)を支払うものとします。
2 甲は乙に対し、前項の対価を下記の銀行口座に振込む方法により支払うものとします。尚、振込手数料は甲が負担するものとします。
〇〇銀行 〇〇支店 普通口座 口座番号〇〇〇〇 名義 〇〇〇〇
3 本条の対価は、乙が本件著作物を納入した日の属する月の、翌月〇〇日までに、甲より乙に対し支払われるものとします。
第9条(報酬の追加又は変更)
前条に基づく報酬の金額に関して、本条各号のいずれかに該当する場合には、乙は、該当することとなった日から、 〇〇日以内に、甲に対し再度見積書を提出することにより、甲に対して報酬の追加又は変更を請求することができるものとします。
(1)甲の都合により、甲が本件著作物の内容や仕様を追加的に変更するとき
(2)甲の都合により、甲が本件著作物の納入期限を早めるとき
(3)甲が乙に提示した資料の誤り、不足、遅延等が原因で、乙による製作に掛かる費用が増加したとき
第10条 (二次的利用)
本件著作物が他の媒体等、二次的に利用される場合、甲はその利用に関し事前に乙の承諾を得なければならないものとします。
2 本件著作物の二次的利用にあたり、甲はその報酬を含め、具体的条件について乙と協議の上決定するものとします。
第11条 (キャンセル料)
本契約の締結後に、甲の都合により本契約を解除する場合には、違約金として、甲は乙に対し、本契約第8条に定める対価の〇〇%を直ちに支払うものとします。
第12条 (協議)
本契約に定めのない事項については、甲乙別途協議の上、決するものとします。
以上本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各自1通を保持する。
令和 年 月 日
乙
住所
氏名 印
甲
住所
氏名 印
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(上記はあくまでも竹永案、一例です。絶対にこう規定しなければいけないという意味ではありません。
〇〇となっているところを見落とさずに加除修正を行い、ご自身意味内容を理解してからお使いください。)
もっと「強め」の契約書がいいときは?
通常のビジネス契約書には、「損害賠償条項」「契約解除条項」「裁判管轄条項」などの、リスク対応の条文が入っています。また、成果物の保証範囲や免責を規定することで、受託者の責任を一定限度に抑えるような条文もあります。
こうした条文を盛り込むことはもちろん構いませんし、あなたのリスクを下げる効果を持っています。他の業務委託契約書の雛形を参考にして、こうした条項を追加することは検討に値します。
ただし、これらは逆にいうと相手の権利を制限したり、相手にとっては不利になったりする内容でもあります。そのため相手も身構えてしまったり、多くの修正を要望されたり、契約書の確認自体に時間がかかったりすることがあります。そうした交渉に慣れる必要がありますので、事前に専門家に相談できる体制をととのえておいたほうがよいでしょう。
クライアントに契約書を送る際のメールの書き方
クライアントに契約書を提示するメールの文案も考えてみます。
メールで契約書を送るときの文例
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株式会社〇〇
ご担当 〇〇〇〇 様
お世話になっております。
〇〇の〇〇です。
〇〇作成のご依頼誠にありがとうございます。
ご依頼の確認のために契約書の「下書き」を用意させていただきました。
■契約書の主な内容といたしましては、
・ご依頼の内容のご確認
・報酬の金額と支払期日のご確認
・著作権の取扱いについてのご確認
でございます。
お忙しいところお手数をおかけしますが、
御社のご認識と違っていないか、
念のためご確認ください。
もちろんご不明点はなんなりと申し付けてください。
有意義なお仕事を頂戴し、うれしく思っております。
今後とも引き続きよろしくお願いいたします。
〇〇
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上記のような内容のメールになるかと思います。
使うべきでない言葉、禁句としては、
×「あくまでも形式上のものです」
とか
×「かたちだけですので・・・」
みたいないい方です。
契約書ですので、形式上とか、かたちだけということはありません。いったん締結したら、双方に義務が生じます。(逆に、このように言われたからといって油断してはいけません)
で、下書きを送ると、相手がチェックして、すんなり「これでOK」と言ってくれる場合もあるし、「ここは変えてほしい・・・」と言ってこられる場合もあります。修正を指摘されるのは、慣れないと結構ショックだったりしますが、何度かやっているとポイントがつかめてきます。
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行政書士 竹永 大
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