契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

契約書は、3か所読めば9割分かる! その4(代金はいつ支払われるのか?)

契約書専門の行政書士の竹永です。

 

「3か所読み」の具体的な方法です。

  

この3か所だけは絶対チェック

 

状況説明を読もう(誰が誰に、何を、いくらで)

解除を読もう(どんなときに解除できる/されるのか)

損害賠償を読もう(どの程度賠償してもらえるか/させられるか)

 

 

 

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まずは最初のチェックポイントです。

 

状況説明を読もう(誰が誰に、何を、いくらで)

 

まずは、その取引(契約)の「あらすじ」をつかむ必要があります。

 

当事者、商品、価格、ようは誰が何をいくらで取引する契約なのかをつかんで、状況を把握しましょう。これらを意識的に探すように読むことで、素早く要点が頭に入ってきます。

 

そもそも誰と誰の契約で(前文でわかります)、何が商品・サービスで(これも前文、目的条項でほぼわかりますが、詳しいことが別紙に書いてあることもあります)、値段はいくらなのか(これも本文に書いてあることもあれば、別紙のこともあります)、いつどうやって支払うのか(これは契約書の支払条項をみるとわかります)、を確認するわけです。

 

いずれも契約書の前半を読むとほぼわかります。

 

特に重要な、「何を」「いくらで」の部分

 

特に重要なのは、「(A)何を」「(B)いくらで」の部分です。つまり目的としているものと、お金に関する部分です。ここは正確に読みとる必要があります。

 

ビジネス契約は「価値と対価の交換」ですから、一方がなんらかの商品やサービスを提供し、それに対して、もう一方が一定の代金を支払う約束になっているはずです。(セミナー講師なら当日のセミナーを、デザイナーならデザイン成果物を、専門家は顧問サービスを、大工さんなら工事を、メーカーならオリジナル商品を、それぞれお金と交換していますよね。)

 

よって、何の取引なのかという、仕事・サービスの内容と、いくらなのか、つまり対応するお金の金額と支払条件について、あいまいになっていないか、十分に具体的かを確認していきます。

 

(A)何を?

 

何が対象なのか、商品・サービスの詳細を確認しましょう。できるだけ具体的に読むことが重要です。

 

契約においては「相手もこう考えるだろう」、「わかってくれるだろう」、「なにかあれば言ってくるだろう」という「だろう」は禁物。事故のもとです。お互いの認識に齟齬顔ないかどうか、具体的に確かめなければなりません。

 

たとえば「井戸を掘ってほしい」と頼まれたとして、地面を掘ったけれど、水は出なかったとします。この場合、作業代金は請求できるのでしょうか? それともできないのでしょうか? それはその契約が「何を」ゴールに設定していたかによります。十分に契約の意図が読み取れるかどうかを確認しましょう。

 

契約のタイプ別の確認方法

  

ビジネス契約書をおおまかに4つに分けると、「渡す契約」、「提供する契約」、「貸す/許可する契約」、「条件を付ける契約」があります。

 

「渡す契約」=物理的に、あるいは権利など目に見えないもののときもありますが、渡すものがある契約です。当然ながら渡すものの内容を特定できる必要があります。

 

「提供する契約」=こちらは渡すのではなく労務を提供するものです。提供する労務の内容を具体的に確認できるかどうかよく見ておく必要があります。

 

「貸す/許可する契約」=貸すもの、許可する権利の内容(不動産の情報や権利の種類)を特定できるかどうか、その特定が正確かどうかがポイントです。

 

「条件を付ける契約」=どんな条件が何に対して働いているのかを見る必要があります。たとえばNDA(秘密保持契約)であれば、どの情報に対してどのような義務(ある特定の資料の内容を口外しないことなど、具体的な義務)があるのかを確認します。

 

 

「何を」のチェックポイント

 

  • 製品なら、具体的な仕様がわかるかどうか(細かく!)
  • サービスなら、やることとやらないことがはっきりわかるか
  • 特に業務委託の場合、完成することが目的か、行為自体が目的か
  • 貸す/許可する契約なら、対象を特定できる具体的な情報があるか
  • 別紙でもいいので仕事の内容、業務の範囲を明確にしているか

 

(B)いくらで? 

 

いくら払ってもらえるのか(支払う必要があるのか)、時期も含めて確認します。金額が大きな契約になってくると、分割払い、オプション、ロイヤルティ、手数料、・・・のように支払条項が複雑になることがありますから、慎重になりたいところです。

 

細かいことですが、報酬とは別に交通費などの経費が発生することがあり、これを別途請求できるのかどうか(あるいは諸経費は報酬に含まれているのか)は、重要なポイントです。金額が大きくない場合は軽視されがちですが、後からは言い出しにくいですし、わずかとはいえ請求金額が増えることには、発注側は敏感だからです。

 

つまり読むべき場所は、「支払」「支払条件」などの名前の付いた条文で、たいていは契約書の前半から中盤にあると思います。チェックするポイントは、代金額のほか、消費税が含まれるのか、いくらか、振込手数料はどちらが負担するのか、いつ支払われるのか、です。

  

「いつ」代金が支払われるかは要注意

 

特に期日はよく問題となります。「いつ支払われるのか」ということに着目してみましょう。場合によっては、金額以上に重大となるポイントです。

 

ちなみに下請法という法律の対象となる委託取引の場合は、支払のタイミングも決められています。

 

下請法の支払期日のルールは以下の通りです。

(ア) 当事者間の取決めにより,下請事業者の物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日)から起算して 60 日以内に支払期日を定めた場合は,その定められた支払期日
(イ) 当事者間で支払期日を定めなかったときは,物品等を受領した日
(ウ) 当事者間で合意された取決めがあっても,物品等を受領した日から起算して 60 日を超えて定めたときは,受領した日から起算して 60 日を経過した日の前日

 

簡単にいうと、発注者は原則として物品等を受領した日から60日以内に支払う必要があります。また、下請法が適用される取引なのに、当事者間で支払期日を定めなかった場合は、この法律により、物品等を受領した日(つまり納品日)にすぐ支払わなければならないことになります。

 

「納品日」が基準となりますので、たとえば品物を納入をしたのにいつまでも報酬が支払われないとか、受け取ったもののまだ使用開始していないからなどといって発注者が報酬支払も遅らせるなどといった行為は、下請法に抵触する可能性があります。

 

もちろん下請法はすべての取引に適用されるわけではありませんが、ひとつの基準を示してくれるものですので、契約書の段階でこうした基準から逸脱している場合は、適用のあるなしにかかわらず要注意といえるでしょう。

 

契約書に支払期日は書いてあるか?

 

そのようなわけで、いつ支払われるのかきちんと契約書で確認できることは重要です。契約書から、ちゃんと支払日が読み取れるでしょうか?

 

理想は「〇年〇月〇日に報酬を支払います」と、ピンポイントに書いてあることです。

ですがビジネス契約書では「月末締め、翌月末支払」というように、月で区切るものが多いです。

 

欲を言えば、「毎月〇日納品締切,翌月〇日支払」のように、具体的にいつが締切の基準になっているのかわかるような記載が望ましいです。

 

「いくらで」のチェックポイント

 

  • 支払額
  • 消費税額
  • 報酬の他に追加でかかる料金がないかどうか
  • 振込などにかかる手数料の負担
  • 「いつ」支払われるか(支払期日)がはっきりわかるか

 

 

 

 

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行政書士 竹永 大 

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