契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

外国で作成する契約書でも、印紙を貼るのですか?

印紙税がわからないという声は多いが、 たしかにこれは複雑だ。

契約書に貼る 印紙税は形式ではなく、 あくまでもその課税文書(この場合の契約書)の 内容によって課税がかわるから、 さらにややこしいのだ。

ところで 海外との取引に関して 契約書を作成した場合も、 印紙は貼るのだろうか?

ちょっと問題形式にしてみよう。

たとえば、 日本の会社が、 アメリカの会社とのあいだで 売買契約を締結することになったとする。

その契約書は、 日本の会社が2通作成し、 代表者が署名捺印したうえでアメリカ側に郵送。

 (日本 →  2通 アメリカ)

アメリカ側がこれにサインして、 1通を当社あてに返送するとする。

 (アメリカ → 1通 日本)

この場合、 この売買契約書には 印紙を貼るのだろうか? それとも貼らないのだろうか?

ポイントは、

・日本で書類を作成し、日本側は署名捺印した ・アメリカに正副2通を送り、現地側もこれにサインした ・うち1通を日本に送ってもらい、保管することとした

この場合、印紙は貼るか? である。

いかがであろう。

【こたえ】

印紙税法は日本の法律であり、 適用地域が日本国内である。

つまり、 課税文書の作成が「国外」で行われた場合、 印紙税は課税されない、

つまり、 印紙は「貼らなくてよい」ことになる。

ややこしいが、 その契約の内容が、 日本国内での権利行使に関してのものであっても、 この場合は貼らない。

また、 その契約書を国内で保存する、 という場合でも、 やはり印紙税は課税されない。 (つまり、やはり貼らない。)

考え方であるが、 どこで作成されたか の判断が 最大のポイントである。

でも、

ちょっとまてよ、

と思われるかもしれない。

「日本で作成した契約書」 に署名したうえで、 アメリカに2通送ってサインさせたのだから、 やっぱりこの契約書は日本で作成したこととなり、 やはり日本国内の税法に従って課税されるのではないか? (印紙を貼るのではないか)

と。

たしかに、 この契約書は日本で作成されている。

が、これはちょっとしたひっかけである。 すなわち 印紙税法でいうところの 課税文書の「作成」とは、

「単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、 課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、 これをその文書の目的に従って行使すること」

をいう。 つまり契約の目的したがった、 最終的な行使のタイミングのことを、 印紙税法では「作成」と呼んでいるのだ。

そのため、 相手方に交付する目的で作成する課税文書 (例えば、株券、手形、受取書など)は、 その交付の時が作成ということになるし、

契約書のように 「当事者の意思の合致を証明する目的」 で作成する課税文書は、 その意思の合致を証明する時が 作成したときということになる。

例題の売買契約書は、 売買の事実やそれに関する権利行使について、 双方がサインすることで、 当事者の意思の合致を証明する文書である。

日本側で書類作成し、 サインした段階ではなく、 アメリカ側でもこれにサインすることによって、 はじめて意思の合致が証明される目的で、 契約書が「作成」されたと考えるのだ。

そして、 その「作成」場所はアメリカ(=法施行地外) ということになるから、 この契約書には印紙税が適用されない、 すなわち印紙を貼らないと判断する。

逆に、 アメリカの会社で書類がつくられ、 サインされたものが日本の会社に送られてきて、 これに日本の会社が署名捺印することで、 意思の合致を証明することとした場合は、 どうなるであろう?

もうお分かりと思うが、 この場合は 印紙を貼る必要が・・・

・・・ある。

しかも、 日本が保存するものだけではなく、 アメリカに送る1通についても、 印紙税が課税されることとなり、 つまりは正副両方ともに印紙を貼ることになるのだ。