契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

プライベートブランドは下請取引にあたるか

まえから書きたかった、 下請法に関する ポイントをいくつかまとめていきたい。

下請法とは、 下請事業者の保護などをはかるために、 適用対象や違反行為を類型化している法律である。

ようするに、 どのような下請取引において、 どのような行為が違反になるのかを定め、 取引の公正化と利益保護をするルールなんである。

この法律が重要な理由は、 企業の委託取引に幅広く適用されることと、 親事業者に対して、 厳格な義務や禁止事項を課しているからである。

契約書実務で特に重要なのは、 書面の交付義務(第3条)や 書類の作成・保存義務(第5条)であろう。

これにより、 事業者は発注書を適法に作成できないと、 それだけでも 違反となってしまうのだ。

実効性の意味では、 公正取引委員会及び中小企業庁により、 毎年、親事業者、下請事業者に対する書面調査、 必要に応じて 親事業者の保存している取引記録の調査や立入検査を 実施されている。

マニアックなようでいて、 実は身近という、 意外におっかない法律でもある。

まあ言ってみれば、 クルマの運転における、 道路交通法みたいなものである。

経験があれば運転そのものは難なくできるだろうが、 さすがに標識の見方や速度制限、 駐停車のルールは知らないと、 いつかは運転させてもらえなくなるだろう。

そこで、 やはり運転とおなじで、 下請法にもいくつか最低限の知識があるので、 書いてみたい。

まず、 委託取引に適用される法律であるから、 委託とはなにかについて 確認したい。

そもそも 委託というからには、 仕事を、当事者の一方から他方へ 委託することである。

ようするに金を払って、 仕事をお願いする取引だけれど、 これだとあらゆる委託契約が該当してしまう。

下請法が目的としているのは、 下請取引の公正化や、 下請事業者の利益保護であるから、 それに適した取引を規制対象にする必要がある。

そこで、 規制対象は取引要件や資本金要件から、 こまかく設定されている。

ようするに、 どのような委託取引が該当し、 さらにその当事者(親事業者と下請事業者)の 資本金のバランスがどうであるときに、 対象となるか、 というのが決まっているのだが、 ここは非常にややこしいから、 言葉の定義が分ってからでないと、 すんなり理解できないと思う。

下請法でいうところの、 委託には、

①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託

のように おおきく4つの「種類」があるので、 それぞれ確認していこう。

製造委託は、 事業者が他の事業者に対して、 物品を発注することであるが、 単なる売買との違いは? といえば、 その物品の規格、品質、性能、形状などの、 いわゆる仕様を指定して作らせている点で異なるのである。

だから、たとえば スーパーで売っている、 いわゆるプライベートブランド商品 (独自開発商品)も、 その製造を委託している点で、 製造委託になる。

製造委託にも さらに類型があり、 必ずしも消費者向けに販売する 製品を外注させることに 限られているわけではない。

自社で使う機械の修理に必要な部品や、 自社で消費する物品を、 別の事業者に製造委託した場合も、 該当することがある。

たとえば、 精密機器メーカーが、 その梱包につかう包装材を、 資材メーカーに発注して製造してもらう取引などである。

さらに、 自社が請負った物品の製造を、 さらに別の業者に委託して製造させる場合も、 この委託取引が製造委託に該当することもあるのである。