契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

商社を通せば下請法該当しないのか?

下請法の対象となる、 委託取引について 説明してきた。

一定の委託取引には、 下請法が適用されること、

下請法でいうところの、 委託には、

①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託

の、 おおきく4つの「種類」があること がわかった。

もちろん、 説明の都合上、 委託取引の当事者は「二者」である。

つまり

事業者 → 下請事業

という流れだ。 やじるし部分が、 「委託取引」である。

ようするに僕があなたに仕事を頼んだ際に、 それが下請法上の委託取引に該当すれば、 僕とあなたの間の取引は、 下請法の適用を受けることになる。

ただもちろん、 資本金の額による基準があるし、 この基準は多少複雑なので、 ピンとこないかもしれないが、 一例を挙げると、 資本金が一千万を超える企業が、 資本金が一千万円以下の会社にたいして、 たとえば「プログラムの作成」を委託していれば、 (かなりの確率で) 下請法の適用対象になるだろう。

とてもおおざっぱな イメージの話にはなってしまうけれど、

難しく考えず、 いったん、

「資本金が一千万円を超えたら、 自社は親事業者になる可能性があるのだな」

と単純化して 覚えてしまえばいいと思う。

なぜなら、 資本金一千万円を超える事業者が、 それを下回る業者に委託取引を発注すると、 適用になる可能性があるのであれば、 外部委託は、別にめずらしいことでもなんでもなく、 ひとつの会社が多数の事業者を相手に行うことも多いし、 突発的に発生することもある。

つまりは 非常に身近な取引であって、 今現在適用がないからといっても、 明日には該当する取引がでてくるかもしれないからだ。

もちろん資本金基準というのは、 自社の資本金額だけでなく、 下請事業者の資本金額もあわせて該当する必要があるし、 さらに委託業務の内容によっても、 枝分かれする条件だから、 厳密さを欠く説明になっていることは分っている。

しかし、 適用対象になる取引が決まってから、 あわてて対策をするよりはいいだろうと思う。

ところで、 現実のビジネスでは、 取引が一対一での話し合いで まとまることばかりではない。

たいていは、 多かれ少なかれ、 紹介者がいたりするものである。

いや、 単なる紹介者の場合もあれば、 商社のように、 それ自体が事業として 成立している役割のものだってある。

もともと 下請法の適用対象の取引があったとして、 それを、 僕とあなたが直接やりとりするのではなく、 間に商社が入った場合は、 商社と外注先のどちらに、 下請法が適用されるのだろうか?

僕 → 商社 → あなた

基本的には、 僕があなたに発注している場合は、 僕が親事業者、 あなたが下請事業者になる。

僕 → 商社 → あなた

つまり、 あいかわらず僕が 親事業者としての 下請法上の規制を受けることになる。

ただし、 例外も考えられる。

僕が商社に対して、 発注したときに、 商社が委託内容の決定に関与したときである。

つまり、 僕が商社に直接、 委託内容の決定などをして発注している場合。

この場合は、 僕と商社との間にすでに委託取引が生じることとなり、 僕が親事業者、 商社が下請事業者となる。

僕 → 商社 → あなた

加えて、 このパターンの場合は、 (資本金基準を満たせば、) 商社とあなたとの間にも、 親事業者、下請事業者の関係が、 生じることになる。

ようは、 下請法に該当する委託取引が、 ふたつ発生するのだ。

① 僕 → 商社 ② 商社 → あなた

ようはこのように 間に事業者が介在していても、 資本金基準と、 取引内容の基準が、 両方満たされている場合は、 下請法の規制対象になるということだ。

では、 資本金の基準がみたされていなければ、 ぜったいに下請法は適用されないか?

というと、 まず基本的には、 適用されない。

たとえば、 資本金が一千万円に満たない事業者であれば、 なにを発注しようと、 定義により、 そもそも 親事業者に該当しないから、 委託取引を生じたとしても、 その取引が下請法の委託取引にはならないのである。

ただそうなると、 頭のいい(?)人がでてきて、

「自分の会社は資本金が三億円を超えるのだけれども、 そのまま外注すると、 下請法にかかるから、 いったん、資本金が小さい子会社に発注しておいて、 その子会社から、外注取引先に、 再委託をさせれば、 下請法を免れるのではないか?」

というしくみが、 あり得てしまう。

ただこの場合も、 この子会社の議決権が半数以上親会社のものであるなど、 役員の任免とか業務の執行だとかの面で、 事実上子会社が親会社の支配下にあって、

かつ、 親会社からの発注の大部分が、 子会社から外注取引先に 再委託されるような場合は、 一見、資本金基準を満たさないようにみえても、 実質上は親事業者と下請事業者の関係を生じるから、 下請法が適用されることとなる。

ようするに、 意図的に子会社を通しても、 実体として親事業者から 下請事業者への 委託取引であれば、 下請法は適用されることになる。

(トンネル規制とよばれる)

単に間に事業者を介在したといっても、 それだけでは下請法が適用されなくなる、 というわけではないのである。