契約書は、3か所読めば9割分かる!

契約書が難しいというイメージを打ち砕く

わかりやすい下請法のまとめ 契約書で下請法違反をしないために

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 行政書士の竹永大です。

 

契約書で下請法違反をしないために

 

業務を受託した下請事業者が不利にならないように、親事業者である発注者が守るべきルールを定めているのが下請法です。契約書の確認という意味でも、知っておく必要がある法律です。

 

業務委託契約書にかかわる下請法のポイントを知っておけば、より適切に契約書をチェックできるようになります。

 

  

 

下請法について知っておきたいことのまとめ 

 

そもそも下請法とはなにか

 

下請法は、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的とした法律、つまり下請事業者が親事業者から不当な扱いや行為を受けないように、ルールを設定するものです。

 

たとえばクライアントが代金をなかなか支払ってくれないときに、下請法の観点からこれに違反しているとみることができないかを検討できます。

 

また、そもそも契約書作成の段階で、下請事業者に不利な条項がある場合や、必要な情報が明確になっていないというミスも、下請法の遵守という観点からチェックできます。

 

ただし、下請法が適用されない取引もありますので、そもそもどのような取引に、下請法は適用されるのか、まずはその適用の基準を知る必要があります。

  

すべて下請法が適用されるわけではない

 

下請法の対象となる取引は「事業者の資本金規模」と「取引の内容」のふたつの要素によって定義されています。両方の要素が重なるところで下請法が適用されるという意味です。

 

ひとつめの要素は資本金規模です。つまり発注者と受注者の資本金のバランスが要件になっています。もうひとつは取引の内容で、この法律でいうところの「製造委託等」である必要があります。業務委託といっても様々な種類の取引があり、下請法ではおおまかに2分類されています。

 

これらの要素を複合して、親事業者と下請事業者を定義しています。(これらに該当する取引であれば、原則として下請法が適用されることになります。)まず下請法に該当することなのかどう、該当性の判断が正しくできるかどうかが非常に重要です。

 

まず資本金区分を覚える

 

資本金の区分は2種類あります。そして、どちらの区分が適用されるかは、委託業務の内容によります。

 

 

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(1) 物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合

政令で定める情報成果物作成委託とは=プログラム)

政令で定める役務提供委託とは=運送、物品の倉庫における保管、情報処理 )

 

⇒上記に適用される「親事業者の資本金と下請事業者の資本金の額」は

・資本金3億円超の事業者から ⇒ 資本金3億円以下の法人または個人へ発注

・資本金1千万円超3億円以下の事業者から ⇒ 資本金1千万円以下の法人または個人へ発注

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(2) 情報成果物作成・役務提供委託を行う場合

(ただし、(1)の情報成果物・役務提供委託を除く。)

 

⇒上記に適用される「親事業者の資本金と下請事業者の資本金の額」は

 ・資本金5千万円超の事業者から ⇒資本金5千万円以下の法人または個人へ発注

・資本金1千万円超5千万円以下の事業者から⇒資本金1千万円以下の法人または個人へ発注

 ---------

 

 

つまり製造業務等の委託であるかサービス業務の委託であるかで、資本金の基準が変わっています。

 

(1)の区分ですが、製造業務等の委託をする取引においては、委託者が資本金3億円超の法人事業者であって、受託者が資本金3億円以下の法人事業者または個人事業者であるか、または、委託者が資本金1千万円超3億円以下の法人事業者であって、受託者が資本金1千万円以下の法人事業者または個人事業者である場合に、下請法が適用される親事業者・下請事業者となります。

 

なお(1)の区分には、プログラムの作成と、運送、物品の倉庫における保管および情報処理が含まれます。

  

次に(2)の区分では先ほどの(1)のパターンで3億円だった資本金区分の水準が5千万円になっています。資本金5千万円を超える委託者から資本金5千万円以下の受託者に発注した場合または資本金が5千万円以下1千万円超の委託者から資本金1千万円以下の受託者に発注された場合に、下請法が適用される親事業者・下請事業者となります。

 

なお(2)の区分では、「 情報成果物作成委託」から「プログラムの作成」は除かれます。また「 役務提供委託」から「運送、物品の倉庫における保管及び情報処理」は除かれます。 

 

このように業務内容でまず2パターンに別れ、資本金区分もそれぞれ2パターンあるため、四通りの定義づけができあがります。

 

簡単にいえば、まず製造業務等か、サービス業務かで分け、次に委託者の資本金を調べて、自社の資本金とのバランス、つまり委託者の資本金よりも受託者の資本金が小さいかどうかで該当性が判断できることになります。

 

委託者の資本金が1千万円以下の場合は、どういった内容の業務委託であってもそもそも上記の要件にあてはまらないため、下請法の適用はありません。

 

下請法の対象となる親事業者の4つの業務

 

そもそも物品の製造とか情報成果物作成委託というのは具体的にどんな取引のことを指しているのでしょうか? 

 

下請法の条文には以下のように書いてあります。

第2条
 この法律で「製造委託」とは,事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

2 この法律で「修理委託」とは,事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。

3 この法律で「情報成果物作成委託」とは,事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。

4 この法律で「役務提供委託」とは,事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第2項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第1項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。

5 この法律で「製造委託等」とは,製造委託,修理委託,情報成果物作成委託及び役務提供委託をいう。

 

つまり、下請法の適用の前提となる親事業者の業務には「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」の4つがあることがわかります。

 

よって、これらの業務に係る委託取引を業として行うと、下請法の対象取引になるということができます。先ほどの「資本金区分」とあわせて、これらの4つの業務を具体的に知ることで、下請法に該当する取引なのかどうかがわかります。

 

それぞれ具体的に説明します。

 

1「製造委託」とは?

 

製造委託とは、親事業者が下請事業者に、特定の物品の製造(加工を含む)を委託することです。ようするになにかしら製品をつくってもらうことです。

 

「製造」とは、原材料たる物品に一定の工作を加えて新たな物品を作り出すことをいい、「加工」とは、原材料たる物品に一定の工作を加えることによって一定の価値を付加することをいいます。たとえば野菜の栽培を委託したとしても、「製造」にも「加工」にもあてはまらないため、製造委託には該当しません。

 

そして製造の対象は「物品」である必要がありますので、動産に限られることになります。建築物などといった「不動産を作ること」を委託しても、下請法が適用されません。また、電気などの無体物も物品には含まれないとされています。

 

ようするに原材料、半製品、部品、付属品やこれらの金型を委託対象物品として、製造を委託する取引です。有償のポスターの作成を委託するとか、商品に付属させるラベル、取扱説明書、ケース、包装資材、景品などとそれらの金型も対象物品になります。

 

製造委託には以下の「4つの類型」があるとされています。パターンを知っておけば該当性の判断に役立ちます。

 

類型1

 

「類型1」は自社製品の製造を外注するパターンです。

 

すなわち「物品の販売を業として行っている事業者が、その物品の製造を他の事業者に委託する場合」です。販売目的である商品を作らせている場合であり、その半製品、部品、附属品、原材料及びこれらの製造に用いる金型の製造や加工も含みます。

 

また、作業外注を含むので製造工程中の検査や運搬等も含まれますし、販売する物品の附属品の製造も含むので取扱説明書・保証書、容器、包装材料、ラベルなどの製造や加工も含まれます。

 

具体例としては、自動車メーカーがユーザに販売する自動車の部品を下請会社に作らせる取引が挙げられます。

 

類型2


「類型2」は、自社が製造を請け負う製品の部品などを他の事業者に製造させるパターンです。


よく似た取引に建築物の工事請負がありますが、不動産は下請法では「物品」ではないので適用対象とはなりません。


具体例としては、機器の製造を請負っているメーカーが、その機器に用いる部品の製造を、他のメーカーに外注する取引が挙げられます。(半製品や付属品、原材料、金型の製造も含みます。)

 

類型3


「類型3」は、修理に必要な物品の製造委託です。物品の修理を行う事業者が、その修理に必要な部品又は原材料の製造を他の事業者に委託するパターンです。


この場合、修理を請け負って行う場合だけでなく,自社で使用する機械を自ら修理している事業者が、その機械の修理に必要な特殊部品の製造を他の事業者に委託する場合も含まれます。


具体例は、機器を販売しているメーカーが、販売したその製品を修理する際に用いる部品を、他の部品メーカーに製造させる取引が挙げられます。

 

類型4

 

 「類型4」は、梱包材など、自ら使用又は消費する物品の製造を業として行っている事業者が、その物品の製造を他の事業者に委託するパターンです。

 

ようするに販売目的ではなく、自社で使用する物品があるときに、これを外部で製造させているケースです。具体的には工具や、機械、梱包用物品やその部品など、販売はしないけれども自社内で使用したり消費したりするもののことで、これらを自社で製造しないで、他社に製造委託している場合に該当します。


具体例としては、自社で製品運送用の梱包材を製造している精密機器メーカーが,自社で使用する製品運送用の梱包材の製造を資材メーカーに委託することが挙げられます。

 

物品の製造を外部に委託する取引は、幅広く下請法が該当してくることがわかります。

 

2「修理委託」とは?

「修理委託」とは、修理を委託する取引なのですが、事業者が業として請け負う物品の修理を他の事業者に委託することと、社内で使用する物品の修理を業として行っている場合にその修理の一部を他の事業者に委託することをいいます。

 

つまり修理委託のパターンはふたつあります。

 

類型1

 

まず「類型1」は、前提として自社が他社から修理を請け負っている場合です。物品の修理を業として請け負っている事業者が、その物品の修理行為の全部又は一部を他の事業者に委託するパターンです。

 

いってみれば修理サービスの再委託であり、たとえば自動車修理を行う業者が、その請け負った自動車の修理を他の事業者に委託する場合がこれにあたります。

 

類型2

 

次に「類型2」は、修理を請け負っているわけではない場合です。つまり自社が使う物品の修理を業として行っている事業者が、その物品の修理行為の一部を他の事業者に委託するパターンです。


自家使用する物品の修理(たとえば自社工場の設備を社内の修理部門で修理しているような場合)を行っている場合に、その修理の一部を他の事業者に委託するような場合をいいます。

 

3「情報成果物作成委託」とは?

 

情報成果物の作成を他の事業者に作らせる取引です。

情報成果物の例は

 

① プログラム

テレビゲームソフト

会計ソフト

家電製品の制御プログラム

顧客管理システム

 

② 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
テレビ番組

テレビCM

ラジオ番組

映画

アニメーション

 

③ 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
設計図

ポスターのデザイン

商品・容器のデザイン

コンサルティングレポート

雑誌広告

 

があります。

 

情報成果物というといまいち意味がわかりにくいですが、こうした具体例があるとイメージがわきやすいですね。

 

情報成果物作成委託にも、類型が3つあります。

自社が情報成果物を提供している場合、自社が情報成果物作成を請け負っている場合、そして、自社内で情報成果物を自らのために作成している場合にわかれます。

 

類型1

「類型1」は、情報成果物を提供している事業者が、その情報成果物の作成の全部又は一部を他の事業者に委託するパターンです。

 

たとえばソフトウェアの会社が販売用のソフトの作成を、他の業者に委託するとか、ユーザに提供する汎用アプリケーションソフトの一部を他のIT会社に開発させたりすることです。

 

情報成果物の「提供」とは、他者に対して情報成果物の販売や使用許諾を行うことであり、なにかの附属品として提供される場合や、制御プログラムとして物品に内蔵される場合、商品の形態、容器、包装等に使用するデザインや商品の設計などを商品に化体(かたい)して提供する場合も含まれます。

 

必ずしもデザインなどが単体で利用される場合だけではなくて、たとえば家電メーカーが、その家電製品の「取扱説明書」を外部委託してつくらせる取引も含まれるということです。

 

類型2

これに対して「類型2」は、情報成果物の作成を請け負っている事業者が、その情報成果物の作成の全部又は一部を他の事業者に委託するパターンです。自分が提供しているか、作成を請け負っているかで分類されています。


たとえば広告会社が、広告主から制作を請け負ったCM制作を、別の広告制作業者に委託してつくらせる取引がわかりやすいと思います。再委託のイメージですね。

 

類型3

さらに「類型3」は、自家使用する情報成果物の作成を業として行っている場合に、その情報成果物の作成の全部又は一部を他の事業者に委託するパターンです。

 

自分が使うものの作成を委託するわけで、たとえば自らの事業のために用いる広告宣伝物とか自社のホームページ等の作成を、すでに業務として行っている場合に、その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合がこれに該当します。

 

ただし、その情報成果物の作成は業務の遂行とみられる程度に行われていることが必要で、たとえば他の事業者に作成を委託しているソフトウェアと同種のソフトウェアを自社のシステム部門においては作成していないとか、システム開発に詳しい従業員が必要に応じソフトウェアを作成しているような場合などは、該当しないこととなります。

 

4「役務提供委託」とは?

 

「役務提供委託」とは、他者から運送、ビルメンテナンス、情報処理等の各種サービスの提供を請け負った事業者が、それらのサービスの提供を他の事業者に委託することをいいます。

 

ようするにサービスの再委託です。他者から請け負っている(他者に提供する)サービスというところがポイントで、逆にいうと「自ら利用する」サービスの場合は、役務提供委託には含まれません。

 

この点は、情報成果物の場合と比較して、事業者が「自家使用」する情報成果物の作成を行っている場合に、その情報成果物の作成の全部又は一部を他の事業者に委託することが情報成果物の作成委託に該当することと整理しておきたいところです。

 

たとえば、ビルメンテナンスの会社が、他社から請け負ったビルメンテナンスの仕事の一部を、外部委託(再委託)した場合は、役務提供委託に該当するわけです。

一方で、メーカーが自社工場の清掃を、メンテナンス会社に委託したとしても、(他者から請け負っている業務の再委託ではなく)自ら用いる役務となるので、役務提供委託には該当しません。

 

もちろん、どのようなサービスの委託であれ、それらがめぐりめぐって最終的には顧客や依頼主などのサービスにつながっているのだと思いますが、契約上や取引慣行上、他者に提供するサービスなのか、自ら利用するサービスなのかが判断されて、分けて考えられることになっています。

 

そのような理由から、たとえばカルチャーセンターが、講座の講義を個人事業者である講師に委託することは、役務提供委託には該当しないものと考えられます。 

  

で、下請取引だとどうなるのか?

 

さて資本金区分と、どんな委託取引が適用の対象となるのか(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託の4つ)がわかったので、これらを組み合わせれば該当性が判断できます。 

 

該当した場合にどうなるのかというと、下請法が適用されるわけですから、下請法のルールに従わなくてはなりません。

 

下請法は親事業者に対する義務と禁止事項を定めているので、契約書作成上も、親事業者の義務や禁止事項に抵触しないような内容かどうかチェックする必要があります。そこで、親事業者の義務と禁止事項をまとめます。

 

親事業者の義務

親事業者の義務は、全部で4つあります。

 

 

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書面の交付義務(発注の際は直ちに3条書面を交付すること。
支払期日を定める義務(下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。)
③書類の作成・保存義務 (下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。)
④遅延利息の支払義務(支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。)

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の4つです。

 

 

このうち契約実務という意味でも特に重要な、「書面の交付義務」と「支払期日を定める義務」について確認します。

 

 

書面の交付義務とは?

 

文字通りですが、親事業者は発注に際して、下記の事項をすべて記載している書面(下請法第3条に定義されているので、3条書面と呼ばれます)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。契約書で賄う場合には、記載事項が足りているか注意が必要です。

 

なにをいくらでやるのかが、口約束だったり、内容があいまいだったりすると、それだけでも下請事業者は非常に不利になってしまうために、明確にしようというねらいの規定です。

 

【3条書面に記載すべき具体的事項】
(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法

 

3条書面の交付は、原則として取引の都度必要です。もはや常連となっている委託先であっても、親事業者は取引の都度書面を交付する義務を負います。ただ下請取引は継続的に行われることが多いので、取引条件のうち基本的事項(例えば支払方法,検査期間等)が一定している場合には、これらの事項に関しては「あらかじめ書面により通知」すれば個々の発注に際して交付する書面への記載を省略することができます。

 

3条書面には、なにをいくらでやるのかが具体的に書かれていなければなりません。なにをやるのか「委託の内容がわかるように」記載する必要があります。抽象的な書き方だと記載したことにならないおそれがあります。取引の結果として下請事業者から提供されるべき物品若しくは情報成果物の品目、品種、数量、規格、仕様等、又は役務提供委託における役務の内容を記載します。

 

つまり下請代金の額についても、具体的に記載する必要があります。ところで、委託業務の性質によっては、発注の段階ではまだ金額が明確でない場合があり、この場合どのように記載すべきかが課題となります。

 

具体的な金額を記載できない場合は算定方法による

 

具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情がある場合出来高払いとか、一定期間の役務提供委託であって当該期間に提供した役務の種類及び量に応じて代金が支払われる場合など)であって、算定方法を記載できる場合には、下請代金の額として「算定方法を記載する」ことが認められています。

 

ただしこの場合は、下請代金の具体的な金額を確定した後、速やかに下請事業者へ書面にて交付しておく必要があるため、注意を要します。

 

記載例ですが、以下のように算定の要素を計算式であらわすこととされています。

 

(時間当たりの労賃単価○○円×所要時間数X+実際に調達した原材料費Y円)×1/歩留Z)+諸経費(○円+○円+○円+○円)+一般管理費一般管理費を除いた合計×○○%)

  

物品Aの分解工程の時間当たりの労賃単価○○円×当該工程の所要時間数
+物品Aの取替工程の時間当たりの労賃単価○○円×当該工程の所要時間数
+物品Aの組立工程の時間当たりの労賃単価○○円×当該工程の所要時間数
+実際に調達した原材料費Y円+出張費○○円
一般管理費一般管理費を除いた合計×○○%)

 

修理内容の種類別の基本料金○○円+下請事業者が修理に要した実費(部品代,交通費等)

  

工賃○○円+実際に海外から調達した原材料費Xドル×為替レート(下請事業者が調達した時点○月○日の☆☆市場の終値)+一般管理費一般管理費を除いた合計×○○%)

 

工賃○○円+原材料A金属を下請事業者が調達した時点○月○日のA金属★★市場の終値×調達したA金属の量+一般管理費一般管理費を除いた合計×○○%)

 

 

Aランク技術者の時間当たりの単価○○円×当該技術者の所要時間数
+Bランク技術者の時間当たりの単価○○円×当該技術者の所要時間数
+Cランク技術者の時間当たりの単価○○円×当該技術者の所要時間数
+下請事業者が作成に要した実費(交通費,△△費,▲▲費)

 

 

3条書面はどうやって提示すればよいでしょうか。

 

提示のやり方は、文字通り下請事業者にプリントアウトした紙の書面を渡す方法は当然として、メール等により電磁的に提示する方法もあります。

 

3条書面はメールで交付してもいい?

 

つまり、3条書面は、下請事業者の承諾を得ることで、書面に代えて電子メール等の電磁的方法で提供することができます。

 

承諾が前提です。3条書面を電磁的方法で提供するには事前に、下請事業者に対し、電磁的方法の種類及び内容を示し、書面または電磁的方法により承諾を得ておきます。

 

また、下請事業者は電磁的方法ではなく書面による交付を求めることができ、こうした申し出があったときは、親事業者は電磁的方法により提供できないことにも注意が必要です。

 

施行令

(情報通信の技術を利用する方法)
第2条 親事業者は,法第3条第2項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは,公正取引委員会規則で定めるところにより,あらかじめ,当該下請事業者に対し,その用いる同項前段に規定する方法(以
下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し,書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2 前項の規定による承諾を得た親事業者は,当該下請事業者から書面又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは,当該下請事業者に対し,法第3条第2項に規定する事項の提供を
磁的方法によってしてはならない。ただし,当該下請事業者が再び前項の規定による承諾をした場合は,この限りでない。

 

3条書面をメールなどの電磁的な方法で提供することについて、3条規則というルールで規定されています。

 

(ア) 電磁的方法
下請取引において書面の交付に代えることができる電磁的方法は以下のとおりであり,いずれの方法を用いる場合であっても,下請事業者が電磁的記録を出力して書面を作成できることが必要となる(3条規則第2条)。


○ 電気通信回線を通じて送信し,下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下「下請事業者のファイル」という)に記録する方法(例えば,電子メール,EDI等)

○ 電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し,当該下請事業者のファイルに記録する方法(例えば,ウェブの利用等)

○ 下請事業者に磁気ディスク,CD-ROM 等を交付する方法

 

 

つまり、メールでもいいし、ホームページを閲覧してもらってもいいし、保存した媒体を渡してもいいという意味です。ただし相手(下請事業者側)がプリントアウトするなどして書面を作成できるような状態である必要があります。

 

また、メールの場合は相手が保存できる状態でなければなりませんし、ホームページも単に閲覧したのみではなく、相手がファイルとして保存できるようにはからうなど、一定の措置が必要となります。具体的には、以下の留意点があります。

 

(イ) 留意事項
a 電子メールにより提供する場合
書面の交付に代えて電子メールにより電磁的記録の提供を行う場合は,下請事業者の使用に係るメールボックスに送信しただけでは提供したとはいえず,下請事業者がメールを自己の使用に係る電子計算機に記録しなければ提供したことにはならない。例えば,通常の電子メールであれば,少なくとも,下請事業者が当該メールを受信していることが必要となる(留意事項第 1-2-(1))。


なお,携帯電話に電子メールを送付する方法については,電子メールを記録する機能のない携帯電話端末への送付は認められないが,携帯電話端末にメモリー機能が備わっており,下請事業者が所有する特定の携帯電話端末のメールアドレスに必要事項を電子メールで送付することが予め合意されているなど,下請事業者のファイルに記録する方法と認められる場合には,3条規則第2条第1項第1号イに規定する電磁的方法に該当する。


b 書面の交付に代えてウェブのホームページを閲覧させる場合
書面の交付に代えてウェブのホームページを閲覧させる場合は,下請事業者がブラウザ等で閲覧しただけでは,下請事業者のファイルに記録したことにはならず,下請事業者が閲覧した事項について,別途,電子メールで送信するか,ホームページにダウンロード機能を持たせるなどして下請事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる(留意事項第 1-2-(2))。


c ファックスで提供する場合
受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は,書面の交付に該当するが,電磁的記録をファイルに記録する機能を有するファックスに送信する場合には,電磁的方法による提供に該当する(留意事項第 1-1-(1))。

 

 

契約書を3条書面とすることも可能

 

3条書面は、契約書に必要な記載事項をすべて記載することによって、契約書でまかなうこともできます(必要な事項が記載された契約書を締結していれば、3条書面を交付したことになります)。

 

ただし、発注を決定しておきながら契約書が後回しになるような場合、親事業者には「発注した場合直ちに書面を交付する」義務があるため、発注から契約締結までに日数を要してしまうならば、発注後直ちに、別途必要事項を記載した書面(つまり3条書面そのもの)を交付する必要がある点に注意が必要です。

 

 

3条書面のつくりかた

 

では下請法の要請する3条書面は具体的にどう作るのかというと、書式が決まっているわけではないため、要件を満たすものを実態にあわせて自由に作成できます。つまり下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面(3条書面)には「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則(3条規則)」に定める事項をすべて記載すればよいわけで、それを満たしていれば特に制約はないわけです。(もちろん、実態に即していることが必要です。)


たとえば契約書の内容が、3条規則で定める事項をすべて網羅している場合には、当該契約書等が3条書面となるので、あらためて独立した書面を作成しなおす必要もありません。

 

3条書面に印紙は必要か?

 

では、3条書面に印紙は貼るのでしょうか?

 

発注書には通常印紙は貼りません。よって、書面が単に親事業者から下請事業者に対して一方的に取引条件等を通知し、その作業を依頼するために作成される文書(発注書)にすぎない場合には、課税文書に該当しません。

 

ただし、内容の追加などによって契約の成立を証明する文書として作成された場合は課税文書になることがありますので注意してください。

 

 

3条書面の作成例

 

具体的には、3条書面は以下のような内容で作成することができます。

 

記載例

------------------------------------------------------------------------------------------------

              発注書

                       〇〇年〇〇月〇〇日

 

〇〇殿

                         株式会社〇〇

本日以下の通り発注いたします。

(1)品名及び規格・仕様等


(2)納 期


(3)数量(単位)

 

(4)単価(円)

 

(5)代金(円)

 

(本注文書の金額は,消費税・地方消費税抜きの金額です。支払期日には法定税率による消費税額・地方消費税額分を加算して支払います。)

 

(6)支払期日

 

(7)支払方法

 

(8)納入場所

 

(9)検査完了期日

 

-------------------------------------------------------------------------------------------------

 

3条書面作成時の注意点など

 

代金について

 

本体の価格に加えて消費税及び地方消費税の額も明示したほうが誤解が少なくて良いと思います。

 

たとえば

 

① 本体価格〇〇円 消費税等額 〇〇円 

② 本体価格〇〇円 +消費税額を加算して支払う旨の記載を加筆する(たとえば「本注文書の金額は,消費税・地方消費税抜きの金額です。支払期日には法定税率による消費税額・地方消費税額分を加算して支払います。」など)


③ 価格〇〇円(消費税込)

 

のように記載します。

 

振込手数料など(代金を下請事業者の金融機関口座へ振り込む際の手数料)を差し引いて支払う場合には、あらかじめその旨を記載する必要があります。

 

代金については、金額を記載する方法のほかにも、算定方法によって記載する方法があります。たとえば「別添の単価表に基づき算定された金額に、作成に要した交通費、基本作業費、原材料費の実費を加えた額を支払います。」などとしておき、単価表を添付すればよいわけです。ただし、算定方法によって記載する場合には、下請代金の具体的な金額を確定した後速やかに下請事業者へ書面で交付しなければならないので、この交付を忘れないように注意が必要です。

 

 

「納期」欄には、注文した物品を受領する期日を具体的に記入します。

「納入場所」欄には、受領する場所を記入します。

 

記載例は

①弊社本社○○課
②弊社○○工場○○係
③○○市○○町○○ ○○株式会社○○課

 

「品名及び規格・仕様等」欄には、物品や作業等の内容が十分に理解できるように具体的に記入する必要がありますので、なにか設計図や仕様書、検査基準等を交付している場合はそれを付記します。また、下請事業者の知的財産権を発注の内容に含み譲渡・許諾させる場合には譲渡・許諾の範囲を記載する必要があるとされています。

 

「検査完了期日」は、検査を行う場合には必ず記載します。「〇年〇月〇日」と具体的に記載するか、あるいは「納品後○日」「納品後○日以内」などとします。


「支払期日」も、支払年月日を具体的に記入するか、支払制度(締切日、支払日)を記入しても差し支えないとされています。ただし、「納品後〇日以内」という書き方では支払期日が特定されていないとみられるので避けるべきです。

 

記載例は
①毎月○日納品締切,翌月○日支払
検収締切日毎月○日,支払日翌月○日
③納品締切日毎月○日
 手形支払日翌月○日
 現金支払日翌月○日

 

下請代金を銀行に振り込んで支払う場合に「支払期日が金融機関の休業日に当たる場合には翌営業日に支払う」とする(つまり支払いを順延する)ことがありますが、その場合は下請事業者と合意した上でその旨の記載をしなければなりません。また、この方法によることができるのは、順延後の支払期日が受領から 60 日を超える場合には、順延期間は2日以内に限られるので注意が必要です。

 

 

 

  

支払期日を定める義務とは?

 

次に、支払期日を定める義務ですが、親事業者は、下請事業者との合意の下に、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の場合は下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務があります。

 

支払期日のポイントは、なんといっても60日以内というリミットです。キャッシュフローの都合などから支払いを遅らせたくても、60日以内の期日を約定する必要がありますし、もし期日を明確に定めなかった場合には、親事業者は「物品等を受領した日」に支払う義務を生じてしまいます。

 

具体的な支払期日のルールは以下の通りです。

 

(ア) 当事者間の取決めにより,下請事業者の物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日)から起算して 60 日以内に支払期日を定めた場合は,その定められた支払期


(イ) 当事者間で支払期日を定めなかったときは,物品等を受領した日

 

(ウ) 当事者間で合意された取決めがあっても,物品等を受領した日から起算して 60 日を超えて定めたときは,受領した日から起算して 60 日を経過した日の前日  

 

仮に、親事業者が、契約書や3条書面の記載方法を間違えるなどして、支払期日を定める義務に違反してしまいますと、「支払期日を定めなかったとき」として扱われ、その場合受領の際に代金を支払わないと支払遅延になってしまうおそれがありますから特に注意が必要です。

  

親事業者の禁止事項は11項目

 

親事業者には、上記の4つの義務のほかに、11項目の禁止事項が課せられています。たとえ下請事業者の了解を得ていても、禁止です。

 

1 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)

注文した物品等の受領を拒むこと。

2 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
物品等を受領した日から起算して 60 日以内に定められた支払期日までに下請代金を支払わないこと。

3 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)

あらかじめ定めた下請代金を減額すること。

4 返品の禁止(第4条第1項第4号)

受け取った物を返品すること。

5 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

6 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)

親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

7 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

8 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)

有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。

9 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)

一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

10 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)

下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。

11 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(第4条第2項第4号)費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。

 

 

1 受領拒否とは、その名の通り、委託の成果物を受け取らないことです。親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入してきた場合に親事業者が、下請事業者に責任がないのに受領を拒むと本法違反となります。

 

この場合の「受領」の概念は、検査の有無には関係がなく、まさに「受け取ったとき」のこととされているので、納期に受け取りを拒めば受領拒否に該当するおそれがあります。発注したものを受け取らないことがあり得るのかと疑問に思われるかもしれませんが、こうした制限が無いと、親事業者が都合よく発注内容をキャンセルできてしまい、「やっぱりいらない」などといったルーズな発注が可能になってしまいます。

 

発注の取消しをしたり、納期を延期して目的物を受領しないこと、発注後に恣意的に検査基準を変更して従来の検査基準では合格とされたものを不合格とすることなども、結局は受領拒否にあたると考えられます。

 

 

2 下請代金の支払遅延の禁止とは、親事業者が物品等を受領した日(役務提供委託の場合は役務が提供された日)から起算して 60 日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わないと、違反になるということです。

 

これは意外とよくやってしまうミスです。

 

なぜなら、法律の基準は受領した日または役務が提供された日から起算するため、うっかりこれより長い(遅い)支払い条件を設定してしまいがちだからです。たとえば受領後に、検査や検収に日数を要し、さらにそれらが完了してからその月の月末で締めて、それから翌々月の末日に支払う・・・などとやっていると、あっという間に60日以上経過してしまい、支払遅延となるおそれがあります。

 

そこで、締切制度で計算する場合、受領した月の末日で締めて、翌月末日までに支払うとしておけば支払遅延には該当しないで済みます。

 

よくやってしまうミスとして、下請事業者から請求書が届いてから支払うこととしていた場合に、請求書がなんらかの原因で遅れて、結果的に支払遅延になることがあります。禁止事項は下請事業者の了承があっても禁止なので、たとえ契約書で「請求書に基づき支払う」などとされていても、下請法上は、下請事業者からの請求のあるなしにかかわらず、受領後 60 日以内に定めた支払期日までに下請代金を支払う必要があります。もし請求書が届かなければ、下請事業者にたいして請求書を督促するなどしてでも間に合わせる必要があります。

 

また、銀行休業日に支払期日が到来した場合に、支払を翌営業日などに伸ばすと、結果的に支払遅延になってしまう可能性がありますが、こういうときに備えてあらかじめ書面で合意しておけば、2日以内の順延については(その日数以内で下請代金が60日を超えて支払われたとしても)問題ないとされています。また、同様の理屈で、順延後の支払期日が受領から 60 日(2か月)以内となる場合には、下請事業者との間であらかじめその旨合意・書面化されていれば金融機関の休業日による順延期間が2日を超えても問題はないとされています。

 

3 下請代金の減額とは、親事業者が発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず、発注後に減額することです。

 

ようするに後から代金を値引く行為の禁止ですので、一見するとあたりまえのようですが、現実には様々な名目で下請事業者に対して負担を強いている例がありますから注意が必要です。もちろん下請事業者側に責に帰すべき理由があれば、正当な減額ですので問題はありません。たとえば下請事業者の落ち度により瑕疵や納期遅れ等があるとして、受領拒否や返品をした場合に下請代金の額を減じたり、受領拒否や返品をするかわりに親事業者自ら手直しをして、その手直しに要した費用を減じることは問題ないわけです。

 

そういう合理的な減額ではなく、さまざまな名目や業界慣行によって発注後に不当に値引く行為が禁止されます。たとえば「リベート」「本部手数料」「管理料」「協賛金」「協定販売促進費」「協力金」「販売奨励金」「情報システム使用料」「物流手数料」などがあるといわれています。また、端数を切り捨てたり、消費税分を支払わないことなどもこれにあたります。

 

4 返品の禁止とは、親事業者が、下請事業者から納入された物品等を受領した後に返品すると、下請法違反になるということです。発注と違った商品が納品された場合や、その物品等に瑕疵があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合において、受領後速やかに不良品を返品することは問題ありません。また、通常の検査で発見できない瑕疵などがあり、ある程度期間が経過した後に発見された瑕疵についても、その瑕疵が下請事業者に責任があるものである場合には、物品等の受領後6か月以内であれば返品しても問題ないとされています。(逆に言えばこの場合でも6か月を超えた後に返品すると下請法違反となります。)

 

つまり親事業者の都合だけでは、受領後のキャンセルはできないという意味です。よくある違反の例は、売れ残った商品を下請事業者に引き取らせたり、取引先の都合でキャンセルになったからなどといって、いったんは受領した商品を引き取らせることなどです。

 

 

5 買いたたきも禁止されています。親事業者は、発注に際して下請代金の額を決定する際に、発注した内容と同種又は類似の給付の内容に対し通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めると「買いたたき」として下請法違反になります。

 

価格競争も経営努力のうちですので、どれくらいの値段になると買いたたきに該当するのかの判断は非常に難しいところですが、基準としては以下の要素による総合的な判断とされています。

 

(ア) 下請代金の額の決定に当たり,下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法
(イ) 差別的であるかどうかなど対価の決定内容
(ウ) 「通常支払われる対価」と当該給付に支払われる対価との乖離状況
(エ) 当該給付に必要な原材料等の価格動向

 

具体的に、買いたたきになる恐れのある行為の例としては、最初は「多量の発注」をすることを前提とした見積りを出させておいて、その見積単価を少量の発注しかしない場合の単価に適用して下請代金の額を定めるとか、あるいは 合理的な理由がないにもかかわらず、特定の下請事業者を差別して、他の下請事業者より低い下請代金の額を定めることなどが挙げられます。実際に下請事業者とよく話し合って、双方に納得のいく価格で決着していることが重視されます。

 

 

6 購入・利用強制とは、下請事業者に注文した給付の内容の均一性を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者の指定する製品(含自社製品)・原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすることです。

 

ようするに無理に材料を買わせるとか、自社製品の購入をせまったり、イベントのチケットをノルマにして買わせたり、取り引きしたいならこの保険に入れなどといって役務の利用を強いたりすることは禁止されます。表向きは強制でなくても、以後の契約を懸念させるなど、断れないような状況があれば下請法に抵触する恐れがあります。

 

7 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)は、いうまでもありませんが、親事業者が下請事業者が親事業者の本法違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。

 

報復をおそれて違反行為の申告ができないと困るので、この規定が存在します。

 

8 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止は、地味ですが重要な規定です。委託先に原材料などを有償支給している場合に、その代金の決済されるタイミングに気を配る必要があるからです。

 

親事業者は、下請事業者の給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料を有償で支給している場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのにこの有償支給原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、当該原材料等の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金から控除(相殺)したりすることにより、下請事業者の利益を不当に害することは禁止されています。

 

つまり、下請事業者が支給材を買う場合に、それを使った製品等の代金を支払うよりも前に、支給材の代金を下請事業者に支払わせてはならないわけです。

 

9 割引困難な手形の交付の禁止は、下請事業者に対し下請代金を手形で支払う場合に、一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付することにより、下請事業者の利益を不当に害する行為の禁止です。

 

なにが「割引困難な手形」に該当するのかは難しいところですが、一般的にはその業界の商慣行、親事業者と下請事業者との取引関係、その時の金融情勢等を総合的に勘案し
て、ほぼ妥当と認められる手形期間(繊維業は 90 日、その他の業種は 120 日)を超える長期の手形と考えられています。つまり実務的には手形期間で判断して、できるかぎりこれよりも短期の手形期間となるように気を付ければよいことになります。

 

10 不当な経済上の利益の提供要請の禁止は、下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより下請事業者の利益を不当に害する行為の禁止です。

 

つまり、たとえばワイロのように、購買・外注担当者等の、影響力を持った者が、下請事業者に対して「協賛金」「協力金」などといって何らかの名目で金銭を支払わせたり、あるいは要請に応じなければ不利益な取扱いをすることを示唆して、手伝いや雑用といった労働力の提供を要請することが禁止されています。下請事業者側も忖度して、つい応じてしまいそうな事例ですが、不当な利益の提供とみなされれば下請法に違反します。

 

 11 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しとは、下請事業者に責任がないのに、発注を取り消したり、委託内容を変更したり、費用を負担せずに受領後にやり直しをさせることです。

 

これらによって下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります。委託作業のやり直しをするには、通常は追加費用がかかるものと思いますが、こうした追加費用を支払わずに、親事業者の都合のみでやり直しをさせたりすることを禁止するものです。

 

たとえばデザインを委託した会社が、指示通りに納品したにもかかわらず、仕上がってきたデザインが気に入らないからという理由で追加の費用も支払わずにやり直させるとか、そもそも不明確な指示を与えていながら、仕上がりには不満だといって受領後に無料で追加作業をさせたりすることがこれにあたります。

 

 公正取引委員会の勧告事例をみると、やはり目立って多いのは3番目の、下請代金の減額です。

 

 

 

 

まとめ

 

下請法が適用される場合は、親事業者には4つの義務と11の禁止事項があります。たとえ下請事業者の了解を得ているなどして、親事業者に違法性の意識が無かったとしても、規定に触れれば下請法違反になるので、契約書作成においても注意が必要です。

 

ともあれ、やはりまずは正しく「該当性」の判断ができるように、親事業者の業務の定義と、資本金区分をおさえておきましょう。

 

 

 

 

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