契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

無料サービスの契約性

無料であげたものが、 壊れていたといわれたら、 あなたは修理してあげるべきだろうか?

契約は 当事者の合意で成立する 法律的な約束である。

無償かどうかは、 契約の性質の問題だから、 タダで物をあげたり、 サービスを提供するのだって、 一種の契約にはちがいない。

金などをとって なにかしらの約束をするとして、 これを有償契約と呼ぼう。

有償契約とは、 売買契約や 賃貸借契約のように 当事者双方がお互いに 対価的意味のあるものを与えるという約束だ。

反対概念は、 無償契約である。

では ある契約が 有償か無償かで 契約の性質には なにか違いはあるのだろうか?

無償の契約でも、 契約は契約であるから、 有償の場合と同じ責任が生じると考えるべきであろうか?

たとえば、契約によって相手に 「引渡した物への責任」 はどうであろう?

無料であげたものについて、 隠れた瑕疵(もらったときには気がつかなかった欠陥) があった場合、 普通の売買契約と同じように、 交換したり修理したりといった責任は生じるのだろうか? (いわゆる瑕疵担保責任

商品を無料であげることは 無いと思われるかもしれないが、 マーケティング目的で試供品を 無料配布することはよくあることである。

また、 有料のものであっても、 なにかしら無料の物が くっついているケースもある。

たとえば、 昔はアプリケーションも、 ソフトウェアをなんらかのメディア(CD-ROMとか)に格納して、 それを売ったりしていた。

その場合、 メディア部分(CD-ROMとか)は、 感覚的にいっても目に見えるし、 有料で販売しているから いかにも有償契約であるといえる。

しかし、 中に入っている(メディアに記憶させてある) プログラム部分は、 厳密にいえばプログラムの著作物であって、

だとすると、 そのソフトウェアを利用できるためには、 プログラムの著作権者たるソフトウェア事業者と 消費者の間の「ソフトウェアの使用許諾契約」 が締結されていると考えられるだろう。

で、 契約内容によっては この使用許諾契約部分が 無償契約となることは充分あり得る。

(もちろんケースバイケースではあるが)

では、 もし仮にこの部分のみは無償契約だったとして、 事業者はこのソフトウェアプログラムに なんらかの隠れた欠陥があったとき、 その瑕疵の担保責任を負うべきだろうか?

ちなみに数日前から、 消費者との契約における 事業者の損害賠償責任について 検討してきたけれど、

債務不履行(3つの類型) → 損害賠償

不法行為 → 損害賠償

という論点を 確認してきたから、

・隠れた瑕疵があった → 瑕疵担保責任

という部分も、 テーマとしてちょうどいいような気がする。

ようするに 責任が生じるとされる 道筋がみえるということは、 それを契約書に規定したり、 契約によってその責任を排除したり、 あるいは限定(制限)したりといった、 テクニックがうまれるのだ。