契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

契約書の収入印紙

契約書には印紙を貼ることがある

ということを、 知らない方もいる。

そう、 契約書には、 収入印紙というものを貼り付けることで、 印紙税という税金を納めることがある。

「ことがある」、 というのは、 課税文書ではない場合もあって、 (非課税文書) その場合は貼らなくてよいからだ。

また、 いくらの印紙を貼ればよいかも、 200円だったり、 4000円だったりと、 その文書の内容などで変わってくる。

つまり、 ひとことでいえない、 かなり面倒な制度になっている。

一般の方は、 印紙を貼るのかどうかくらい、 専門家なら即答できると思っていると思う。

しかし、 専門家になればなるほど、 この手の質問には答えにくくなる。

逆に、知りすぎているからだ。

あんな場合もある、 こんな場合もある、・・・

と例外をどんどん知って行くうちに、 やがて 貼るとも 貼らないともいえなくなる。

なにしろ、 国税庁のHPをみると、 まず、課税文書にあたるのかどうか (印紙を貼る必要があるか) という論点についてだけでも、


[平成25年4月1日現在法令等]

印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。 この課税文書とは、次の三つのすべてに当てはまる文書をいいます。

(1) 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により 証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。

(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。

(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。

例えば、文書に取引金額そのものの記載はないが、文書に記載されている単価、数量、記号等により、当事者間において取引金額が計算できる場合は、それを記載金額とし、また、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は、売上代金の受領書(第17号の1文書)に該当することになります。


という説明が書いてある。

話の入り口からして もうこの調子であるから、 いかに大変か(ややこしいか)お分かりになると思う。

気を取り直して、 請負契約書に貼る印紙は、 いくらなのかをみてみよう。

これは税額表にまとめられていて、 請負契約の場合だと、


記載された契約金額が 1万円未満 非課税 100万円以下 200円 100万円を超え200万円以下 400円 200万円を超え300万円以下 1千円 300万円を超え500万円以下 2千円 500万円を超え1千万円以下 1万円 1千万円を超え5千万円以下 2万円 5千万円を超え1億円以下 6万円 1億円を超え5億円以下 10万円 5億円を超え10億円以下 20万円 10億円を超え50億円以下 40万円 50億円を超えるもの 60万円 契約金額の記載のないもの 200円


となっている。

つまり、 この場合は 記載金額によって、 収入印紙の金額が変わるわけだ。

注意したいのは、 これがすべての契約書に共通というわけではない、 という点だ。

この点が、 若干わかりにくいかもしれない。

これは請負契約書などの 第2号文書の場合の説明だからで、 他にも20号まであるのだ。

さらにやっかいなことに、 今度は、じゃあ「記載金額」とはなんだ? という話になるではないか。

簡単に言えば、 請負契約なら報酬はいくらですよ、 とか書いてあればその金額の事 (つまり請負契約なら請負金額) のことだ。

ここまでは簡単だが、 では消費税はどうなるのだろうか。 消費税を入れた金額を、 上記の表にあてはめて印紙税額を計算するのか?

というと、 実は消費税は原則的に記載金額には含まれない。

国税庁の説明によれば


消費税の課税事業者が消費税及び地方消費税(以下「消費税額等」といいます。)の課税対象取引に当たって課税文書を作成する場合に、消費税額等が区分記載されているとき又は、税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めないこととされています。なお、この取扱いの適用がある課税文書は、次の三つに限られています。

(1) 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)

(2) 第2号文書(請負に関する契約書)

(3) 第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)


とされているからだ。

いや、そこまではいいとしよう。

では、こう言う場合はどうか。

請負契約が成立して、 業務に着手していたが、 途中で工期が延びたりして、 報酬を上乗せする必要がでてきたとする。

契約であるから、 請負金額の変更も、 きちんと契約しなければならない。

つまり契約金額を変更する契約である。 この場合、印紙は貼るのか?

同じ契約について、 契約金額だけを変更するのだから、 収入印紙はいらないような気もするが、 請負契約の場合は記載金額によって印紙税額も変わるから、 この変更によって印紙はどのように扱うか若干迷うのである。

長くなったので明日続きを書こうと思う。