契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

何度も同じ取引が連続するときは ・・・ 基本契約書をつくって効率化しよう!

 
 
 
 

■基本契約ってなに?

 
 
基本契約(きほんけいやく)とは、
なんども同じ取引を繰り返すタイプの契約です。
 
 
(「基本」といっても
「簡単」な契約という意味ではありません。)
 
 
 
たとえば工場が原材料を毎月仕入れるときの、
売買契約は、具体的数量などはその都度変わりますが、
基本的な流れや検品方法などは一度決めたら同じことがほとんどです。
 
 
人材派遣契約のように、
派遣先と派遣元との間でかわされる契約も、
労働者ごとに契約しますが、根っこは同じです。
 
 
つまり基本契約とは、
これから何度も同じ取引を継続するから、
契約の共通するところは、
あらかじめひとつの契約にまとめて規定しておこう、
という契約の形です。
 
 
タイトルは、
 
「基本契約書」
 
としたり、
 
「継続的売買基本契約書」
 
などとします。
 
 
(タイトルに基本契約書と書かれていなくても、
内容はそうなっていることもまれにあります。)
 
 
では、基本契約だけ結んでおけば、
その後の反復する取引は全てカバーできるのでしょうか?
 
 
 

■基本契約書だけでいいの?

 
 
 
原則として基本契約だけ、
ということはありえません。
 
 
あくまでも、
これから何度も同じ取引をするから、
共通する部分だけをまとめておこう、
という発想のため、
逆に言うと、
 
 
共通しない部分
 
 
があるはずだからです。
そこはどうするかというと、
「個別契約」で補う必要があるのです。 
 
 

■個別契約って?

 
 
たとえば
工場が原材料の仕入れを継続的に行う場合の、
その原材料の名称や数量などは、
いくら反復するとわかっていても、
その都度指定しなければ明確にはなりません。
 
 
 
あるいは人材派遣契約によって、
派遣元から派遣先に労働者が派遣されることまで基本契約できめられても、
具体的にいつ、誰が派遣されるのかは、
別途明確にする必要がありますよね。
 
 
 
そこで、
基本契約に基づいて行われる個々の取引については、
別途、その都度契約を成立させていく必要があり、
こうした個々の契約が「個別契約」と呼ばれます。
 
 
 

■「個別契約書」を取り交わさなくてはいけないの?

 
 
 
ただ、
そもそも反復継続的な取引に用いるのに便利なように、
基本契約書を作成するので、
ここでまた個別契約書を作り込んでしまうと、
かえって手間がかかります。
 
 
 
そこで、
個別契約の成立方法は、
基本契約書で任意に規定することができます。
 
(これは結構重要なポイントです。)
 
  
実際、
 
 
「発注書と受注書のやり取りで、
個別契約は成立する」
 
 
みたいに
簡易に成立できるように定める例が多いのです。
 
 
 
こうしておくと、
実務では発注書などとやり取りするだけで、
個別契約は正常に成立していくことになります。
 
 
 

■具体的にはどうやってつくるの?

 
 
 
このように基本契約では、
まず「個別契約がどのような方式で成立するか」を
確認してから作成します。
 
 
よくあるパターンは、
 
 
・発注書を送り、それに対応する受注書が届いたら個別契約が成立する。
 
・発注書を送り、それに(◯日以内に)異議がでなければ個別契約が成立する。
 
 
などといった、
「発注書などのやりとり」で
個別契約が成立すると定めるものです。
 
 
 
もちろん、
きちんと「個別契約書」を交わすことで成立する、
 としても間違いではありません。
 
 
 
大切なのは、
やり方がきちんと決めてあって、
双方で認識がずれなくすることです。
 
 
 

■個別契約の成立要件が重要な理由

 
 
  
契約が成立する方法が
なぜこんなに大事なのかというと、
発注者は
 
「注文した」
 
と思っていても、
受注者は
 
「まだ正式に受注したわけではないよな」
 
と思っていた、
などのすれ違いは意外と起こりうるからです。
 
 
本当に受注してなかったなら問題ありませんが、
いったん成立した契約を後からやめたいという場合は、
契約解除の問題になり、
賠償責任などのトラブルになりかねません。
 
 
 

■他にはどんなことを決めておくと良い?

 
 
 
基本契約書では、
反復継続する取引における、
「あらかじめ共通する項目」を規定すればよいわけですから、
一般的なビジネス取引契約と大きく違うわけではありません。
 
 
つまり、
 
 
・もし基本契約と個別契約が食い違っていたらどちらを優先適用するか、
 
・代金はいつどうやって支払われるのか、
 
・商品等はどのように引渡し、だれがどうやってチェックするか、
 
知的財産権がある場合はどちらがどう処理するのか、
 
・契約解除などができる場合はその理由、
 
・損害賠償が生じたらどうするのか、
 
 
などを決めます。
 
 
 

■ひな形は?

 

 

基本契約のひな形は、
ネット上でも「基本契約書」などと検索することで用意に入手できます。
 
以下は、
まず全体の構造を理解していただくための、
サンプル基本契約書と、
より具体的な事例として人材派遣の基本契約書例です。
 
 
------------------------------------------
 
 
  サンプル基本契約書
 
 
株式会社〇〇〇〇(以下「甲」という)と、株式会社〇〇〇〇(以下「乙」という)とは、継続的に販売する商品の買受けについて、以下の通り契約(以下「本契約」という)を締結する。
 
(基本契約)
第1条  本契約は、別段の定めのない限り、当事者間において継続的に発生する○○○○に関する商品の売買取引について規定するものであり、当該取引の基本的条件について、個別契約において特約のない場合は、本契約の規定が適用されるものとする。
 
 
(売買契約)
第2条  売買商品の品名、数量、単価、引渡条件、代金支払期限及び方法その他取引条件は、個別契約において定める。
 
 
(個別契約)
第3条  個別契約は、当事者が相手方当事者に対し提出する注文書と甲の交付する注文請書の交換により成立する。
2 前項の規定は、甲乙双方の合意により、その他簡易で迅速な方法により個別契約の成立とみなすことを妨げない。
 
 
(引渡)
第4条  当事者は、納入期日、数量、引渡場所等、相手方当事者の指定に基づき商品を持参または送付して引渡すものとし、引渡完了までの一切の費用は、当該持参する当事者の負担とする。
2  商品の引渡は、所定の検査基準に基づく検査及び検収により完了する。
 
 
(危険負担)
第5条  商品の引渡完了以前に生じた商品の滅失、毀損、その他の一切の損害は、販売側当事者の責に帰すべきものを除き甲の負担とし、商品の引渡完了後に生じたこれらの損害は、購入側当事者の責に帰すべきものを除き乙の負担とする。
 
 
(品質保証)
第6条  販売側当事者は、納入商品につき、以下の事項を保証する。
① 原材料、品質、機能、表示、その他納入商品に関する一切の事項について、関連諸法規、諸条令、所定の品質規格基準に違反していないこと
② 第三者の有する工業所有権、著作権、肖像権、プライバシーの権利その他一切の知的財産権を侵害していないこと
③ 原産地、原材料あるいは品質に関し、虚偽の表示をしていないこと
④ 不正競争防止法の規定する不正競争に該当する行為をしていないこと
 
 
(代金の支払)
第7条  売買代金は、個別契約に基づく支払期日に現金または手形で支払う。
 
 
(契約の解除)
第8条  当事者が次の各号の一つに該当する場合、期限の利益を失い、相手方に対し催告をしないで、直ちにこの契約及び個別契約を解除できる。
① この契約あるいは個別契約の条項に違反したとき
② 銀行取引停止処分を受けたとき
③ 第三者から強制執行を受けたとき
④ 信用状態の悪化等あるいはその他契約の解除につき、相当の事由が認められるとき
 
(有効期間)
第9条  本契約の有効期間は、平成〇〇年〇〇月〇〇日より満1年とする。ただし、期間満了の3ヶ月前までに、当事者の一方又は双方より、書面による契約条項の変更又は解約の申入れがなされない場合は、同一の条件にてさらに満1年自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
 
(協議解決)
第10条  この契約に定めのない事項又はこの契約の条項の解釈に疑義を生じたときは、甲乙協議のうえ、定めるものとする。
 
以上を証するため、本契約書を2通作成し、甲乙記名捺印のうえ、甲乙各自1通を保有する。
 
  平成〇〇年〇〇月〇〇日
 
甲 住所
氏名 〇 〇 〇 〇     印
 
乙 住所
氏名 〇 〇 〇 〇     印
 
------------
 
人材派遣の例
-------------
 
 

         労働者派遣基本契約書

 

(派遣先)株式会社〇〇〇〇 (以下「甲」という。) と、(派遣元)株式会社〇〇〇〇(以下「乙」という。) とは、乙がその労働者を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。) に基づき、甲に派遣するにあたり、次の通り基本契約を締結する。

 

(目的)

第1条    本契約は、乙が、労働者派遣法及び本契約に基づき、乙の雇用する労働者(以下「派遣労働者」という。)を甲に派遣し、甲が派遣労働者を指揮命令して業務に従事させることを目的とする。

 

(総則)

第2条    甲及び乙は、労働者派遣を行い若しくは労働者派遣を受け入れるに当たり、それぞれ労働者派遣法、その他関係諸法令、派遣先が講ずべき措置に関する指針(以下「派遣先指針」という。)及び派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(以下「派遣元指針」という。)、並びに暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律及び暴力団排除条例を遵守し、適正な業務を行うものとする。甲及び乙の各従事者についても同様とする。

2  本契約は、特に定めのない限り、本契約有効期間中のすべての労働者派遣に係る次条第1項の個別契約に適用する。

 

(個別契約)

第3条    甲及び乙は、乙が甲に労働者派遣を行う都度、労働者派遣法及び同法施行規則等の定めに   基づき、派遣労働者の従事する対象業務の内容、就業場所及び組織単位、指揮命令者の氏名、派遣期間、派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間、安全及び衛生に関する事項、派遣元責任者及び派遣先責任者の氏名、派遣労働者の人数、その他労働者派遣に必要な細目について定める労働者派遣契約(以下「個別契約」という。)を締結する。

2  乙は、前項の個別契約に定められた業務(以下「派遣業務」という)の遂行に必要とされる技術・能力・経験等を有する派遣労働者を選定のうえ、労働者の派遣を行い、甲に対し当該派遣労働者の氏名、性別、その他労働者派遣法及び同法施行規則等に定める事項を通知しなければならない。

 

(派遣受入期間の制限のある業務と抵触日通知等)

第4条    甲及び乙は、派遣就業の場所ごとの同一の組織単位の業務(派遣受入期間の制限のない労働者を除く。)について、派遣可能期間を超える期間、継続して労働者派遣を受け入れ又は行ってはならない。甲は、これらに該当する場合について個別契約を締結するに当たり、あらかじめ、乙に対し、当該派遣受入期間制限(事業所単位及び組織単位)に抵触することとなる最初の日(以下「抵触日」という。)を書面の交付等により通知するものとする。個別契約の締結後に、甲において派遣受入期間を定め、又はこれを変更する場合も、その都度、乙に対して、同様の方法により抵触日の通知をするものとする。

2  乙は、甲の派遣受入期間が前項の抵触日の1か月前に至ったときは、当該日から抵触日の 前日までの間に、抵触日以降継続して労働者派遣を行わない旨を甲及び派遣労働者に通知するものとする。なお、当該抵触日の前日をもって派遣受入期間が終了する場合には、乙はその旨を併せて派遣労働者に通知する。

 

派遣労働者の特定を目的とする行為の制限)

第5条    甲は、労働者派遣契約を締結するに際し、派遣労働者を特定することを目的とする行為(受け入れる派遣労働者を選別するために行う事前面接、履歴書の送付要請、若年者への限定、性別の限定、派遣労働者の指名等)をしないよう努めなければならない。また、乙は、これらの行為に協力してはならない。なお、派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者が、派遣就業を行う派遣先として、適当であるかどうかを確認する等のため自らの判断の下に派遣就業開始前の事業所訪問若しくは履歴書の送付又は派遣就業期間中の派遣終了後の直接雇用を目的とした履歴書の送付を行うことは、この限りではない。

 

(金銭の取扱い、自動車の使用その他特別な業務)

第6条    甲が、派遣労働者に現金、有価証券、その他これに類する証券及び貴重品の取扱いをさせ、又は自動車を使用した業務その他特別な業務に就労をさせる必要がある場合には、甲の管理監督責任のもと甲乙間で別途定める。

 

(派遣先責任者)

第7条    甲は、労働者派遣法及び同法施行規則の定めに基づき、自己の雇用する労働者(法人の場合には役員を含む。)の中から、事業所その他派遣就業の場所ごとに所定人数の派遣先責任者(物の製造業務派遣の場合には製造業務専門派遣先責任者を含む。以下同じ。)を選任するものとする。

2 派遣先責任者は、派遣労働者を指揮命令する者に対して、個別契約に定める事項を遵守させ るほか、適正な派遣就業の確保のための措置を講じなければならない。

 

(派遣元責任者)

第8条    乙は、労働者派遣法及び同法施行規則の定めに基づき、自己の雇用する労働者(法人の場合には役員を含む。)の中から、事業所ごとに所定人数の派遣元責任者(物の製造業務派遣の場合には製造業務専門派遣元責任者を含む。以下同じ。)を選任するものとする。

2  派遣元責任者は、派遣労働者の適正な就業確保のための措置を講じなければならない。

 

(指揮命令者)

第9条    甲は、派遣労働者を自ら指揮命令して自己の事業のために使用し、個別契約に定める就業条件を守って派遣業務に従事させることとし、自己の雇用する労働者(法人の場合には役員を含む。)の中から就業場所ごとに指揮命令者を選任しなければならない。

2  指揮命令者は、業務の処理について、個別契約に定める事項を守って派遣労働者を指揮命令し、契約外の業務に従事させることのないよう留意し、派遣労働者が安全、正確かつ適切に派遣業務を処理できるよう、派遣業務処理の方法、その他必要な事項を派遣労働者に周知し指導する。

3  指揮命令者は、前項に定めた事項以外でも甲の職場維持・規律の保持・営業秘密及び個人情 報等の漏洩防止のために必要な事項を派遣労働者に指示することができる。

 

苦情処理

第10条 甲及び乙は、派遣労働者からの苦情の申し出を受ける担当者を選任し、派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理方法、甲乙間の連絡体制等を定め、個別契約書に記載する。

2  甲及び乙は、派遣労働者から苦情の申し出があった場合には、互いに協力して迅速な解決に努めなければならない。

3  前項により苦情を処理した場合には、甲及び乙は、その結果について必ず派遣労働者に知らせなければならない。

 

(適正な就業の確保等)

第11条 乙は、甲が派遣労働者に対し、個別契約に定める労働を行わせることにより、労働基準法等の法令違反が生じないよう労働基準法等に定める時間外、休日労働協定、その他所定の法令上の手続等をとるとともに、適正な就業規則を定め、派遣労働者に対し、適正な労務管理を行い、甲の指揮命令等に従って職場の秩序・規律・営業秘密を守り、適正に業務に従事するよう派遣労働者を教育、指導しなければならない。

2 甲は、派遣労働者に対し、労働基準法等の諸法令並びに本契約及び個別契約に定める就業条件を守って派遣労働者を労働させるとともに、当該派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、セクシャルハラスメントの防止等に配慮するとともに、診療所、給食設備等の施設で派遣労働者の利用が可能なものについては便宜の供与に努める。

3 甲は、乙が行う派遣労働者の知識、技術、技能等の教育訓練及び安全衛生教育並びに派遣労働者の自主的な能力開発について可能な限り協力するほか、派遣労働者と同種の業務に従事する甲の労働者に対する教育訓練等については、派遣労働者もその対象とするよう必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければならない。

4  乙は、派遣業務を円滑に遂行する上で有用な物品(例えば安全衛生保護具など)の貸与や教 育訓練の実施をはじめとする派遣労働者の福利厚生等の措置について、必要に応じ、甲に雇用され、派遣労働者と同種の業務に従事している労働者との均衡に配慮して、必要な就業上の措置を講ずるよう努めなければならない。また、甲は、乙の求めに応じ、その指揮命令下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事している労働者等の賃金水準、教育訓練、福利厚生等の実状を把握するために必要な情報を乙に提供する等の協力に努めるとともに、乙が派遣労働者の職務の成果等に応じた適切な賃金を決定できるよう、派遣労働者の職務の評価等に協力するよう努める。

5  乙は、派遣労働者の賃金の決定に当たっては、派遣労働者と同種の業務に従事する甲の労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、派遣労働者と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準や派遣労働者の職務の内容等を勘案するよう努めるとともに、派遣労働者の職務の成果等に応じた適切な賃金を決定するよう努める。

6  甲の派遣労働者に対する派遣業務遂行上の指揮命令は、労働者派遣契約に定める甲の就業に 関する指揮命令者が行うものとし、当該指揮命令者の不在の場合の代行命令者についても、派遣労働者にあらかじめ明示しておくよう努めるものとする。

 

(安全衛生等)

第12条 甲及び乙は、労働基準法労働安全衛生法等に定める規定を遵守し、派遣労働者の適正な労働条件、安全衛生の確保に努めるものとする。

2  甲は、乙から派遣労働者に係る雇入れ時の安全衛生教育の委託の申し入れがあった場合には、可能な限りこれに応じるよう努める等、派遣労働者の安全衛生教育に必要な協力や配慮を行うものとする。

3 甲は、労働安全衛生法に基づき、派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を講ずるとともに、派遣労働者の安全衛生管理につき適切な管理を行うものとする。乙は、甲の行う安全衛生管理に協力し、派遣労働者に対する教育・指導等を怠らないように努める。

4 万一、乙の派遣労働者について派遣中に労働災害等が発生した場合については、甲は、乙に直ちに連絡して対応するとともに、労働者死傷病報告書の提出については、甲乙それぞれが所轄労働基準監督署長に提出するものとする。なお、甲は、所轄労働基準監督署長に提出した報告書の写しを乙に送付しなければならない。

 

派遣労働者の交替等)

第13条 派遣労働者が就業するに当たり、遵守すべき甲の業務処理方法、就業規律等に従わない場合、又は業務処理の能率が著しく低く労働者派遣の目的を達しない場合には、甲は乙にその理由を示し、派遣労働者への指導、改善、派遣労働者の交替等の適切な措置を要請することができる。

2  乙は、前項の要請があった場合には、当該派遣労働者への指導、改善、派遣労働者の交替等 適切な措置を講ずるものとする。

3  派遣労働者の傷病その他、やむを得ない理由がある場合には、乙は甲に通知して、派遣労働 者を交替させることができる。

 

(業務上災害等)

第14条 派遣就業に伴う派遣労働者の業務上災害については、乙が労働基準法に定める使用者の災害補償責任並びに労働者災害補償保険法に定める事業主の責任を負う。通勤災害については、乙の加入する労働者災害補償保険法により派遣労働者は給付を受ける。

2  甲は、乙の行う労災保険の申請手続等について必要な協力をしなければならない。

 

(派遣料金)

第15条 甲は、乙に対し、労働者派遣に対する対価として派遣料金(消費税は別途)を支払う。派遣料金は個別契約締結の都度、業務内容等により、甲乙協議のうえ別途定める。

2 割増し派遣料金、派遣料金の支払方法等については甲乙協議のうえ別途定める。

3 個別契約の期間中でも業務内容の著しい変更等により、派遣料金改定の必要が生じた場合には、甲乙協議の上、派遣料金の改定をすることができる。

4 甲の従業員のストライキ、その他甲の責に帰すべき事由により、派遣労働者の業務遂行ができなくなった場合には、乙は債務不履行の責を負わず甲に派遣料金を請求することができる。

 

年次有給休暇

第16条 乙は、派遣労働者から年次有給休暇の申請があった場合には、原則として、甲へ事前に通知するものとする。

2 甲は、派遣労働者年次有給休暇の取得に協力するものとする。ただし、通知された日の取得が業務の正常な運営に支障を来すときは、甲は乙にその具体的な事情を明示して、乙が当該派遣労働者に対し取得予定日を変更するよう依頼することができる。

 

公民権行使等の時間)

第16条の2 甲は、派遣労働者が就業時間中に、選挙権その他公民としてその権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、その権利の行使又は職務の執行に協力するものとする。ただし、権利の行使又は職務の執行に妨げがない限り、甲は請求された時刻を変更することができる。

2  前項の場合、甲が代替者の派遣を請求するときは、甲乙協議の上対応するものとする。

 

派遣労働者等の個人情報の保護と適正な取扱い)

第17条 乙が甲に提供することができる派遣労働者の個人情報は、労働者派遣法第35条及び同法施行規則の規定により派遣先に通知すべき事項のほか、当該派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限るものとする。ただし、利用目的を示して当該派遣労働者の同意を得た場合及び紹介予定派遣において法令上許されている範囲又は他の法律に定めのある場合は、この限りではない。

2 甲及び乙は、業務上知り得た派遣労働者の個人情報及び関係者の個人情報及び個人の秘密を正当な理由なく他に洩らし、又は開示する等してはならない。

 

(営業秘密及び個人情報の守秘義務

第18条 乙は、派遣業務の遂行により、知り得た甲及び取引先その他関係先の業務に関する営業秘密について、不当に漏洩し、開示し、又は不正に利用する等してはならず、派遣労働者にもその徹底遵守を指導する。

2 乙は、派遣業務の遂行により、知り得た甲の役員、従業員等及び取引先その他関係者の個人 情報について、不当に漏洩し、開示し、又は不正に利用する等してはならず、派遣労働者にもその遵守を徹底するよう指導する。

3 甲は派遣労働者に対し、前各項に定める甲等の営業秘密事項や個人情報の機密管理の教育を行い、また、乙は、乙あてに派遣労働者から前2項に定める守秘義務の履行に関する誓約書を提出させ、甲の機密保持の確保を図るものとする。

4 乙は、乙又は派遣労働者が営業秘密及び個人情報等に関する事故を発生させた場合若しくは発生させた可能性がある場合、又は、第1項に定める義務に違反した場合若しくは違反した可能性がある場合、直ちに甲に報告するとともに、事故の被害を最小限に抑えるための適切な措置を取ると同時に、甲の指示に従い、その他当該事故への対応を行うものとする。

 

公益通報者の保護)

第19条  甲及び乙は、派遣労働者公益通報者保護法に基づき公益通報対象事実等を通報したことを理由として、甲において個別契約の解除、派遣労働者の交替を求めること、その他不利益な取扱いをしてならず、乙においては派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

知的所有権の帰属)

第20条 乙の派遣労働者が甲の派遣業務従事中に行った職務発明、職務考案、職務意匠、職務著作(プログラムを含む)、その他の知的所有権は、すべて甲に帰属し、甲の所有とする。

2 乙の派遣労働者が行った発明が特許法第35条(準用されている実用新案法第11条、意匠法第15条を含む)の職務発明に該当する場合には、甲が特許(実用新案登録・意匠登録を含む)を受ける権利を当然承継する。ただし、乙と派遣労働者間の取扱いについては、乙において定めるものとする。

 

(雇用の禁止)

第21条 甲は、個別契約期間中は乙の派遣労働者を雇用してはならない。ただし、甲乙間で別途協議のうえ個別契約を合意解約する場合はこの限りではない。

 

(個別派遣契約期間満了の予告)

第22条 甲は、乙との個別契約の締結に際し、当該契約を更新する場合があり得るとした場合に、当該個別契約の更新を行わないときには、個別契約の期間が満了する日の30日前までに、乙にその旨を通知するよう努めるものとする。

 

(損害賠償)

第23条 派遣業務の執行につき、派遣労働者が故意又は重大な過失により甲に損害を与えた場合は、乙は甲に賠償責任を負うものとする。ただし、その損害が、指揮命令者その他甲が使用する者(以下 本条において「指揮命令者等」という。)の派遣労働者に対する指揮命令等(必要な注意・指示をしなかった不作為を含む。)により生じたと認められる場合は、この限りではない。

2 前項の場合において、その損害が、派遣労働者の故意又は過失と指揮命令者等の指揮命令等との双方に起因するときは、甲及び乙は、協議して損害の負担割合を定めるものとする。

3 甲は、損害賠償請求に関しては、損害の発生を知った後、速やかに、乙に書面で通知するものとする。

 

日雇労働者の労働者派遣の禁止)

第24条 乙は、その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務のうち、労働者派遣により日雇労働者(「日々又は30 日以内の期間を定めて雇用する労働者」をいう。)を従事させても当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として労働者派遣法施行令第4条第1項で定める業務について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で労働者派遣法施行令第4条第2項で定める場合を除き、その雇用する日雇労働者について労働者派遣を行ってはならない。

 

(離職後1年以内の労働者派遣受入れの禁止)

第25条  甲は、個別契約締結後、労働者派遣法第35条に基づく当該派遣労働者の氏名、性別などの通知を受けた場合において、当該派遣労働者が甲(事業者単位)を離職した者であるときは、当該離職の日から起算して1年を経過する日までの間は、当該派遣労働者(60 歳以上の定年退職者を除く)を受け入れてはならない。また、当該抵触することとなるときは、乙に対して、その旨を書面の交付等により通知しなければならない。

2 乙は、離職の日から起算して1年を経過する日までの間の者(60 歳以上の定年退職者を除く)と労働契約を締結し離職前の甲(事業者単位)に労働者派遣してはならない。

3 甲及び乙が、必要な手続きをする際に、派遣労働者の責めに帰すべき事由によって当該抵触 することとなるときは、甲乙協議の上対応するものとする。

 

(契約解除)

第26条  甲又は乙は、相手方が正当な理由なく労働者派遣法その他の関係諸法令又は本契約若しくは個別契約の定めに違反した場合には、是正を催告し、相当な期間内に是正がないときは、契約の全部又は一部を解除することができる。

2 甲又は乙は、相手方が次の各号の一に該当した場合には、何らの催告を要せず、将来に向かって本契約又は個別契約を解除することができる。

① 財産上の信用にかかわる仮差押、差押、強制執行又は競売等の申立てがあったとき。

民事再生、会社更生、破産、特別清算手続き等の申立てがあったとき。

③ 正当な理由なく公租公課を滞納して督促を受け、又はそのために差押を受けたとき。

④ 財産上の信用にかかわる担保権の実行があったとき。

⑤ 支払いの停止があったとき。

手形交換所の取引停止処分があったとき。

⑦ 法人を解散したとき。ただし、あらかじめ相手方の書面による承諾を得た場合はこの限りではない。

⑧ 労働者派遣法等関係諸法令に違反して、労働者派遣事業の許可を取消され若しくは事

業停止命令を受け、又はその有効期間の更新ができなかったとき。

⑨ その他前各号に準ずる行為があったとき。

3 前2 項に定めるもののほか、甲又は乙が本契約又は個別契約を解除する場合は、相手方の合意を得ることを要する。

4 本条に基づく解除については、損害賠償の請求を妨げないものとする。

 

(派遣契約の中途解除の場合の措置)

第27条 甲は、甲の責に帰すべき事由により個別契約期間が満了する前に個別契約の解除を行おうとする場合には、あらかじめ個別契約の解除を行おうとする日の少なくとも30日前に、乙にその旨を予告し、乙の同意を得なければならない。

2 甲及び乙は、個別契約期間が満了する前に派遣労働者の責めに帰すべき事由以外の事由により派遣契約の解除が行われた場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとする。

3 甲は、派遣労働者の就業機会の確保ができない場合で、甲が第1項の予告をなした日(以下「予告日」という)から個別契約の解除の日(以下「解除日」という)までの期間が30日に満たない場合、解除日の30日前から予告日までの期間の日数分の派遣労働者の賃金に相当する額を損害賠償として乙に支払うものとする。

4 甲の解除が甲の責に帰すべき事由に基づく場合は、前項にかかわらず、甲は、当該派遣契約が解除された日の翌日以降の残余期間の派遣料金に相当する額について賠償を行わなければならない。

5 甲は、派遣契約の解除を行う場合にあっては、乙から請求があったときは、派遣契約の解除を行う理由を乙に明らかにするものとする。

 

(反社会的勢力の排除)

第28条 甲及び乙は、自ら又は自らの役員もしくは実質的に経営権を有する者が、現在、反社会的勢力(暴力団暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業・団体、総会屋、社会運動等標榜ゴロ又は特殊知能暴力集団、その他これらに準ずる者をいう。以下同じ)に該当しないこと、及び次の各号の事由に該当しないことを表明し、かつ将来にわたり該当しないことを保証する。

(1)反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること。

(2)反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること。

(3)反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること。

(4)反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること。

(5)反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること。

2 甲及び乙は、自ら又は第三者を利用して次の各号の行為を行わないことを表明、保証する。

(1)暴力的な要求行為。

(2)法的な責任を超えた不当な要求行為。

(3)取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為。

(4)風説を流布し、偽計又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為。

(5)その他前各号に準ずる行為。

3 甲及び乙は、相手方が前二項のいずれかに違反したことが判明した場合、相手方に対して何 らの催告を要することなく通知のみをもって直ちに本契約を解除することができる。

4 前項による解除により相手方に損害が発生した場合であっても、解除権行使当事者はこれを一切賠償しないものとする。

5 第3項による解除は、解除権行使当事者が被った損害について相手方に対する損害賠償請求を妨げないものとする。

 

(契約の有効期間)

第29条 本契約の有効期間は、契約締結日から1年間とする。ただし、本契約の期間満了の1か月前までに甲乙何れからも契約終了の意思表示のない限り、本契約は更に1年間延長され、以降も同様とする。

2 本契約が有効期間満了又は解除により終了した場合といえども、すでに契約した個別契約については、別段の意思表示のない限り当該個別契約期間満了まで有効とし、それに関しては本契約の定めるところによる。

 

(協議事項)

第30条 本契約に定めのない事項及び本契約の条項の解釈につき疑義を生じた事項については、労働者派遣法その他の法令を尊重し、甲乙協議の上、円満に解決する。

 

(特記事項)

第31条 乙は、本契約に基づく労働者派遣を適法に実施することができる許認可の全部又は一部を欠くに至った場合には、直ちに甲に対してその旨の通知をしなければならない。

 

本契約締結の証として本書二通を作成し、甲乙記名捺印の上、各一通を保有する。

 

平成〇〇年●●月●●日

(許可番号 〇〇〇〇-〇〇〇〇) 
 
 
-------------
 

■ひな形活用の手順とポイント

 

 

ひな形はできれば複数あつめて、

参考にしながらご自身の契約に仕上げていくことが望ましいです。

 

手順としては、

 

①まずは、ワードなどにコピー&ペーストします

 

②内容をよく読み、自社(自分)にとっての権利がもれなく書かれているかどうか確認します。

 

③同様に、相手方の義務がもれなく書かれているかどうか確認します。

 

④そのビジネス特有の仮定条件「もし、・・・だったら」を考えて、あらかじめ記載しておくと紛争予防に役立ちます。書き加えましょう。

 

⑤加除修正を加えたら、条文番号などがずれていないか、再度確認しましょう。

 

⑥最後に、レイアウトを整えましょう。

 

 

もし気になる点があれば、

添削サービスも行っていますので、

ご利用ください。

 

 

最適な契約書で、かっこよく、

安心してビジネスをすすめたいですね!