契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

契約書には印紙をはるのか?


ものすごく多い質問のひとつに、

「え? 契約書って印紙をはるんですか? 」

というのがある。


結論から言うと、
貼ることもあるし、
貼らないこともある。

これは気分で決めているわけではなく、
印紙税法にこまかく定められているルールがあり、
それにあてはまったら、
印紙をはらなければならない。

つまり契約書に印紙を貼る(ことがある)のは、
印紙税という税金を納めるためである。


ここからがすこしややこしい。
印紙税が課税されるのは、
印紙税法で定められた課税文書に限られている。

課税文書とは、
次の三つのすべてに当てはまる文書をいう。

(1) 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。


と、なっているのだが、
そんなふうにいわれたところで
つい読み飛ばしてしまう。

それくらいこまかいのだ。

もういっそのこと、
細かい分類はやめて、
一定額に決めてしまっていただきたいくらいである。

結局、考えていてもはじまらないので、
印紙をはるかどうか、
はるとして、いくらのをはるのか、
というのは、
税務署に電話して聞くのが
もっとも正確で早い。


冗談のような本当のはなしである。


とはいえ
多少、心得のある方なら、
印紙税額一覧表というのがあるので、
それをもとに正確に印紙額を割り出すことは、
充分に可能だ。


例えば、
「不動産売買契約書(第1号文書)」、
「工事請負契約書(第2号文書)」、
「売上代金の領収書(第17号の1文書)」などは、
その文書に記載されている金額に応じて、
印紙税をおさめる
(つまり、印紙を貼り付けて消印する)。

何だ簡単なことだと
思われるかもしれないが、
印紙をわかりにくくしている要素があるのだ。

それは
課税文書に該当するかどうかは
あくまでその文書に記載されている
内容に基づいて判断すべきとされていることだ。

つまりタイトルだけで判断すると
まちがうこともある。

その文書に記載されている文言、
符号等の実質
的な意味を汲み取って
判断する必要があるというのだ。

たとえば、
文書に取引金額そのものの記載はないが、
文書に記載されている単価、数量、記号等により、
当事者間において取引金額が計算できる場合は、
それが「記載金額」として判断される。

これが「実質的」ということだ。

あるいはまた、
売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、
その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、
その文書は、
上代金の受領書(第17号の1文書)に該当することになる、
といった具合だ。

まあほんとうに、
よく考え付くなというほど細かいのであるが、
基本的にビジネス契約書では、
印紙は必要になることを前提に考えた方がいい。

たとえば基本契約とタイトルにつくたぐいの契約書であれば、
たいていは1通4千円の印紙税が必要になる。
(場合による。)

印紙を貼るかどうかという問題と、
契約書の効力とは無関係であるから、
もし印紙を貼るべき契約書に貼っていなかったとしても、
契約書が無効になったりはしない。
そこは切り離して考えるべきだ。

あとは印紙税を節約するため、
原本をつくらず、
コピーですませるということが実務上おこなわれている。

これは半分正解(コピーは課税文書にあたらないから)だが、
税務署は「実質的に」判断するので、
あまり常態化しているようなら
慎重に検討した方がよいだろう。

本当に難題である。