契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

覚書のつくりかた2

「言った、言わない」 のトラブルというのは、 特に金銭がからむと、 精神的にも実質的にも、 ダメージが大きい。

ようするに、 詐欺にあったような気持ちになる。

いや、 詐欺は意外と身近な問題なのだ。 テレビやニュースをにぎわす大がかりで、 確信犯的なものばかりではない。

むしろ、 被害を受けた側にとっては詐欺のようだけれども、 厳密な法律論的には微妙なケースが たくさんある。

いってみれば、 悪気はなかったのだけれど、 結果的に相手をだますような言動をしてしまう、 いわばアマチュアの詐欺師みたいなのがいるのである。

この、 アマチュアの詐欺師というのは、 いかにも悪人のイメージがあるが、 実際のトラブルをみていると、 ちょっとちがう。

当事者はみんな、 優しそうで、親切で、 悪気のなさそうな人ばかりなのである。

トラブルを予防するには、 気付いた時にいかにはやく手を打てるかである。 逃げられてからでは遅い。

そこで覚書(おぼえがき)であるが、 これは一種の踏み絵になり、 存在自体が、 一種の抑止力になってくれる。

アマチュアの詐欺師たちは、 何か約束するとき、 たいてい

「文書にしてもかまいませんので」

などというからおもしろい。

これは彼らの口癖なのであるが、 もちろん、彼らが 自ら「文書」をつくってもってくるなんてことはない。

彼らにとっての文書は、 ドラキュラにとっての、 十字架みたいなものだからだ。

ようするに彼らは あとで証拠になりそうなものや、 正確な記録の類を本能的に嫌っている。

そう難しいことではないので、 こちらからさっさと、 覚書を手際よく作成できるように しておくべきだろう。

ここでは便宜的に、 何らかの話し合いや取り決めがあったときに、 その論点を整理するためや、 後日の紛争予防のために、 作成する文書のことを、 覚書と呼ぶことにする。

つまり、 まったく争いが無い状態でも、 念のためつくっておく文書のことだ。

自分や相手の言い分をまとめておくとか、 意思を確認するための文書である。

だから、 会議の議事録なども、 広い意味ではこれに含まれる。

なぜ こんなものをつくるのか といえば、 書面にしておくことで客観的に確認がしやすくなるという、 便利のためがひとつ。

そして、 法律的な原則論から言えば、 きちんと文書化された合意というのは、 いわゆる「前言撤回」はきわめてむずかしく、 事実上、 その文書の記載に拘束されるためだ。

この意味では、 作成者自身も、 拘束されることになるから、 記載には注意が必要である。

覚書の作成は手軽で、 非常に経済的だと思われる。

後日、 紛争になってしまってから、 事態を収拾しようとしても、 たいていの場合は かなり難航するし、 当然、コストもはねあがる。

適切な文書にすることを 心がけておくだけでも、 抑止力になってくれ、 予防の効果が期待できるから、 ぜひご自身のビジネスや、 ちょっとした約束事などのときに活用していただきたい。

では、 どうやってつくればいいのだろうか?

絶対にはずせないポイントは、

まず ①タイトル、

それから ②本文、

そして ③日付、

最後に ④署名である。

難しくは無いのだけれど、 かなり重要な要素になるので、 油断せずに確認してほしい。

明日は具体的にこれらの書き方を説明する。