契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

契約解除条項のパターン解説

数日前は 雨が少なくて水不足が心配されていた関東も、 今日は非常に激しい雨になるという。

確かに今も 凄い風が吹いていて 天気は見るからに荒れ模様。

天気を予測するのは 本当にむずかしいのだ。

予測が難しいといえば人間関係である。

元サッカー日本代表の奥選手が DVの容疑で逮捕され、 離婚が成立するとのニュースもあった。

人は見た目や雰囲気では 本当によくわからないものである。

まあDVとかは、 深層心理的なものらしいので、 潜行しやすいというか、 わかりにくいものだっていうけど。

事前に全てを知ることは難しいから、 発覚したときに適切に対処するしか ないのであろう。

ビジネスも同じようなところがある。

契約でも、 急に相手方の対応が不満足なものに代わったりした場合には、 やはり解除も検討できるように、 解除事由というものを あらかじめ決めておくことがたいせつだ。

解除事由というのは、 離婚の場合のDVや暴力というのと同じで、

「もし、 こういうようなことがあれば、 契約を解除しますよ」、

と、 それにあてはまる事柄を まえもって列挙しておくイメージだ。

契約の解除に関する条項のパターンは、 まず、 こういう解除事由をあげて、 特に重大な事由の場合には、 無催告解除として規定する。

無催告解除(むさいこくかいじょ)とはなんだろう? というと、 文字通り、 催告をせずに すぐさま解除できるということだ。

(突如番組を去る、 水道橋博士みたいなやつだ。)

つまり、 その解除事由が深刻であるために、 いちいち前もって通知をだしたり、 対応を見守ったりする余裕が無い場合に、 すぐに解除できるようにしておく意味がある。

危険な暴力から身を守るイメージだが、 ビジネスでいうと、 相手の支払の停止なんかがあてはまる。

支払ができないことが明らかな場合に、 いつまでも解除できないでいると、 こちらの損害が広がってしまう恐れがあるからだ。

無催告解除があるということは、 催告解除(さいこくかいじょ)というのもある。 これについても定める場合がある。

つまりこれは 催告のうえで解除できる、 ということ。

無催告解除するほど深刻ではないものの、 あらかじめ催告したうえで、 状況が改善しなければ解除できる、 としておくものだ。

無催告解除と 催告解除は、 どちらかにしなければいけないわけではなく、 解除事由の内容により、 あわせて定める場合もある。

もうひとつ、 解除の条項につきものの、 期限の利益喪失というテクニックがある。

解除など一定の場合には、 期限の利益がなくなりますよ という特約をおくのである。

期限の利益がなくなるとは、 つまり支払債務などを、 直ちに履行しなければならなくなることだ。

ようするに、喪失されると 期限を待たずに支払をしなければならないこととなる。

民法にも 期限の利益の喪失事由(民法第137条)が規定されているが、 信用不安などを事由につけくわえる意味がある。

ようするに契約によって 該当する範囲を広げ、 実際に適用しやすくしたり、 適用されることを明確にしておいたりする効果がある。

説明するより、 規定例をみてしまうほうが わかりやすいだろう。

「発注者又は受注者は、相手方に次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合には、何らの催告なしに直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。 ① 重大な過失又は背信行為があった場合 ② 支払いの停止があった場合、又は仮差押、差押、競売、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立があった場合 ③ 手形交換所の取引停止処分を受けた場合 ④ 公租公課の滞納処分を受けた場合 ⑤ その他前各号に準ずるような本契約又は個別契約を継続し難い重大な事由が発生した場合 2. 発注者又は受注者は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、相当期間を定めてなした催告後も、相手方の債務不履行が是正されない場合は、本契約の全部又は一部を解除することができる。 3. 発注者又は受注者は、第1項各号のいずれかに該当する場合又は前項に定める解除がなされた場合、相手方に対し負担する一切の金銭債務につき相手方から通知催告がなくとも当然に期限の利益を喪失し、直ちに弁済しなければならない。」

本例は 双務規定になっているが、 もちろん、実際上は当事者の一方に対する解除を規定する実例は多い。

第一項は無催告解除、 第二項は催告解除を定めていることがわかる。

そして 第三項は、 無催告解除事由に該当するか、 または催告解除事由に該当して解除がなされた場合に、 期限の利益を喪失するという意味の規定である。