契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

契約書にする「署名」と「記名」って どう違うの?

 

竹永です。

 

 

こまかい

言い回しの違いってありますよね。

 

 

■契約書には署名する? 記名する?

 

 

あたりまえですが、

契約書には当事者がお互いにサインをします。

これが契約の締結ですね。

 

 

ただ 意外と迷うのが

そのハンコや署名ではないでしょうか。

どのハンコを押すんだっけ? などですね。

 

 

結論から言うと契約書には、

「署名」をして「実印」を押すのが

も望ましいです。

 

 

もちろんそれ以外すべて無効になるわけではありませんが。

 

 

署名と記名は、どう違うのかというと、単純で、

直筆かどうかが違います。

 

 

つまり本人が手で書いたのを署名といいます。

筆跡が残るはずだから、

署名は契約書にうってつけなのです。

 

 

■記名も一般的

 

 

でも一般的にビジネス契約書では

殆どがプリンターでの印字ですね。

 

 

これは署名ではなく「記名」と言います。 

 

記名は誰でもマネできてしまうところから、

署名のような証明力は無いものとされています。

 

 

ようするに記名だけでは

その書類が本人のものによるとは信用されないわけです。

 

 

そこで、

特に記名の場合は必ずハンコが必要になってくるのです。

 

 

■契約書に実印を押す理由とは?

 

 

 「実印」とは、

市区町村や法務局に 「印鑑登録してあるハンコ」のこと。

 

 

登録するわけですから、

当然住所氏名が証明できますね。

 

 

だから契約書にはやっぱり実印を使うべきだよね、

というのが常識になっています。

 

 

あくまで登録してあるかどうかの違いですから、

いかに立派な書体や豪華な印材が使われていたとしても、

登録されていなければただのハンコ(認め印)にすぎません。

 

 

 

実印というのがいつからあったのかわかりませんが、

 

明治時代の法律には、

 

「諸証書ノ姓名ハ自書シ実印ヲ押サシム」

(明治10年7月7日 太政官布告

 

という用語が残っていて、

どうやらこのあたりが実印制度の出発点のようです。 

 

 

■ビジネス契約書の署名欄の書き方

 

 

ビジネス契約の場合は、

実印といっても、

個人のではなくて、法人の代表印(丸いもの)が該当します。

 

結局、

ビジネス契約書の署名欄は、

 

 

住所(東京都・・・)

肩書(代表取締役など)

氏名(山田 太郎) + 法人代表印

 

 

と「記名」されたうえで法人代表印が押されている、

というのがパターンのひとつになっていますね。

(「署名」してももちろん構いません。)

 

 

ちなみにこの際、

「肩書」をつけ忘れないのも、

ポイントのひとつです。

 

 

当事者適格といって、

当事者がどういう立場、権限でサインしたのかは、

契約では重要だからですね。

 

 

 

ハンコと言えば、

欧米諸国にはサイン文化がありますから、

英文契約書のほとんどはハンコのようなものは押されてなくて、

サインだけです。

 

 

実は日本にしても、

もともとは署名することをもって

「 本人による文書であることの証明」

にしていたのです。

 

 

武士の手紙などには 花押(かおう)という、

漢字一文字を図案化したようなかっこいいマークが

署名代わりに入っていますよね。

 

 

ちなみにこれは豊臣秀吉の花押です。

 

 

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加えて、少なくとも江戸時代には

町人文化のなかですでにハンコが広まっていたようなので、

ハンコの習慣も古くからあったといえそうです。

 

 

 

■デジタル化でハンコはなくなるのか?

 

 

今後は日本でも電子署名なども活用され、

技術的にさらに改善がすすめば

ハンコによる署名方法も変わってくると思います。

 

 

ただやはり紙の契約書に真っ赤なハンコが押されていると、

なんとも正式で、豪華な印象があり、

こうしたリアルな実感もまた馬鹿にできません。

 

 

慣れ親しんだ者にとっては、

紙への信頼は強く、代えがたいものがあります。

 

 

紙ベースの契約書にもまだまだ便利な要素もあり、

そう簡単に廃れるものでも無いような気がしています。