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わからないものをこそ、読んでみる (技術的な判例)3

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つづきです
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(2) 原告は,引用例では,モジュラーコネクタの構成につき,甲15から接触
子が前方で折れ曲がること,前端付近にそのための空間を備えることが確認でき,
引用発明もそのようなことを前提とした技術思想であると主張する。
しかし,引用例に記載されたコネクタ用接触子は,一般のコネクタ用接触子(モ
ジュラーコネクタに限定されることはない。)において,接触子用素材のかしめ部
分と芯線のかしめ部分とを独立させて,これ等素材と芯線との重なりによる芯線切
断の惧れが全くないようにすることを課題とするものであるから,原告が主張する
ような前提のものではない。

(3) 原告は,「引用発明は,「四部分」でかしめを行う構成だからこそ,クリ
ンプ高さに適応する芯線の幅も充分に広いものを使用することが出来る」旨主張す
るが,引用例の記載(6頁13行~16行)をみれば,「クリンプ高さに適応する
芯線の幅も充分に広いものを使用することが出来る」ことは,「接触子用素材のか
しめ部分と芯線のかしめ部分とを独立させる」ことによって奏されるものであるか
ら,「四部分」でかしめを行うことを必須の条件としていない。

原告は,審決は,引用発明の「一対のかしめ片4a」は本件発明の「一対の第1
かしめ片」に,引用発明の「一対のかしめ片4c」は補正発明の「一対の第2かし
め片」に相当するとしているが,本件発明の「第1かしめ片2a」に相当するのは,
「かしめ片4a」だけでなく,「かしめ片4b」も有し得るが,審決には上記認定
の根拠や妥当性が示されておらず,引用発明の「一対のかしめ片4b」が本件発明
に対する当てはめがされていないと主張する。

しかし,引用発明の「一対のかしめ片4a」と補正発明の「一対の第1かしめ片」
とは,その形成された位置,かしめ固着した部材,及び固着手段が共通するもので
あるから,両者が相当するとした審決に誤りはない。

また,補正発明の電線接続構造は,第1~3かしめ片以外の第4かしめ片を備え
ることを除外しておらず,引用発明の「一対のかしめ片4b」に相当する部材が補
正発明に特定されていないことをもって,審決における補正発明と引用発明との相
当関係及び一致点の認定に誤りがあるということはできない。
(4)ア 引用発明の「一対のかしめ片4a」は,補正発明の「一対の第1かしめ
片」に相当するから,原告の相違点6の遺脱の主張は理由はない。
イ 補正発明の電線接続構造は,第1~3かしめ片以外の第4かしめ片を備
えることを除外しておらず,引用発明の「一対のかしめ片4b」に相当する部材が
補正発明に特定されていないことをもって,原告主張の相違点7があるとはいえな
い。
ウ 引用発明の「接触子用素材1とは独立して電線芯線6をかしめ付け,圧
着部3において電線芯線6と接触子用素材1とを重ねてかしめ付けない」ことは,
補正発明の「導体の導体端面と,電線の電線端面と,を対面状に接近乃至当接させ
て配設」することに相当し,相違点8に関する原告の主張は理由がない。

2 取消事由2(相違点の判断の遺脱)
審決における引用発明の認定,補正発明と引用発明との対比,並びに,一致点及
び相違点の認定に誤りはないから,原告主張の相違点の判断遺脱はない。
3 取消事由3(審決における相違点1~5の判断の誤り)

(1) 相違点3の判断の誤りに対して
引用例には,部位Aや孔Bについて,何の記載や示唆もなく,部位Aの構造や機
能は技術常識を考慮しても不明であるから,部位Aや孔Bが,格別の技術的意義を
有するものではないことは明らかである。そして,被覆かしめ部を接続圧着端子の
軸心方向の端部に形成しているものは,周知の事項である。してみると,引用発明
において該部位を設けるか否か,すなわち,該部位を除いてかしめ片4dを圧着部
3の他方端に形成するか否かは,当業者が適宜選択し得る設計的な事項であるとい
える。
また,甲2に記載の「切り欠き溝部21」は,保持部20に形成されているもの
であって,引用例に記載の部位Aに形成された孔Bとは,その形成された位置等が
異なり,引抜き強度を上げるものでないこと,及び両者の関係も不明であって相当
するものではないことは,明らかである。
したがって,原告の上記主張は理由がない。

(2) 相違点4の判断の誤りに対して
引用例には,「電話器用コネクタに限ることなくその他一般のコネクタ用接触子
として用いることが可能である」と記載され,分野を広く応用可能なものとするこ
とが示唆されている。また,引用発明の「圧着部3」や補正発明の「接続圧着端子
(1)」を「コネクタ」と称することは,技術常識(乙1,2)である。また,一
般に,接続用圧着端子に固着された導体や電線に連結する部材をどのようなものに
するかは,当業者が所望により適宜選択をなし得る程度の設計的事項である。そし
て,補正発明において,導体(A)を突設するものとして小型電子部品とすること
に格別の技術的意義はなく,接続圧着端子が小型電子部品であるヒューズから突設
される導体をかしめ固着するものは,周知の事項である。したがって,引用発明に,
上記の事項に照らし,上記周知の事項を適用することは,当業者が容易に想到し得
たことである。

また,引用発明に上記周知の事項を適用することが技術的に絶対不可能であると
か,あるいは適用することが引用発明の技術思想に反する等といったことはないか
ら,阻害要因は存在しない。また,適用の際に多少の解決すべき問題点があったとし
ても,当業者は,適宜,創意工夫をなして問題点を解決することは通常期待される
創作活動の範囲のことといえ,阻害要因にはならない。
(3) その他の相違点の判断の誤りに対して
ア 相違点1
補正明細書や請求項1には,補正発明の接続圧着端子の材料として用いられるリ
ン青銅について,求められる特性についての記載や示唆はない。

イ 相違点2,5
ç”²ï¼’ï¼Œï¼•ã¯ï¼Œã‹ã—ã‚éƒ¨ã®å†…é¢å´ã«çª å‡ºã™ã‚‹å¸¯çŠ¶ã®å‡¸éƒ¨ã‚’有するようにすることが
周知の事項であることを裏付けるための周知例であり,甲5,8~10は,圧着時
に導体が切断されるのを防止するべく圧着部分の端部の径を拡径に形成した,いわ
ゆるベルマウスを設けることが周知の事項であることを裏付けるための周知例であ
る。そして,これらの周知の事項は,補正発明の「接続圧着端子」と共通する引用
発明の「圧着部」の技術分野に属する。
かしめ部において接続強度を高めること,及びかしめ部において接続の安定性を
高めることは周知の課題であるから,引用発明においても内在する自明の課題であ
る。してみると,引用発明において,上記の課題を解決するために,これらの周知
の事項を適用することに格別の困難性はない。

第5 当裁判所の判断

1 取消事由1(補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)につい
て
(1) 原告は,審決がした引用発明の認定のうち,「接触子用素材1の端面と電
線芯線6の端面をかしめ片4bとかしめ片4cとの間に設け,」及び「モジュラー
コネクタ用接触子」との認定に誤りがある旨主張するが,引用例の明細書及び図面
の記載を総合してみると,引用例には,審決が引用発明として認定したとおりの発
明が記載されていることが明らかである。審決の引用発明の認定に誤りはない。
(2) 取消事由1の(2)~(4)の原告の主張は,引用発明は「四部分」でかしめを
行う構成であって,「かしめ片4b」を有するものであるが,補正発明と引用発明
との一致点及び相違点1ないし5では,引用発明の上記かしめ片4bについて言及
していないことを前提とし,この点についての相違点看過,判断の遺脱をいうもの
である。

しかし,まず,補正明細書(甲13)には,以下の記載があり,この記載によれ
ば,補正発明の電線接続構造であっても,第1~3かしめ片以外の第4かしめ片を
備えることを除外するものではないことが明らかである。
【0020】
なお,本発明は,設計変更可能であって,例えば,導体かしめ部2A,導通線かしめ部2B,
被覆かしめ部2Cの大きさや長さは,導通接続する各種の電線やリード線に応じて設計変更自
由である。また,電子部品からの導体A(リード線)に,絶縁部材が被覆されている際に,導
体かしめ部2Aの電子部品側(一方端)に,導体A用の被覆かしめ部を連結するように一体状
に形成しても良い。
・・・・・・
【0025】

以上のように,本発明は,少なくとも2つの第1・第2かしめ片2a,2bを有する接続圧
着端子1に・・・・・・
次に,引用例には,従来技術として,「その一例として特開昭60-17017
9号公報に開示されている如く,圧接片の一方端に前記接触子の基部をかしめ付け
し,該圧接片の他方端に電線被覆部をかしめ付けると共に,該圧接片の中央部で前
記接触子の基部先端上に電線芯線を載せた状態でこれ等を同時にかしめ付ける手段
が多く採用されている。」と記載され,一例として示された特開昭60-1701
79号公報(甲15)には,「コネクタ用接触子140は,前端に接触かしめ部1
42A,中央部に心線かしめ部142B,後端に被覆かしめ部142Cを有した圧
着部142と,・・・・・・とを備えており,圧着部142の接触かしめ部142A
は,接触部141に対して圧着されており」(5頁左上欄11~19行)と記載さ
れ,第12図には3つのかしめ部からなる圧着部142が,第13図(C)には接
触かしめ部142Aが接触部141を圧着している断面が,それぞれ図示されてい
る。

上記記載によれば,かしめ部を3つ設け,その1つのかしめ部で接触子をかしめ
付けることは,引用発明の出願時以前から周知であり,引用発明はそのような周知
の技術を前提とした考案といえる。
また,以上の検討に基づけば,引用発明は,接触子用素材1をかしめ付けるかし
め片4aの他に,接触子抜け止めかしめ部としての接触子用素材1のつぶし部5を
かしめ付けるかしめ片4bを備えるが,基本的な機能からみると,接触子用素材1
を圧着保持するかしめ片4aがあれば足り,抜け止めの機能を有するかしめ片4b
は必須のものではなく付加的なものと解釈することができる。
そして,一般的に,基本的な機能を有する装置や器具に,付加的な機能を有する
要素を加えた装置や器具において,コスト削減や小型軽量化を目的として,付加的
な要素を省いて基本的な機能を有するだけの装置や器具とすることは,単なる設計
事項にすぎないものである。

(3) したがって,引用例において「かしめ片4b」が備わっていることは補正
発明との相違点となるものではなく,これが相違点であるとする相違点看過及びそ
の判断遺脱の原告主張は理由がない。
なお,原告は,引用発明と補正発明は,接触子用素材(単線)の端面と電線の端
面は接近乃至当接させて対面しているか否かで相違する(相違点8),と主張する
が,被告が主張するとおり,引用発明の「接触子用素材1とは独立して電線芯線6
をかしめ付け,圧着部3において電線芯線6と接触子用素材1とを重ねてかしめ付
けない」ことは,補正発明の「導体の導体端面と,電線の電線端面と,を対面状に
接近乃至当接させて配設」することに相当することは明らかであって,原告の主張
は理由がない。

(4) 以上によれば,取消事由1に関する原告の主張は理由がない。

2 取消事由2(相違点の判断の遺脱)について
上記のとおり,審決における補正発明と引用発明との対比に審決の結論に影響を
及ぼすような誤りはなく,また原告が言及されていないとする相違点6~8がある
とは認められないから,取消事由2に関する原告の主張は理由がない。

3 取消事由3(審決における相違点1~5の判断の誤り)について


(1) 相違点1について
原告は,補正発明のように,小型電子部品の針金状の単線である導体と,電線を
接続する場合の特性と,周知文献(甲2~4)のように,ヒータ線とムªãƒ¼ãƒ‰ç·šã®æŽ¥
続や,蛍光管の単線と電線を略十字に重ね合わせて固着させる場合とは,求められ
る特性が異なるので,周知文献にてリン青銅が使用されているからといって,引用
発明に適用できるとはいえず,相違点1についての容易想到性の判断には誤りがあ
る,と主張する。
しかし,補正明細書(甲13)や請求項1には,補正発明の接続圧着端子の材料
として用いられるリン青銅について,求められる特性についての限定はないから,
原告の主張は理由がない。
したがって,相違点1についての審決の判断に,原告主張の誤りはない。

(2) 相違点2,5について
原告は,周知文献(甲2,5,8~10)は,いずれもコネクタの分野ではなく,
引用例に周知文献記載の事項を適用することで,却って接触子が嵩張り,接触子配
列穴に挿入できなくなる可能性があるから,相違点2,5についての容易想到性の
判断には誤りがあると主張する。

しかし,周知文献(甲2,5)は,かしめ部の内面側に突出する帯状の凸部を有
するようにすることが周知の事項であることを裏付けるための周知例であり,周知
文献(甲5,8~10)は,圧着時に導体が切断されるのを防止するべく圧着部分
の端部の径を拡径に形成した,いわゆるベルマウスを設けることが周知の事項であ
ることを裏付けるための周知例である。そして,これらの周知の事項は,補正発明
の「接続圧着端子」と共通する引用発明の「圧着部」の技術分野に属する。
また,かしめ部において接続強度を高めること,及び,かしめ部において接続の
安定性を高めることは,周知の課題であって,引用発明においても内在する自明の
課題であるから,引用発明において,上記の課題を解決するために,上記の周知の
事項を適用することに格別の困難性はない。
したがって,相違点2,5についての審決の判断に,原告主張の誤りはない。

(3) 相違点3について
原告は,引用例の第3図の「部位A」には何か意味があると考えられ,「引用例
には該部位の機能に関する記載がない」ことをもって,当業者が適宜選択し得る設
計的な事項とはいい切れず,相違点3についての容易想到性の判断には誤りがある
と主張する。

しかし,引用例には,「部位A」の構造や機能の特定はない。また,被覆かしめ
部を接続圧着端子の軸心方向の端部に形成しているものは,周知の事項(甲2,6)
である。そうすると,引用発明において「部位A」を設けるか否か,すなわち,当
該部位を除いてかしめ片4dを圧着部3の他方端に形成するか否かは,当業者が適
宜選択し得る設計的な事項であるといえる。引用発明の被覆かしめ部を接続圧着端
子の軸心方向の他方端に形成するようにすることは,上記周知の事項に倣って,当
業者が容易に想到し得たことである,とした審決の判断に誤りはない。
したがって,相違点3についての審決の判断に,原告主張の誤りはない。

(4) 相違点4について
原告は,引用発明は,電話器以外に用いるとしてもコネクタ用に限られており,
また,コネクタに係る引用例に周知文献(甲6,7)を組み合わせることには阻害
要因があり,さらに,引用例に周知文献を組み合わせる動機は,引用例及び周知文
献にはないから,相違点4についての容易想到性の判断には誤りがあると主張する。
しかし,引用例には,「電話器用コネクタに限ることなくその他一般のコネクタ
用接触子として用いることが可能である」と記載され,分野を広く応用可能なもの
とすることが示唆されている。また,一般に,接続用圧着端子に固着された導体や
電線に連結する部材をどのようなものにするかは,当業者が所望により適宜選択を
なし得る程度の設計的事項である。補正発明において,導体(A)を突設するもの
として小型電子部品とすることに格別の技術的意義はなく,接続圧着端子が小型電
子部品であるヒューズから突設される導体をかしめ固着するものは,周知の事項(甲
6,7)である。
以上の事情を考慮すると,引用発明に上記周知の事項を適用して,接続圧着端子
にかしめ固着される導体を小型電子部品から突設されたものとすることは,当業者
が容易に想到し得たことである。
したがって,相違点4についての審決の判断に,原告主張の誤りはない。

第6 結論
以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求
を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩 月 秀 平
裁判官
池 下 朗
裁判官
古 谷 健 二 郎