契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

セミナー講師は下請法該当するか?

さて、

一定の委託取引には、 下請法が適用される。

というわけで 引き続き、 下請法のポイントを確認したい。

下請法でいうところの、 委託には、

①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託

のように おおきく4つの「種類」があることをみてきたが、 さいごに「役務提供委託」を 定義から確認してみよう。

まあ サービスの委託というイメージで ほぼ間違いないように思うけれど、 定義によると、

事業者が業として行う提供の目的たる役務の 提供の行為の全部又は一部を他の事業者に 委託することをいう。」

ことであり、 なおかつ、 「建設業法 (昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。) を営む者が業として請け負う建設工事 (同条第一項に規定する建設工事をいう。) の全部又は一部を他の建設業を営む者に 請け負わせることを除く。」

とある。

だからようするに、 業務を受託した業者が、 その業務の一部または全部を、 再委託する取引である。

そして、 建設工事の下請負は、 除かれているわけだから、 建設業以外の再委託が、 これに該当するということになる。

たとえば、 ビルのメンテナンス会社が、 そのメンテナンス業務の一部を、 他社に再委託するような取引である。

あるいは、 ビル管理会社が、 オーナーから請負うさまざまなサービスのなかに、 メンテナンスが含まれているような場合に、 このメンテナンス業務部分を、 専門の会社に再委託するというのは、 よくある話ではないだろうか。

これも当然、 再委託であるから、 下請法上の役務提供委託になるだろう。

逆に、 役務提供委託にならない(該当しない) 業務委託というのはあるのだろうか?

なりそうで ならない例としては、 ホテル事業を営む会社が、 ベッドリネンの交換という業務を、 別途、リネンサプライ業者に委託するような 取引が考えられる。

業として依頼しているのだから、 当然、役務提供委託にあてはまりそうであるが、 これはあてはまらない。

なぜなら、 ホテル業者にとってのベッドリネンの交換業務は、 再委託ではなく、 自ら用いる役務だからである。

では、 カルチャーセンター等における、 セミナー講師の依頼という委託取引は どうだろうか?

これも「セミナーでなんらかの指導をする」 という役務の提供を 業として委託しているわけであるから、 役務提供ということはいえそうである。

ただ、 カルチャーセンターなどの主催者が、 その事業にもちいるために外部の講師に依頼をしていると 考えれば、 再委託にはならず、 下請法条の役務提供委託には 該当しないと考えられるのだ。

ようするに 役務提供委託といえるためには 建設業の下請負以外の、 再委託の取引でなければならない。

だから、

いわゆる 企業が顧問弁護士をつけたり、 公認会計士産業医との間に、 継続的な役務提供について契約したりする取引は、 下請法の対象とはならないのだ。

すこしだけややこしい部分である。