契約書業務マニュアル

平成15年から契約書だけをつくり続けてきた契約書専門の行政書士

適法なら、どんな約束でも「契約」になるのか?


適法な「約束」だったらすべて「契約」になるのか?
という方向で考えるのも、
契約のロジックを学ぶ上でいい練習になる。


法律違反でなければいいか?
適法な約束ならすべての意思表示が契約となるのか?

というと、
当然ながら例外がある。

よく引き合いにだされるはなしとしては、
飲み屋の約束。
カフェー丸玉事件(大判1935年4月25日)判決が有名だ。

約束はしても、
訴えによって履行の請求を成す権利を否定されたという例だ。

約束の存在自体は認めているから、
そもそも契約の不存在とはすこしちがう。

法律の強制力の行使などによって
「国家が介入すべきでない「約束」もあると考えられていることになる。

飲み屋でかわした約束が拘束力をもたないのではないか
というような主旨の判例である。

まあ言われなくても実感としてはよくわかるのだけど、
あえて法的な理論にもちこめば、
給付保持力はあるが訴求力がない債務=「自然債務」とする考え方や、

いや、心裡留保だから、と考えることもできる。


心裡留保とは、
意思表示が、その意思表示をした者の真意と異なる意味に理解されること
(意思と表示とが不一致であること)を知りながらする意思表示のこと。

ようは
約束の体裁はとっていたけれど、
「あれは冗談だ」っていうようなことだ。

この場合意思表示は原則として有効(民法93条本文)。

でも
相手方が表意者の本当の意思(真意)を知っていた、
あるいは注意すれば知りえたようなときは
意思表示は無効、
とされている(同法93条但書)からややこしいが。


そんなわけだから、
契約書の作成者は、

民法をはじめ、そのビジネスに関連する法令を徹底的に調べ、
状況判断することで適法な契約を心がけることになる。

ただし違法性などの最終判断は、
裁判所が行うわけで、
普通の人は厳密にはリスクを予測するまで。

法令、判例を調べて、
それらを解釈して知っておく、
備える必要があるわけだ。


ポイントをまとめるとすれば

・契約は、表示された意思が根拠となって成立している
・原則として、申込みと承諾の一致が契約の成立過程である
・契約は、原則として自由に結んでよい(内容も、相手も)
強行規定に違反すれば無効となる。公序良俗に違反すれば無効となる。
・その他、社会常識のようなものも有効性に影響することがある。
・契約の有効性について最終的な判断をするのは裁判所・法令や判例を参考にして契約を結ぶ必要がある。