契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

変更に応じるか否か。協議不調に備える契約テクニック

勝負の世界ってのはやはり厳しいもので、
昨夜のサッカーの試合には
ひやひやさせられた。

でもワールドカップ出場が決まって嬉しかった。

なんというか本田選手の
メンタルの強さには、
やはり天才性を感じる。


ああいう場面でPKを蹴る心境っていうのは、
もはや想像もできない。


さて
契約もある面では「勝負の世界」であるから、
あまりおだやかなことばかりは
書いていられない。


たとえば
たんなる
「誠実協議」条項には
あまり意味がないという内容を
以前書いた。


もめてしまってから、
悠長に協議しようという当事者は
いないからだ。


しかし、
業務の性質上、
その仕事の内容が変更しやすいものというのはある。


そうした場合は、
やはり業務内容の変更についての
協議は規定しておいたほうがよい。


業務委託というのはある程度、
受注者の裁量やノウハウによって仕事がすすめられるから、
最初から100%手順や仕様が決まっているわけでもないし、

いや、
いちおう決めることは決めるのだが、
システム開発などでは、
追加や仕様変更なんかがよくあるのだ。


問題は、
その変更の協議
うまくいくかどうかである。


やはり変更
金額にもひびいてくるようなとき、

問題が表面化するのだ。



開発プロセスの途中段階で、

システム仕様の機能追加など、
変更があると、
その分コストが追加でかかることはいなめない。


対して
発注者(ユーザ)としては、
思わぬ出費となって、
都合がわるいということもあるだろう。

個人的にも経験があるが、
やはり、
あとから作業内容を変更されたり、
追加でなにかたのまれたりするのは、
お客さんからすると、
たんなる要望の伝達なのだが、
受注した側からみると、
立派な追加業務
だったりするのだ。


立場によって、
意味合いがかわってくるのである。


ところで
このやりとりが
口頭だけでなされてしまうと、
仕様変更の有無と内容について認識が共有できなくなり、
役割分担や責任範囲を曖昧にしてしまうので、
気をつけたい。

やはり手続規定に従って、
厳密にやりたいところである。

ちいさなことだが、
現場レベルでは
こうした行き違いなんかがあると、
やりにくくてしょうがないのである。


さて
変更手続の規定テクニックについては以前書いたので、
今回は、

変更の協議そのものが不調に終わったときにそなえて、
リスクを少しでも減らしておける規定を考えたい。


上記のような前提では、
どのような規定があるとよいだろうか?


発注者(ユーザ)側にメリットのありそうな
テクニックとして考えられるのは、
万が一協議が完全に決裂したときのために、
契約を解除できる
オプションをつけておくこと。


もちろんこれは、
発注者がわに解除権をもたらすものであって、
協議がだめだったからといって
受注者が仕事を投げ出してもよいという意味ではない。


製品に変更が必要になったものの
変更協議がととのわないために、
ニーズに沿わない製品の完成を
契約で強いることは無意味なので、
あくまで発注者が
中途解約できるようにしておくという意味だ。


当然、
途中解約による損害については
民法第641条の趣旨
(仕事が未完成の間になされた注文者の契約解除に伴う損害賠償義務)
に従って賠償されるべきである。


つまりこの場合、
発注者(ユーザ)は、受注者に、
仕事の出来高に応じた報酬を支払い、
発生した損害は賠償しなければならない。



反対に、
受注者側(システムのベンダなど)としては、
どう対応すべきだろうか?


変更の協議がうまくいかなかったとしても、
それだけで解除の必要はない
(予定通り作業すればよいから)
が、


もしも協議の結果として、
意見の隔たりが大きく表面化するなど、

これ以上は協議が整わないことが確実視されるようなときは、
業務を中断することができるという条項をいれておくとよいだろう。




協議の不調にともなう中途解約と
それにともなう損害賠償については
以下のように規定するとよい。



協議の結果、変更の内容が作業期間又は納期、委託料及びその他の契約条件に影響を及ぼす等の理由により、発注者が個別契約を中止しようとするときは、発注者は受注者に対し、中止時点まで受注者が遂行した個別業務についての委託料の支払い及び次項の損害を賠償した上、個別業務の未了部分について個別契約を解約することができる
 2. 発注者は、前項により個別業務の未了部分について解約しようとする場合、解約により受注者が出捐すべきこととなる費用その他受注者に生じた損害を賠償しなければならない。」