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コンビニの深夜営業とかを命じるのは違法なのか? おもしろい判例3

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つづき(最後)


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ウ 現在,被告の店舗では,一般的な公共料金等の収納代行業務について,
①来店客から払込票を預かり,②その枚数を確認し,③レジの「公共料
金」ボタン等を押し,④払込票の枚数を入力し,⑤払込票のバーコードの
スキャンを(2枚以上ある場合には連続して)行い,⑥レジ画面の「受付
終了」にタッチし,⑦レジに表示された金額を読み上げ,⑧来店客から現
金を預かり,⑨その預かり金額を入力し,⑩客層ボタンを押し,⑪印刷さ
れる受領レシート及び釣銭を来店客に交付し,⑫払込票の所定欄にストア
スタンプを押し,⑬そのうち「お客様控え」を来店客に交付する,という
作業手順で行われている。被告の担当者が平成23年3月29日に実際に
上記①~⑬の作業を行ったところ,預かった払込票が1枚である場合の所
要時間は約40秒,3枚である場合の所要時間は約75秒であった。(乙
9の1,10の1・5,25)

エ 前記(3)ウのとおり,平成11年以降,pによってバーコードの様式の
統一が図られた。その後も,平成20年には,スキャンミスを防止するた
め,被告の働きかけによってブックタイプと呼ばれる複数枚の払込票が廃
止され,平成21年には,pによって払込票のサイズの統一等が実施され
た。

被告自身も,前記(3)ウのとおり,平成11年に精算前の取消しを可能
とするレジシステムを開発,導入したほか,平成17年には,スキャンし
た払込票の枚数をレジの画面上で確認することができるようにし,平成2
2年11月には,前記ウの⑤のスキャンした枚数が④の入力枚数に達した
時点で,「精算後に受領証とレシートをお受け取り下さい」という自動音
声が流れるとともに,レジの顧客用画面に受付枚数及び受付金額が表示さ
れ,来店客がそれを確認して同画面上の確認ボタンを押すという手順とな
るようにレジシステムの改良を行った。その結果,スキャン漏れの発見が
容易になったため,現在では,スキャン漏れによる誤収納のおそれは低下
している。

また,被告は,収納金の点検作業の効率化を図るため,平成18年12
月以降,加盟者が現金カウント機である「s」を通常価格(10万円から
13万円程度)よりも割安(税込み8万4000円)で購入したり,低廉
なリース料(月額2656円)でリースを受けたりすることができるよう
に斡旋を行っている。上記機器を使用すれば,レジ1台当たり約1分で点
検作業を行うことが可能である。現在,加盟者の約65%が上記機器のリ
ースを受けている。

さらに,現在,被告の大半の店舗には,t銀行のATMが設置されてい
る。このため,加盟者は,物品販売の売上金や本件対象業務に係る預かり
金を,金融機関に赴くことなく,夜間や休日であっても随時送金すること
が可能となっている。(乙9の1)

オ このほかにも,被告は,誤収納による加盟者の損害発生を防止するため,
平成21年以降,収納代行サービスの委託元に対し,取扱金額の上限を1
件当たり30万円以下とするよう要請している。また,被告は,同様の観
点から,平成22年9月以降,料金収納業務保険を導入している。上記保
険の加入者は,公共料金等の収納代行の際に,払込票のデータを正常にレ
ジに登録することができなかった場合(具体的には,払込票バーコードの
スキャン漏れをした場合や,受付取消し時のストアスタンプの消印漏れを
した場合,インターネット代金収納時の払込票番号登録間違いをした場合
等)において,それによって生じた損害のうち免責金額である3000円
を超える部分について補償(補償限度額は1店舗当たり年間60万円)を
受けることができる。上記保険の保険料は月額100円であり,加盟者の
約98.5%がこれに加入している。

なお,平成22年9月から平成23年2月までの期間において,上記保
険の適用件数は合計486件であり,このうち保険金額5万円超のものが
3件,3万円から5万円までのものが4件,2万円から3万円までのもの
が19件,1万円から2万円までのものが72件,1万円未満のものが3
88件であり,1件当たりの保険金額は約6849円であった。これに対
し,平成22年2月末時点における本件対象サービス1件当たりの取扱金
額は,約9485円であった。(乙9の1,10の1~6)

(7) 我が国のコンビニエンス業界における収納代行サービスの普及状況等
ア 現在,我が国のコンビニエンス・ストア業界においては,収納代行サー
ビス等が広く普及しており,主要なコンビニエンス・ストアでは,本件対
象サービスと同種の収納代行サービス等が提供されている。(甲43,4
4,乙9の1~4)

イ 大手のインターネット調査業者であるu株式会社が平成18年4月1日
から同月5日までの間に実施した「コンビニサービス」に関するインター
ネット調査(回答者数1万5004名)の結果は,次のとおりであった。
(乙9の2~4)

(ア) 「知っているコンビニサービスをお選びください[複数回答]」との
質問に対する回答状況は,上位から順に,「ATM」91.6%,
「v・宅配便の取り扱い」89.5%,「コピー・ファックスサービ
ス」86.6%,「公共料金・国民年金や税金・その他支払」82.
1%,「映画・コンサートなどのチケットサービス」78.0%であっ
た。

(イ) 「実際に利用したことのあるコンビニサービスを教えてください[複
数回答]」との質問に対する回答状況は,上位から順に,「コピー・フ
ァックスサービス」60.0%,「公共料金・国民年金や税金・その他
支払」55.7%,「ATM」54.3%,「v・宅配便の取り扱い」
51.5%,「郵便ポスト」40.6%であった。

(ウ) 「どのような状況でコンビニサービスを利用することが多いです
か?」との質問に対する回答状況は,上位から順に,「買い物を目的に
店舗へ行きついでにサービスも利用することが多い」31.3%,「買
い物とサービスの両方を目的として店舗へ行き利用す゠‹ã“とが多い」2
3.4%,「サービスを目的として店舗へ行きついでに買い物もするこ
とが多い」17.4%,「サービスを目的として店舗へ行きサービスの
みを利用することが多い」13.7%,「コンビニサービスはほとんど
利用しない」11.0%,「特に目的なく行き用事を思い出してサービ
スを利用することが多い」3.1%であった。

(8) 本件深夜営業の実施状況
ア 被告の店舗では,深夜の時間帯における時間当たりの売上額は,その余
の時間帯における時間当たりの売上額に比して,減少するのが一般的であ
る。その一方で,深夜の時間帯には,来客数も減少するため,従業員の手
待ち時間を利用して,発注業務や店舗の清掃・点検等の作業が行われるこ
とが多い。また,一般に,早朝の時間帯には,来客数が増加して売上げも
伸びることから,これに合わせて深夜の時間帯に早朝向けの商品(パン,
米飯類,新聞,雑誌等)の発注,納品,検品,陳列等が行われている。標
準的な店舗の場合,午前2時から午前5時の間に被告の配送システムによ
って合計6回の納品が行われている。(甲52~59,乙10の1・6)
イ また,本件基本契約等では,加盟者が本件深夜営業を行う場合には,被
告に支払うチャージ算出の基礎となるチャージ率が本件深夜営業を行わな
い場合のチャージ率よりも2%低減されている。(甲2の1・2,15)

(9) 我が国のコンビニエンス業界における24時間営業の普及状況等
現在,我が国のコンビニエンス・ストア業界においては,24時間営業が
広く普及しており,主要なコンビニエンス・ストアにおいては,被告と同様,
年中無休,24時間営業の態勢がとられている。(甲5の2,26)

(10) 我が国における強盗事件の発生状況と被告の対策等
ア 我が国における強盗事件の認知件数は,平成15年に7664件に達し
た後,減少に転じ,平成22年には,前年比10.7%減の4029件と
なった。午後10時から午前7時までの時間帯に営業中のコンビニエン
ス・ストアやスーパーマーケットの売上金等を目的として敢行された強盗
事件についても,平成15年に約700件に達した後,概ね減少傾向にあ
り,平成20年は約500件となった。

平成22年にコンビニエンス・ストアにおいて発生した強盗事件は,7
23件であったのに対し,被告の加盟店で発生した強盗事件は147件で
あり,このうち人身傷害を伴うものは4件(いずれも軽傷)であった。こ
れを平成22年2月末時点の被告の店舗数(約1万2750店)で除して
計算すると,加盟店1店舗当たりの強盗事件の発生率は約1.15%,加
盟店1店舗当たりの人身傷害強盗事件の発生率は約0.03%であり,他
社のコンビニエンス・ストアよりも発生率が高いというような状況にはな
い。(甲13,70,乙10の8,27)

イ 被告は,加盟店における強盗の発生を防止するため,研修等を通じて
様々な対策や店舗運営上の留意点等を指導している。被告が指導している
対策等としては,①防犯設備(防犯カメラ,防犯ミラー,防犯カラーボー
ル,携帯用非常ボタン,侵入防止扉,防御盾,ドアチャイム店内鳴音装置
等)の設置,②ATMへの随時入金や金庫の利用によるレジ内現金滞留の
防止,③複数従業員によるシフト態勢,④来店客に対する挨拶の敢行,⑤
警戒時の対応等が挙げられる。(乙10の1・7・9)

ウ また,被告は,強盗発生時の被害を最小限に抑えるため,加盟店に侵入
防止扉(カウンター内への侵入を防止する扉)や防御盾(内蔵アラームを
大音量で鳴動させる装置のついた盾)を設置するとともに,警備会社との
間で警備契約を締結した上,加盟者に対し,警備会社への通報機能を備え
た携帯用非常ボタンを1店舗当たり2台ずつ貸与している。携帯用非常ボ
タンは,これを押すと,店舗に設置されたアラームが鳴動するとともに,
赤色灯が点灯・回転し,店内の画像が警備会社に伝送される機能を備えて
おり,発報から30秒以内に警備会社から被害店舗に確認の電話が入り,
応答がなければ自動的に110番通報されるシステムになっている。
平成22年1月から同年11月までの間に,強盗の危険を察知して携帯
用非常ボタンが使用された事例は39件あったが,このうち35件におい
ては,強盗犯人がアラームの鳴動等にひるむなどして犯行を断念して逃走
している。(乙10の1・9)

エ さらに,被告は,強盗被害が発生した場合に加盟店の損害を填補するた
め,1店舗当たり2億円の保険金額の現金盗難被害保険に加入し,その保
険料を負担している。(乙10の1)

2 本件対象業務に係る差止請求について
(1) 独占禁止法2条9項5号ハは,「自己の取引上の地位が相手方に優越して
いることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,取引の相手方に不利
益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する
こと」は不公正な取引方法に該当するとしている。そこで,まず最初に,被
告の優越的地位の有無について検討する。

被告は,本件フランチャイズ・チェーンの運営者であり,原告らは,その
加盟者であるところ,前記1で認定した事実によると,①原告らは,被告か
ら,その保有するコンビニエンス・ストア事業に係る経営ノウハウの使用を
許諾され,これに依拠して本件各店舗を経営しており,商品の仕入れについ
ても被告に大きく依存していること,②原告らは,開業時に少なくとも25
0万円の初期投資をしている上,本件基本契約等では,契約期間は15年間
という長期間に及ぶものとされており,契約の終了後,Aタイプの加盟者に
ついては,少なくとも1年間はコンビニエンス・ストア営業を行うことがで
きず,Cタイプの加盟者については,直ちに被告に店舗を返還するものとさ
れていること,③被告は,全国37都道府県に1万店舗以上の加盟店を擁し,
年間2兆円以上の売上高を有しているのに対し,原告らは,いずれも年間売
上高が数億円程度にとどまる中小規模 の小売業者であることを指摘すること
ができる。

これらの諸点に照らすと,原告らと被告との間には,原告らにとって被告
との取引を継続することができなくなれば事業経営上多大な支障を来すとい
う関係があるということができるから,本件基本契約等締結後における被告
の取引上の地位は,原告らに対して優越しているものというべきである(な
お,本件全証拠によっても,原告ら各自と被告との間で本件基本契約等が締
結されるまでの段階で,被告の取引上の地位が原告らに優越していたものと
認めることはできない。)。

(2) そこで,進んで,被告による優越的地位濫用の有無について検討する。
ア この点について,原告らは,原告らには本件対象業務を行う義務がない
にもかかわらず,被告はその取引上の優越的地位を利用して,煩瑣なだけ
で利益の薄い本件対象業務を行うことを不当に強要し,誤収納による損失
や多額の現金の取扱いによる強盗被害の危険が高まるという不利益を与え
ている旨主張するところ,確かに,本件基本契約等には,本件対象業務に
関する明文の規定がないことは,原告らの指摘するとおりである。

イ しかしながら,他方,本件においては,次の諸点を指摘することができ
る。

(ア) 被告は,本件フランチャイズ・チェーンの運営者として,加盟者との
間で本件基本契約等を締結し,自らの保有するコンビニエンス・ストア
の経営に関するノウハウや商標,サービスマーク,意匠等を用いて,同
一のイメージの下に加盟店の営業を行う権利を与え,経営指導や技術援
助等を行う一方,加盟者から,その対価としてチャージの支払を受けて
いる。一般に,このようなフランチャイズ・システムにおいては,フラ
ンチャイジーがフランチャイザーから提供されるノウハウや商標,サー
ビスマーク,意匠等を用いて,同一のイメージの下に商品の販売やサー
ビスの提供等を行い,フランチャイズ・チェーン全体が統一的に運営さ
れており,そのために業務マニュアル,商品やサービスの品ぞろえ,接
客方法等の統一が図られるとともに,その時々の状況に応じて合理性の
認められる限度でこれを変更していくことが予定されているものと解さ
れる。

本件フランチャイズ・チェーンに関しても,前記1で認定したとおり,
加盟者は,本件基本契約等において,その加盟店が共通の仕様や品ぞろ
え,接客方法,便利さ等の特色を有しており,これが本件イメージとし
て広く認識されていることによって,加盟店の信用が支えられているこ
とを確認した上で,商品構成や品ぞろえ等を含む経営ノウハウを組織化
した本件システムに反する行為や本件イメージの変更を行わないことを
約している。したがって,加盟者は,本件基本契約等に基づき,本件フ
ランチャイズ・チェーンの利便性にかかわるもので,本件イメージの重
要な要素を構成する商品やサービスについては,特段の事情のない限り,
これを提供する義務を負っており,商品やサービスの内容,構成等が合
理性の認められる限度で随時変更されることも了解していたというべき
である。


(イ) 本件においては,被告は,昭和62年10月に公共料金等の収納代行
サービスを開始した後,その対象となる料金の種類や委託元企業等の数
を増やして取扱件数等を増加させていったものであり,原告らの中で最
も加盟時期の早い原告dが加盟した平成8年には,年間取扱件数が約2
452万件,年間取扱金額が約1660億円に達する規模となっていた。
また,その頃までには,宅配便受付サービスも開始されており,被告の
加盟店が収納代行サービスや宅配便受付サービスを提供する店舗である
という認識が一般に広まっていた。そうすると,収納代行サービスや宅
配便受付サービスは,平成8年頃までには,本件フランチャイズ・チェ
ーンの利便性にかかわるものとして,本件イメージの重要な要素を構成
するに至っていたものというべきである。

(ウ) また,被告は,加盟希望者が本件システムの内容について十分に理解
した上で本件フランチャイズ・チェーンに加盟するかどうかを判断する
ことができるようにするため,契約締結に先立って面接等を実施してい
るところ,その際,加盟希望者に交付される資料等には,収納代行サー
ビス等の内容や取扱件数及び取扱金額の推移,収納代行サービス等の重
要性等が記載されていた上,被告のリクルート担当者も,加盟店では収
納代行サービス等を提供することになっていることや,これが本件イメ
ージの一部となって売上げにも貢献していること等を説明していた。

原告らも,前記(イ)のとおり,既に収納代行サービスの取扱量が相当な規
模に上り,被告の加盟店は収納代行サービス等を提供する店舗であると
いう認識が一般に広まっている状況下において,上記のような面接等を
経た上で本件基本契約等を締結し,既存店舗の訪問や実際の店舗での実
地訓練によって収納代行サービス等を体験していたのであるから,収納
代行サービス等が本件イメージの重要な要素を構成するサービスであり,
加盟店において提供すべきサービスの一つであることを十分に認識し,
これを了解した上で,本件基本契約等を締結したものというべきである。

(エ) さらに,平成22年2月末の時点で,被告に収納代行サービスを委託
する企業や地方公共団体等は,約320社に達しており,現在では,被
告の加盟店において本件対象サービス(別紙サービス目録記載①~⑪及
び⑭の各サービス)が提供されている。このうち,同目録①~⑪の各サ
ービスは,来店客が持参した払込票又はマルチコピー機から発券される
払込票の提示を受けてその委託元に支払う各種料金等 の収納を代行する
ことを内容とするものであり,同目録⑭のサービスは,宅配便受付サー
ビスと同様に,大手宅配便業者が取り扱うメール便の受付けを行うこと
を内容とするものである。各種料金等の収納代行業務は,料金等の種類
や委託元の企業等によって格別異なるものではなく,メール便の受付業
務も,宅配便の受付業務と特段変わるところはない。したがって,本件
対象業務は,いずれも原告らの加盟時に既に導入されていたものか,又
は既に導入されていた業務と基本的に性質を同じくするものであるとい
うことができる。

(オ) 次に,平成22年2月末の時点で,本件対象業務1件当たりの手数料
収入額(チャージ控除前のもの)は,約66円(来店客の支払手数料を
加算した場合には約77円)であり,おにぎりを2個販売した場合の粗
利益を若干上回る程度のものである。物品販売の場合には,仕入商品の
種類及び数量の決定,商品の陳列,売れ残り商品の廃棄等に要する手間
や,廃棄に伴う仕入原価相当額の損失等のコストが生じるのに対し,本
件対象サービスの場合には,これらのコストは発生しないこと等も考慮
すると,本件対象業務によって加盟店が取得する手数料収入が不当に低
廉であるということはできない。

他方,上記時点で,1店舗当たりの本件対象業務の取扱件数は,1日
当たり約70件であり,1件当たりの取扱金額は,約9485円であっ
た。その処理に要する所要時間は,払込票1枚当たり約40秒(一度に
複数枚を処理する場合の払込票1枚当たりの所要時間はさらに短縮され
る。)程度にとどまる上,被告は,本件対象業務の負担軽減や過誤防止
のために,払込票のサイズの統一,レジシステムの改良,現金カウント
機の割安価格での購入やリースの斡旋,取扱金額の上限設定,料金収納
業務保険の導入等を行い,さらに強盗被害の発生を防止するために,加
盟店に侵入防止扉や防御盾を設置し,警備会社との間で警備契約を締結
した上で,警備会社への通報機能を備えた携帯用非常ボタンを貸与し,
自ら保険料を負担して現金盗難被害保険に加入するなどの対策も講じて
いる。

これらの点からすると,本件対象業務によって原告らの被る負担がこ
れによって得られる利益に比して過重なものであるとまでいうことはで
きない。

(カ) さらに,現在,我が国のコンビニエンス・ストア業界においては,本
件対象サービスと同種の収納代行サービス等が広く普及しており,収納
代行サービス等は,一般人がコンビニエンス・ストアの提供するサービ
スとして想定又は利用するものの中でも上位に位置づけられている。し
たがって,被告の加盟店において本件対象サービスが提供されないとい
う状況が生じた場合には,本件フランチャイズ・チェーンの利便性にか
かわる本件イメージが損なわれることは避け難い。

ウ 前記イで指摘した諸点,とりわけ被告における収納代行サービス等の推
移や実施状況,被告の加盟希望者に対する情報提供,本件対象業務の内容
やこれによる負担の軽重等に照らすと,被告が原告らに対して本件対象業
務を行うことを求めることは,正常な商慣習に照らして不当に原告らに対
して不利益を与えるものではなく,独占禁止法2条9項5号ハ所定の「不
公正な取引方法(優越的地位の濫用)」に当たるということはできない。
エ これに対し,原告らは,①本件対象業務の処理のために最低でも1日当
たり140分を要しており,②本件対象業務1件当たりの手数料収入額は,
大手銀行の窓口における振込手数料額(315円から840円)と比して
著しく低廉である旨主張する。

しかしながら,本件対象業務の処理のために1日当たり140分を要す
るとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,原告らの上記主張①は,
レジにおける処理業務のほかに,売上金と収納代行サービス等に係る収納
金との仕分け作業,受領した払込票の枚数及び金額の確認作業,収納金の
送金作業及び銀行での翌日分の両替等の作業が必要であることを前提にす
るものであるところ,証拠(乙5,10の1)及び弁論の全趣旨によると,
被告においては,レジの処理記録に基づいてストアコンピューター上で自
動的に各種帳票類が作成されるシステムが導入されているため,収納代行
サービスに係る収納金と物品の売上金とを仕分けする作業は不要であるこ
とが認められる上,前記1で認定したとおり,現在,被告の加盟店の多く
においては,現金カウント機や店舗内に設置されたATMを利用して現金
の点検や送金を容易に行うことが可能な状況になっているのであるから,
原告らの上記主張①は,いずれにしても採用することができない。
原告らの上記主張②についても,銀行の口座振込業務は,決済の方法や
手順等の点において,コンビニエンス・ストアにおける収納代行業務とは
その性質を異にするものであるから,収納代行業務の手数料収入額が銀行
窓口の振込手数料額を下回るからといって,不当な取引条件を課すものと
いうことはできない。

3 本件深夜営業に係る差止請求について
(1) 本件基本契約等の締結後における被告の取引上の地位が原告らに対して優
越していることは,前記2で認定,説示したとおりである。
(2) そこで,進んで,被告による優越的地位濫用の有無について検討する。
ア この点について,原告らは,被告はその取引上の優越的地位を利用して,
本件基本契約等を変更して本件深夜営業を中止したい旨の原告らの申入れ
を不当に拒絶し,原告らに対し,売上げの少ない本件深夜営業を行うこと
を強要し,深夜労働の負担や強盗被害の危険という不利益を与えている旨
主張する。

イ しかしながら,前記1で認定した事実によると,原告らは,いずれも本
件基本契約に加え,本件条項により本件深夜営業の義務が定められた本件
付属契約を締結した上で,本件フランチャイズ・チェーンに加盟したとい
う のであるから,原告らが本件基本契約等に基づき本件深夜営業を行う義
務を負うことは明らかである。

これに加えて,前記1で認定した事実によると,①原告らの中で最も加
盟時期の早い原告dが加盟した平成8年には,既に被告の加盟店は24時
間営業の店舗であるという認識が一般に広まっており,被告が契約締結に
先立って加盟希望者に交付した資料等にも,24時間営業の実施が明記さ
れていたこと,②深夜の時間帯には,売上額が減少するのが一般的である
ものの,被告の加盟店では,従業員の手待ち時間を利用して,発注業務や
店舗の清掃・点検等の作業が行われることが多く,来客数の増加する早朝
に合わせて早朝向け商品の発注,納品,検品,陳列等も行われていること,
③深夜のコンビニエンス・ストア等における強盗事件は,近時,減少傾向
にあるとはいえ,軽視し得ないものではあるが,他方において,被告にお
ける発生率が他社よりも高いというような状況にはなく,原告らによる本
件基本契約等の締結時から現在までの間に,深夜の時間帯における強盗の
発生状況等に関して,本件条項を定めるに当たって前提とされた事実関係
の基礎が時の経過により失われたと評価し得るほどの重大な事情変更があ
ったとはうかがわれないこと,④被告においても,強盗被害の発生を防止
するため,加盟店に侵入防止扉や防御盾を設置し,警備会社との間で警備
契約を締結した上で,警備会社への通報機能を備えた携帯用非常ボタンを
貸与し,自ら保険料を負担して現金盗難被害保険に加入するなどの各種対
策を講じていること,⑤現在,我が国のコンビニエンス・ストア業界にお
いては,24時間営業が広く普及しており,被告の加盟店では,本件深夜
営業が行われないことも珍しくないという状況が生じた場合には,本件フ
ランチャイズ・チェーンの利便性にかかわる本件イメージが損なわれるこ
とは避け難いこと等を指摘することができる。

そうすると,被告が本件基本契約等の変更を拒み,本件深夜営業を行う
ことを原告らに求めることは,正常な商慣習に照らして不当に原告らに対
して不利益を与えるものではなく,独占禁止法2条9項5号ハ所定の「不
公正な取引方法(優越的地位の濫用)」に当たるということはできない。
ウ これに対し,原告らは,本件深夜営業により過重労働を強いられている
旨主張し,原告h本人作成の陳述書(甲63)及び同原告本人尋問の結果
中には,開業以来,月400時間前後も店内に拘束される過重労働を続け
てきたなどとする供述記載部分ないし供述部分が存在する。

しかしながら,証拠(原告h本人尋問の結果)によると,原告hは,開
業時に,従前の借入金の返済及び建築費等のために7000万円を借り入
れ,その後も若干の追加借入れを行ったため,毎月40万円以上(一時は
月額55万円程度)の返済を余儀なくされており,深夜の時間帯の人件費
削減のために自ら勤務せざるを得ないという状況にあることが認められる。
そうすると,原告hの現在の労務が上記のような状況にあるとしても,
このような状況に陥ったのは同原告が借財を負担するに至ったことに由来
するものというべきであり,このことをもって上記状況が本件深夜営業そ
れ自体の負担によってもたらされたものということはできない。したがっ
て,原告らの上記主張は,採用することができない。

4 結語
以上のとおり,原告らの本件請求は,いずれも理由がないからこれを棄却す
る。よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第8部
裁判長裁判官 福 井 章 代
裁判官 秋 吉 信 彦
裁判官 川 勝 庸 史