契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

無料パンフレット制作は下請法該当するか?

さて、

一定の委託取引には、 下請法が適用される。

というわけで 引き続き、 下請法のポイントを確認したい。

下請法でいうところの、 委託には、

①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託

のように おおきく4つの「種類」があるが、 今日は「情報成果物作成委託」を 確認してみよう。

パソコンで動くプログラムとか、 映画、映像、 広告のデザインなどを、 情報成果物と呼んでいる。

著作物とも似て、 かなり幅広い概念である。

これらの作成を、 他の事業者に委託することを、 「情報成果物作成委託」と 呼ぶことにしているのである。

ソフトウェアの開発を外注するとか、 家電メーカーが製品の取扱説明書の作成を外注する、 衣料メーカーがデザインを・・・

などと いろいろなケースが考えられる。

また、 事業用の成果物が対象ではあるが、 興味深いことに、 自社で使用するものを作らせる場合でも、 下請法の適用がある。

事業を行っていると、 社内で使用するものについても、 反復継続的に作成するということがある。

たとえば 広告宣伝のためにカタログやチラシ、 HPを作成することは よくあることである。

これらは、 別にお客さんに有料で販売するものばかりではなく、 (つまりその作成や提供を自社が請負っているから作る場合ばかりではなく) むしろ宣伝のために完全無料で、 どんどん配布するために作らせるものである。

当然、 純粋に無償ということが多いだろうから、 そこだけみると、

「業として提供する」

ことにはあたらない。

(ここでいう「提供」とは、 他社に供することであって、 販売や使用許諾によるものをいう。)

ということは、 下請法の 情報成果物作成委託には、 あたらないんじゃないか、 と思ってしまう。

しかし、 実は下請法の定義により、 情報成果物作成委託には、 自らの事業に使用する目的で作成する 情報成果物の作成を、 他の事業者に委託する場合も含むため、 たとえば社内で使用するためのチラシとか、 パンフレットなどの作成を外注した場合であっても、 該当することになる。

つまり、 自分でビジネスに使う目的で、 別に販売するわけじゃないんだけれども、 チラシやパンフレットやらを外部に委託する取引であり、

チラシのデザインを発注すると、 情報成果物作成委託に、

チラシの印刷を発注すると、 製造委託に

(ようするに下請法の対象とする取引に) それぞれ該当することになるんである。

委託取引を、 このように緻密に分類して、 該当性を的確に判断できるように しているようだ。

あと、付け加えたいこととしては、 ここでいう情報成果物作成委託は、 あくまでも「作成」する行為の全部または一部を 他の事業者に委託することをいうのである。

だから、 たとえばゲームソフトのプログラムの、 「監修」を依頼するとか、

番組映像を作る際の、 「監督」を依頼するとかいった業務は、 作成にはあたらない(から該当しない)。

なんとなく、 ここでいう情報成果物作成委託の イメージがつかめただろうか。