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わかる! 使える! 契約書の基本

契約書は経営、起業・独立、副業に必須のスキルです! 自分で契約書がつくれると楽しいですよ

免責の有効性

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さて昨日の続きであるが、

いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない

事業者が 規約などに定めたとして、

これが消費者向けに 商品やサービスを提供する契約だった場合、 有効なのかどうか? である。

結論から言えば 消費者契約法の観点からは、 これは無効と考えられる。

まず一般的に、 契約の条項が 無効になるのは どのような場合だろうか。

民法の信義則や 公序良俗を根拠として、 契約全体は有効ながら その契約条項の効力のみを否定する例がある。

ちなみに

民法の信義則とは、 「民法の信義誠実の原則」(第1条第2項) のことであり、 目的権利の行使、 または、義務の履行に当たっては、 社会共同生活の一員として、 互いに相手の信頼を裏切らないように、 誠意を持って行動することを要請する趣旨である。

また、

公序良俗とは、 「 民法の公序良俗」(第90条) のことであって、 目的国家・社会の秩序や一般的利益、 社会の一般的道徳観念に 反する法律行為を無効とする趣旨である。

これらにたいして、 消費者契約法の趣旨は どうだろう。

この法律の趣旨は、 情報・交渉力において劣位にある消費者の 正当な利益が不当な内容の契約条項により侵害された場合に、 このような不当条項の効力を否定することにより 当該消費者の利益を回復する、 というポイントがある。

つまり、 消費者契約法は 消費者保護法なんだな、

と思ったあなたは、 とてもするどい。

「情報・交渉力」の面で 消費者と事業者との間に 大きな差があるようなときは、 事業者が 自己に一方的に有利な結果を来たす可能性がある。

だから

不当な契約条項により権利を制限される場合には、 消費者の正当な利益を保護するため 当該条項の効力の 全部又は一部を否定する、 ということだ。

ようするに、 事業者ばかりが有利になっては、 消費者の権利が不当に制限される、 だからそういう条項は無効にするよ、 といっているのである。

ちょっと、 話をより具体的にするために、 条文をみてみよう。

消費者契約法第8条 (事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効) には、次のようにある。


第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。 一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項 二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項 三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項 四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項 五 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れ かした瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項 2 前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。 一 当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合 二 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合


いきなりごちゃごちゃと 条文がでてくると 疲れるのであれだが、 あらためて 今回問題としている条項についてみてみよう。

「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない。」

という条項の 有効性のはなしであった。

結論は、 上記、 消費者契約法第8条の1項1号に該当し、 無効となる、 ということだろう。

そこでちょっと、 8条1項1号に着目してほしい。


第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

とある。

どういう意味だろうか?

分解すれば、

  「事業者の債務不履行により  消費者に生じた損害を賠償する責任」

 「全部免除する条項」

が無効だといっているのである。

まず前半部分であるが、 事業者の損害賠償責任について 述べている。

どういうことか。

そもそも、 事業者が民法第 415条に規定する債務不履行をなし、 消費者に損害が生じたときには、 同条の規定に従い、 消費者は 損害賠償請求権を取得することとなる。

ちなみに 同条の損害賠償請求権が 発生する要件としては、

(通説では) ①債務不履行の事実があり、 ②債務者に帰責事由があり、 ③債務不履行と因果関係のある損害が発生している

ことであるとされている。

債務不履行とはなにか、 というのも重要なポイントであるので、 いずれ解説するとして、 ここは先を急ぐ。

ちなみに 「帰責事由」とは、

「債務者自身の故意・過失または 信義則上これと同視しうべき事由」

をいうとされている。 これは法律を学んでいると 繰り返し出てくるフレーズである。

債務者自身の故意・過失と同視しうべき事由 として考えられているのは 「履行補助者の過失」である。

「履行補助者」とは、 債務者の意思に基づいて 債務の履行のために使用される者を指し、 債務者自身に故意・過失がなくても 履行補助者に故意・過失がある場合には 債務者自身の債務不履行として損害賠償責任を負うものとされている。

なお、 金銭債務については、 不可抗力による抗弁すらできない とされているため、 無過失の場合でも 損害賠償責任を負うということには、 注意を払う必要があるだろう (民法第 419条第2項)。

なんだか 若干脱線したような気もするが、 こうした周辺知識も踏まえて、 読みとって行くといいと思う。

で、 本題にもどり、 後半部分であるが、 そうした(債務不履行による損害賠償の)責任を、

「全部を免除する」

という意味の条項があれば、それは 無効だよといっているわけである。

つまり、 事業者が損害賠償責任を一切負わない、 とする内容を定めた条項が、 その限りにおいて無効となるのである。

注意したい点として、 損害賠償責任を一定の限度に制限し、 一部のみの責任を負う旨を定める条項は本号には該当せず、 無効にはならないと考えられるし、 証明責任を消費者に転換する条項であっても、 本号には該当しないと考えられる。

逆に、 該当する(無効とされる)のは、

「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」 「事業者に責めに帰すべき事由があっても一切責任を負わない」 「事業者に故意または重過失があっても一切責任を負わない」

といったいいまわしにより、 損害賠償責任をすべて免除する意味になっている条項 である。

さらに深く理解するために、 明日あたり、やはり 「債務不履行」と 「損害賠償」 の概念については、 すこし補足説明をしたい。