契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

「契約書なんてかたくるしいから、メールで発注しておこう」はなにか問題ある?

 

■対等な取引なんてない?

 

業者同士の契約でも、

発注側はお客様だからなあ・・。

 

 

お仕事をひきうけるほうは

あまり文句がいえないのが現実ですよね。

 

法律的には「契約自由の原則」というのがありまして、

取引は対等の立場で行われるべきですが。

それはあくまでも理想のはなしに聞こえます。

 

 

■メールや電話で発注完了、問題ある?

 

だから業者はメール一通、

あるいは電話でひとこと「たのむよ」 といえば発注が済んでしまうこともあります。

 

 

 

■下請法違反の可能性も?

 

 

とはいえそれがまかりとおってしまえば、

不当な契約関係でも継続しなければならなくなります。

 

 

そこで下請法という法律は一定の業務委託契約について、

業務を「発注」する側(つまり親事業者)に、 禁止事項をもうけています。

 

 

実は親事業者には

いろいろと守らなければならない事項が

法律できめられているのですね。

 

 

すこし具体的にいえば、

親事業者は次のような義務を負うと定められています。

 


①書面の交付義務(3条)

→ 取引内容に関する具体的記載事項を全て記載した書面を交付しなければならない。

 

②下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)

→ この期日は、納品日から60日以内で、かつできるだけ短い期間内。

 

③書類の作成・保存義務(5条)

→ 取引記録を作成し、2年間保存。

 

④遅延利息の支払い義務(4条の2)

→ 年14.6%の割合による遅延利息。


 

 

というわけで、

あらためて、

「面倒だから、メールや電話で発注してしまおう」

という行為を検討してみると、

 

発注側が親事業者だった場合、

 

上記の①にあるように、

いわゆる「3条書面」の交付義務が課せられているので、

禁止行為にあてはまる可能性があります。

 

 

そういう意味ではやはり 業務を委託するときは、

親事業者は下請業者にたいして、

発注書や契約書などちゃんと書面を発行しなければいけないのです。

 

 

記載事項もこまかく定められているため、

その内容もよく考えて 書面を作成する必要があります。

 

 

■ で? 何が書いてあればいいの?

 

 

具体的な記載事項ですが、

(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)

(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日

(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。

(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)

(5) 下請事業者の給付を受領する場所

(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日

(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)

(8) 下請代金の支払期日

(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期

(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日

(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日

(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法

 

 

という具合。

親事業者は、 これらの事項について記載した

書面 (3条書面、発注書)を、

下請事業者に直ちに発行しなければならないのです。

 

 

■電話はだめでもメールならいい?

 

 

ところで、この規定により、

電話のみの発注は違反となりそうですが、

では 「メール」で(の発注)はどうなのでしょう?

 

 

不可能ではないですが、

これにはちょっと注意が必要です。

 

 

書面の交付に代えて メールで発注することはできても、

当然のことながら 記載事項はすべて満たす必要があるからです。

 

 

さらに、メールで発注できることについて、

あらかじめ下請事業者の承諾を得る必要があります。

 

もし仮に承諾を得ずに電子メールで発注をしても、

書面交付義務違反となり得るので、

やはり親事業者は注意が必要なのです。