契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

最適な契約書を素早くつくる方法

契約書を手っ取り早くつくる話である。

じつは 昨日いただいたお問合せのなかに、

「契約書の書式がなかなかみつからないのだが、 どうすればよいか悩んでいる」

というような趣旨のものがあった。

僕のホームページでは、 なるべく多くの契約書サンプル書式を、 公開していることもあってか、、 こういう質問はけっこうある。

書式、(ひな形、サンプルみたいなの)に関するお問合せである。

「役に立ちました」、 などという感想をいただくと、 やっぱり嬉しいが、 実際は、 「こういう書式を下さい」 という要望が多いのである。

で、 書式が見つからない場合どうするか、 ということだが、

まず、 書式がないということは、特殊な例外を除いては 今の時代ほぼあり得ない、

という、 大胆な前提を自分のなかに築いてしまう、 というのが第一歩になる。

これは精神論、 根性論のようでもあるが、 非常に大事である。

僕自身、 この心構えに何度も救われた。

つまり、 自分が探せていないだけで、 書式は必ずあるものなんだ、 といいきかせて気持ちを強くし、 徹底的に探すのである。

ネットで見つからないならば、 大きな図書館に行けばいいし、 法律雑誌や、専門書をあたることもできる。

法律用語にひるまず、 とにかくどんどん調べていけばよい。

専門書、業界誌というのは、 普段目にしないから存在を忘れているだけで、 ものすごくマニアックな情報が、 おしげもなく、宝石のようにつまっている。

あるいは 和文に書式がなければ、 英文契約書を検索し、 簡易翻訳をかけてみるのもいい。

とにかく、 ちょっと検索して、 「無い」と思ってしまうと、 ほんとうに手が止まってしまう。

ひとつの事を調べるのに、 本ならば100冊読む、 という意気込みをもってみていただきたい。

実際には100冊も読む前に、 発見があり、 結論にたどりつけることだろうし、 周辺の知識も副産物的にみつかったりする。

ところで、 「書式がみつからないのだが」 という方に、 どんな内容の契約書がほしいのかを聞いてみた。

すると、 ありふれているとまではいわないけれど、 それほど特殊な内容ではなかった。

すくなくともネットで情報がまったく みつからないたぐいのものではない。

ただ、 ちょっと検索ワードの見当がついていないせいかもしれないと思い、 検索キーワードのアドバイスをして、

「必ず見つかるから探してみては?」

と話すと、 ご納得されたようだった。

おそらくすぐに見つかったに違いない。

書式がみつかってから、 それをどうカスタマイズするべきかということについては、 当然、多少のテクニックがいるし、 やはりある程度勉強してから分ることもある。 ここは仕方ないだろう。

また、 書式にはデメリットもある。

つまり、 一般的に配布されている書式は、 どうしても話が抽象的になっているし、 当事者の一方にとって有利な、 テクニックを駆使しことはのってないことが多い。

(初めから一方の立場で書かれていることを 前提にしているようなものをみつけるといいのだが)

あと、 理論上はただしいのだけれど、 実戦向きではないようなこともある。

たとえば、 売主としては 損害賠償額の上限を規定することで、 自社の損害賠償を予測可能な範囲まで小さくする、 という定石がある。

しかし、 当然これは 売主にとってのメリットであって、 買主にとっては賠償額を下げてしまうかもしれないわけである。 だから自社が買主ならこのような規定は積極的には採用できない。

こんなものはわかりやすい一例にすぎず、 実際にはこまかいやりとりや、 交渉のなかで様々な悩みが頻出するのであって、 そういう立場からみると、 書式に書いてあることというのは牧歌的にすらみえる。

なにを生ぬるいことをいっているんだい、

というようなかんじに みえるのである。

とはいえ、 いい書式がみつかれば、 それだけ作業が速くなるのだし、 やはりなにごともゼロから書き始めるよりはずっと効率的だ。

書式探しは、 どうか気合いをいれて、 挑んでいただきたい。