【2019年】クラウドサイン? AI-CON? その他 今気になる契約書系リーガルテックをメモ
契約書専門の行政書士の竹永です。
起業家、経営者、フリーランスの方が、 契約書で困らないようにアドバイスをしています。 ただいま契約書に関する無料メール相談を実施しています。
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契約書の管理を劇的に快適にするリーガルテック
2年前くらいから日本でも急速に本格化した、契約書管理系のリーガルテック。海外ではもっと前から、日本でも契約書管理ソフトやサービス自体は複数あったのも知っていたんですが、正直使い勝手が重たいものが多く、現実的じゃないかなと思っていました。
ところが最近目立っているリーガルテック群は
①クラウド上で動いており、エントリーが気軽
②デザイン性、UI(ユーザーインターフェース)が良いから直感的に操作できる
③設計の軸にAIがあることの期待感
などの特長があり、
とにかく「これなら使いたい」
と思えるものばかりです。
具体的にどんなサービスがあるのか、個人的に注目しているものをメモします。(ちなみに、どこかの企業のまわしものではなく、あくまでもただの第三者として中立な立場でご紹介しています。念のため。)
契約実務はなぜ難しいのか?
まず契約書の管理、実務というのは、
①作成、②チェック、③締結、④保管・管理というフェーズがありまして、それぞれに重要な課題がありました。
まず①作成は非常に手間でした。契約書を作成するには、高度な専門知識を要するため 、弁護士事務所に依頼せねばならず、時間的にも金銭的にも非常にコストがかかるものでした。契約書はリスク予防に効果的と、頭ではわかっていても、この大きな作成コストが邪魔をして踏み切れないという実情があります。(歯医者に行った方がいいとわかっていても、高くて通えないようなイメージです。)
次に②チェックにも同様の壁がありました。チェックしなくてはと思っても、社内に「契約書のチェックができる」と堂々と言える人材はなかなかいるものではありません。チェックという仕事は可視化も定量化も難しいので、教育も管理もしくみ化もしきれず、しかたなく社長さんがチェックしているというのが多くの中小企業の現実です。
そして③締結ですが、これはなぜか時間を食うフェーズでした。なぜなら、清書した契約書をプリントアウトして、製本するのに手間がかかるのと、相手に郵送して返却してもらうのに、どれくらいかかるか読みにくい時間というブレーキが常に存在したからです。難しくはない作業なので重要視されないわりには、面倒だし時間が読めず、うっかり忘れるなどのミスも起こりやすいポイントでした。
さらに④保管・管理ですが、ただキャビネットに入れておけばいいくらいに甘く考えているととんでもない失態をまねく、時限爆弾のような業務でした。原本がどこかの棚にしまわれてしまうと、必要な時に取り出せないし、みつからない、そして期限がきても気が付かない可能性が高くなります。契約書の原本が必要になるときがいつなのか、それは誰にもわかりません。ある日突然必要になるからです。そして、期限もエクセルの一覧表に書き出して管理すればよいのですが、人間がやっているのでどうしても忘れてしまうのです。「検索と記憶のくりかえし」という、人間に向いているとは思えないようなタスクがこの保管・管理なのです。
要するに「時間的金銭的コストがかかる」という課題、「専門知識がいる」という課題、「忘れずに管理しなければならない」という課題が、契約書実務には存在しているのです。
これらの課題を、リーガルテックは解決しはじめています。
標準的な契約書なら半自動化できる
作成もチェックも、専門知識が必要なために高負荷、高コストだったわけですが、契約書にはもともと定型的な表現も多く、技術的には自動化も可能なようです。どこまでを求めるかによるのですが、作成を半自動的に行うサービス、チェックを効率的に処理してくれるサービスがあります。
もちろんなにもかもすべて可能なわけではありませんが、主にスタートアップビジネスに必要な、標準的なビジネス契約書はパターン化されており、対応可能な場面が多くあります。
料理に例えるなら、「好みの味付けや隠し味までとはいかないが、買い出しや仕込みや下ごしらえは自動化され、圧倒的にラクになった」みたいなイメージです。
この分野ではやっぱりAI-CONシリーズが第一選択です。
締結は電子化すれば劇的に楽になる
締結はいうまでもなく、電子化すれば簡単になります。いわゆる電子契約ですね。
自社も相手方もハンコを押しているから手間も時間もかかるわけで、メールの送受信のように電子的なやり取りにしてしまえば解決するわけです。
もちろんこのアイデア自体は昔からあって、実際に複数の企業が電子契約サービスを提供していたし、PDFでもオプション機能をうまく使えば同じことはできるのですが、電子契約自体、主に有効性おいてに懐疑的なムードがありました。「そんなやりかたで本当に大丈夫なのかな?」「本人性はどうやって担保するの?」と心配になってしまうわけです。
やはり日本には、長年にわたり慣れ親しんできたハンコの文化があります。説明しなくても「ハンコを押すという儀式」には妙におごそかな実感があるため、理屈抜きに尊重されてきたところもあります。
しかしクラウドサービスをつかうとその圧倒的な簡便さに感動して、もはや紙の契約書原本時代に戻りたくなくなってしまいます。いまのところ電子契約プラットフォームのファーストチョイスは、クラウドサインです。
保管・管理にもクラウドがやはり向いている
最後に保管・管理ですが、ここはまだ混沌としていて、どこが切り札を切ってくるか楽しみな部分です。原本の保管を外部委託できるようなサービスが主流でしたが、今後電子化の流れが進めば、そもそも紙のファイルで保管する必要が少なくなってくるので、サービス形態自体が物理的保管ではなくサーバーに代わってくるでしょう。
問題は、期限管理です。メールでお知らせを通知してくれる程度のものなら既存のアプリケーションでまかなうことができますが、契約書の期限管理というのは単に期日をリマインドすればできるほど簡単ではありません。期日がきたときにとられるべき複数のアクションがあり、そこから相手方の対応によってフローが枝分かれするからです。
たとえば契約が終了する1か月前に更新のお知らせを通知して、相手方の反応に応じて契約更新または解約のための手続き書類を送るとか、それが返送されてきたらどうするなどの、いくつかの選択肢と、それぞれの進捗状況をリアルタイムに把握できる機能が必要です。これがいままでの、エクセルで作表したり、メールでリマインドするといった「点」の管理では追いつきませんでした。
クラウドサービスを活用することにより、進捗状況を専用の画面でリアルタイムで共有できたり、各フローごとの書式が自動的に編集されたうえでアップロードされるようになれば、期限管理も飛躍的にラクに正確になります。さらに、紙の契約書が必要な場合であっても、同一の画面で管理できれば、よりありがたいのです。
いまのところ管理系で私が一番注目しているのは、Holmes(ホームズ)です。管理だけでなく締結も作成支援もついたサービス設計になっています。
(ただし、2019年2月2日現在、ホームズに関してはまだ未確認の機能もあるので、わかりしだいまた書きたいと思います。)
導入すべきかどうかの判断
一見、万能に見えるこれらのサービスですが、中小企業の契約実務は、実は個性的であり、何でもフィットするわけではありません。オーバースペックなものを導入するのは無駄ですし、期待過剰もすべきではありません。ほんとうにボトルネックになっている部分はどこなのか、見極めてちょうどいいものを導入すべきです。
とはいえ逆に、世の中の進歩に背を向けるかのように、契約管理を人力で続けるのはお勧めしません。今まではこれでやってきたんだなどといって、いつまでもエクセルで作表することにこだわったり、フォルダをいくつもつくって保管してみたりと、管理のための管理を続けることは最悪の選択です。
昔は駅の改札に駅員さんがいて、紙の切符に専用のハサミで切り込みを入れてもらっていました。そして同じく駅員さんが、改札を出る乗客から切符を回収することもしていました。その風景がなつかしいという人はいても、そのやり方を続けるべきだとか、戻すべきだという人はいないと思います。
業界地図は常に変わっている
ホットな分野だけに、ベストな選択は常に変わる可能性を秘めています。
今後もリーガルテック分野の機能追加を観察し、契約管理に悩めるお客様にも最適なサービスを紹介していきたいです!
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行政書士 竹永 大
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