契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

契約違反には、どう対処したらいい?

契約書をつくっておくのは
あいての契約の違反を予防するためでもあるが、
そもそも契約違反についてはどのようなルールがあるのだろうか?

民法でいえば
約束への違反というのは
債務不履行に関するルールでかんがえることになる。

債務不履行というのは
契約に違反する(約束を守らない)こと、
つまり「契約の相手方が債務を履行しない」ということだ。

すこしこまかくいえば、

履行遅滞(りこうちたい) ・・・ 期限より遅れる
履行不能(りこうふのう) ・・・ 履行できない
不完全履行(ふかんぜんりこう)・・・一部だけの履行

という分類もできるといわれている。

この分類はまあ理解しやすくて便利なので
教科書的説明にはよくつかわれている。
僕も大学の授業でこのように教わった記憶がある。

もちろん
すべての債務不履行が必ずこれにあてはまる
というわけではない。

たとえば「不完全履行」は、
結果的に履行遅滞であるか、
または履行不能につながっていくともいえるからだ。


さておき

債務不履行があったらどうなるのか?
にはなしをもどすが、
これも民法上は
履行請求権、解除権、損害賠償請求権発生するという、
基本的なお約束があるので、
知っておきたい。

履行請求権は
ごく簡単なことで、
つまり
約束を破られたわけであるから、当然、
約束通りにやってくれ、と主張する権利が生じることになる。

法的に権利が発生するから、
それによって強制履行、
現実的履行の強制もあり得る、
という具合に、
因果関係としてつながっていく。

さらに重要なのが、
解除権が発生する(=つまり契約の解除ができる)ということだ。

解除ができることが
なぜそれほど重要かと言うと、
相手が約束をまもらないときに、
こちらからも契約関係を断ち切ることができないと、
不公平だからだ。


相手が約束を守らないとわかれば、
さっさと他の相手方と契約したいと考えるだろうし、
あるいは、
こちらの義務からさっさと解放されなければ、
こまるだろう。

そこで民法も、
解除することがきると
定めている。

ただ、
履行不能のとき以外は、
債権者は相当の期間を定めて
その履行をするよう催告を行い、
その期間内に履行がないときは契約を解除できる(541条)
のであって、
すぐさま解除できるというわけではない。

つまり、

・相当の期間を定める (いまから○○日以内に約束どおりにせよ、みたいな。)
・催告をする (ようするに手紙を書いたりする。)
・催告しても履行がないことを確認する (これ結構重要。あきらかに履行がないことを確認する。)

というステップを踏む必要がある。

正直、まどろっこしいのだが、
民法上はそのようになっているし、
また、
契約の解除という大きなアクションを、
あまりたやすく実現できてしまうと、
不都合もある。

結局、
契約関係に入った当事者が、
契約をあまりに簡単に解除できてしまうと、
取引の安全性や、
安定性がなくなるからだ。

とはいえ、
約束をやぶられて困るのは、
やぶられたほうの当事者であるから、
相手があきらかに約束違反をしているとき、
たとえば代金を支払わない可能性が高いときなどに、
あまり悠長なことをいってもいられない。

そんなときは、
(そのような事態が予想されるときは)
あらかじめ契約で、
即座に解除できるというようなルールを決めておく、
という対策が考えられるわけだ。

もし、
この趣旨の条項が無い場合は、
あくまでも民法のルール通りの対応で、
解除するしかない。


参考
民法第541条: 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
民法第545条: 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。