契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

損害賠償

契約書が 有利とか不利とかいう 言い方はよくあるけれど、 契約書が有利とはそもそもどういう状態だろう。

契約書というのは、 約束したことを 紙に書いておくことであるので、

「一定の事実を証明しやすくなる」

という意味では、 それが存在することで 有利になるといういいかたもできる。

けれど、 いわば利己的な意味で、 一方が他方より有利な立場になるかというと、 それはあくまでも適切な範囲内でのことになる。

つまり、 ある取引がお互いにとって望ましいものであることが、 理想であるけれども、 ブランド品だから多少高くても買うとか、 お得先だから多少納期が短くてもがんばるとかいった、 嗜好の範囲、営業努力の範囲であれば、 それは市場経済のもっている傾向だろうと思う。

しかし それを逸脱するような 契約条項があれば、 無効と判断されるときがある。

この論点で 特に重要なのは、 事業者と消費者との間の契約である。

これに関する重要な法律といえば、 消費者契約法や、 特定商取引法が やはり筆頭である。

つまり、 企業が一般のお客さんにたいして、 なにか販売したりサービスを提供したりするとき、 契約書を交わしたり、 約款に書いてあることに従わせたりする場合の、 契約内容についての論点である。

たとえば、

いかなる場合も解除できないとか、 一切賠償責任は負いません

とかいった条項。

まあこれらは普通にありそうなんだけれども、 そういう条項があったとして、 有効になるのかどうか、 というはなしである。

「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」

あるいは、

事業者に責めに帰すべき事由があっても一切責任を負わない」 「事業者に故意または重過失があっても一切責任を負わない」

といった条項は、 有効であろうか?

あるいは、 有効性について どのように考えるべきなのか?

これを、 ひとまず 消費者契約法の観点に限定して 考えてみたい。

消費者契約法のもつ、 この種類の論点は、 当然、 企業と一般消費者とのあいだの取引に関する 規定なのだけれども、 その周辺には

民法の基本的な契約に関する考え方や、 損害賠償のあり方、 免責条項の考え方、 瑕疵とはなにか、

などなど、 ビジネスに関するさまざまな シチュエーションの、 想定演習みたいなものが含まれていて、 非常に示唆に富むフィールドである。

だから、 昨日説明した、 「覚書のつくりかた」なんかにも、 間接的にはすごく参考になるので、 具体的に説明したいと思う。

つづく