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わからないものをこそ、読んでみる (技術的な判例)2

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容易到達性の判断の事例

つづき



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第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)
(1) 審決は,引用発明を,「接触子用素材1の端面と電線芯線6の端面をかし
め片4bとかしめ片4cの間に設け,」と認定した点,「モジュラーコネクタ用接
触子」と認定した点で誤っている。
引用例には,接触子用素材1と電線芯線6の各「端面」における位置や向きにつ
いての記載はなく,「接触子用素材1の端面と電線芯線6の端面をかしめ片4bと
かしめ片4cの間に設け」との技術事項は,第3図のみを根拠として認定している。
したがって,審決が引用発明において認定した「接触子用素材1の端面と電線芯線
6の端面をかしめ片4bとかしめ片4cとの間に設け」との文言は,削除したもの
とすべきである。
また,「モジュラーコネクタ用接触子」との文言は,引用例の考案の名称,実用
新案登録請求の範囲にはないことから,認定すべきではなく,「コネクタ用接触子」
と認定すべきである。

(2) 引用例では,モジュラーコネクタ内部の構成について,「電話器等におけ
るモジュラーコネクタは,モジュラーコネクタソケット内に折り曲げた接触子の数
本を並置しておき,該ソケットに挿入するモジュラーコネクタプラグにおける同じ
く並置した数本の接片と夫々接触するように構成されておる。そして,この場合の
前記ソケットにおける接触子は圧接片の介在下に電線と接続されている。」(1頁
17行~2頁4行)と記載されている。引用例で例示された刊行物である特開昭6
0-170179号公報(甲15)の第1,2図には,ソケット10内で圧着部4
2に電線43と接続された接触子40が,圧着部42の前方で折れ曲がることの他
に,接触子40の前端付近で,プラグ20を抜き差しする空間がある。このような
折れ曲がりや空間は,例示された刊行物1の出願人であるヒロセ電機株式会社のホ
ームページや,引用例の出願人である日本連続端子株式会社のホームページでも確
認できる。

したがって,引用発明がコネクタに関するものに限定されることから,折れ曲が
った接触子用素材1の前端付近に空間が必要であり,かつ,プラグの抜き差しごと
に接触子用素材1が変形することが,引用例における技術的思想の前提となる。
(3) 引用例には,「このように,本考案接触子は,接触子用素材と電線との接続
に際して,これ等をかしめ付ける圧着部を,先端から順に接触子用素材かしめ部,
接触子抜け止めかしめ部,電線芯線かしめ部及び電線被覆かしめ部との四部分で行
うようにし,しかも,この構成によって,接触子用素材のかしめ部分と芯線のかし
め部分とを独立させることが出来るから,これ等素材と芯線との重なりによる芯線
切断の惧れが全くないと共に,この部分に限られたクリンプ高さに適応する芯線の
幅も充分に広いものを使用することが出来るので,電話器用コネクタに限ることな
くその他一般のコネクタ用接触子として用いることが可能である等,本考案接触子
は構成簡単にしてその効果が極めて顕著なるものであり,即実用に供し得るもので
ある。」との記載がある。これによれば,引用発明は,「四部分」でかしめを行う
構成だからこそ,クリンプ高さに適応する芯線の幅も充分に広いものを使用するこ
とが出来ることが記載されている。また,引用発明はコネクタに関するものに限定
されることから,折れ曲がった接触子用素材1の前端付近に空間が必要であり,且
つ,プラグの抜き差しごとに接触子用素材1が変形することが,引用例における技
術的思想の前提となる。

一方,補正発明は,「一対の第1かしめ片(2a)(2a)」を有する「導体か
しめ部(2A)」,「一対の第2かしめ片(2b)(2b)」を有する「導通線か
しめ部(2B)」,「一対の第3かしめ片(2c)(2c)」を有する「被覆かし
め部(2C)」を有している。

審決は,引用発明の「一対のかしめ片4a」は補正発明の「一対の第1かしめ片
2a,2a」に,引用発明の「一対のかしめ片4c」は補正発明の「一対の第2か
しめ片2b,2b」に,引用発明の「一対のかしめ片4d」は補正発明の「一対の
第3かしめ片2c,2c」に,それぞれ相当すると認定した。しかし,補正発明の
「第1かしめ片2a」に相当するものとしては,審決で言及された引用発明の「か
しめ片4a」だけでなく,「かしめ片4b」も有り得る。にもかかわらず,審決に
は,引用発明の「一対のかしめ片4a」が補正発明の「一対の第1かしめ片2a,
2a」に相当する根拠や妥当性が示されておらず,引用発明の「一対のかしめ片4
b」の補正発明に対する当てはめがされていない。正しくは,補正発明の「一対の
第1かしめ片2a,2a」に相当するものとしては,引用発明の「一対のかしめ片
4a」でなく,「一対のかしめ片4b」が当て嵌まる。審決では,補正発明と引用
発明の対比が十分に検討されていない。

(4) その結果,審決は,引用発明と補正発明の以下の相違点3点の認定を遺脱
した。

(相違点6)
導体かしめ部について,補正発明では,接続圧着端子の軸心方向の一方端に形成
されているのに対して,引用発明では,引用例の第2図及び第3図に示されている
ように,かしめ片4bはかしめ片4c,4dよりも右側(すなわち,軸心方向の一
方端側)に形成されているものの,圧着部3の右端部(すなわち,軸心方向の一方
端)に形成されていない点。

(相違点7)
かしめ部の数について,補正発明では,接続圧着端子に,導体かしめ部,導通線
かしめ部,被覆かしめ部の合計3つが形成されているのに対して,引用発明では,
圧着部に,接触子抜け止めかしめ部,電線芯線かしめ部,電線被覆かしめ部の他に,
接触子用素材かしめ部の合計4つが形成されている点。

(相違点8)
接続圧着端子について,補正発明では,導体の導体端面と,電線の電線端面と,
ã‚’å¯¾é¢çŠ¶ã«æŽ¥è¿‘ä¹ƒè ‡³å½“接させて配設しているのに対して,引用発明では,導体の導
体端面と,電線の電線端面と,を対面状には接近乃至当接させて配設しているか不
明な点。

2 取消事由2(相違点の判断の遺脱)
上記相違点6~8の認定を遺脱した結果,審決は,相違点6~8の判断も遺脱し
た。

特に,相違点8についていうと,審決が引用した周知文献のうち,導体かしめ部
について,接続圧着端子の軸心方向の一方端に形成されている旨が開示されている
のは,甲2及び甲6だけである。このうち,甲2の第2図(b)には,「温度ヒュ
ーズ1の単線のリード端子2」と「撚線であるリード線3」とが,圧着端子5を介
して接続されているが,リード線3の端面が圧着端子5の影に隠れて,「リード端
子2の端面と,リード線3の端面と,を対面状に接近乃至当接させて配設し」てい
るか否か不明である。つまり,「導体の導体端面と,電線の電線端面と,が対面状
に接近乃至当接させて配設し」ていることは,引用例,各周知文献のいずれにも開
示されておらず,全く開示されていない事項を,引用発明や各周知文献から想到す
ることは不可能である。

相違点6,7は,かしめ片が3つであるが故に,引用発明と相違点を有している
ものの,引用例及び各周知文献は,かしめ片の数が,1,2,4のいずれかしかな
く,かしめ片の数が3であるものは,一切開示されておらず,開示されていない相
違点6,7を,引用例や周知文献(甲2~10)に基いて想到したとはいえない。
3 取消事由3(審決における相違点1~5の判断の誤り)


(1) 相違点3の判断の誤り
審決は,「圧着部3のうちかしめ片4d(被覆かしめ部)より左側の部位につい
て検討すると,引用例には該部位の機能に関する記載がないとの理由で,引用発明
において該部位を設けるか否か(すなわち,該部位を除いてかしめ片4dを圧着部
3の他方端に形成するか否か)は,当業者が適宜選択し得る設計的な事項である」
と判断した(7頁22~26行)。
しかし,引用例の第3図の縦断側面図において,「かしめ片4d」及び「電線2」
より左方側の部位(部位A)には,断面を現す「平行斜線(ハッチング)」部分以
外に,「ハッチング」されていない部分が開示されており,そこに上下に貫通して
いる孔(孔B)があることが明らかである。
ここで,部位Aにおける機能が問題となる。甲2の段落0015では,「20は
同様にコードヒータを保持する保持部でさらに引抜き強度を上げるため切り欠き溝
部21を有している。」旨が記載されている。したがって,引用例の第3図におい
て,わざわざ一部だけ「ハッチング」しなかったのは,部位Aに何か意味があった
ことを示しており,その意味は,例えば,審決で挙げられた周知文献(甲2)のよ
うに「電線2を保持する」ためであることは,否定できない。更に,孔Bも,引抜
強度の向上のために設けられていたり,電線2を通すものでないとはいえない。
したがって,「引用例には該部位の機能に関する記載がない」ことは,相違点3
の差異を,当業者が適宜選択し得る設計的な事項で,埋めることが出来たとはいい
切れない。


(2) 相違点4の判断の誤り
審決は,「引用例は,接触子が電話器用コネクタ以外の分野に用いることが可能
であることを示唆している。」と認定するものの,厳密には「電話器用コネクタに
限ることなくその他一般のコネクタ用接触子として用いることが可能であ」り,引
用発明は,電話器以外に用いても,結局,コネクタ用に限られる。更に,コネクタ
の分野において,引用発明のように,接触子用素材1,電線2,圧着部3の3つ部
材を必須とするものは,モジュラジャックコネクタしか存在しない。モジュラジャ
ックコネクタ技術における接触子用素材を,ヒューズのような小型電子部品から突
設される導体にしたとすれば,ジャック(メス型)コネクタのプラグ受入開口部の
中に,小型電子部品が存在することになる。
写真1~5(甲19の1~5)で示された「補正発明に係る製品」を,引用例に
開示されたモジュラーコネクタや,ヒロセ電機株式会社や日本連続端子株式会社の
ホームページでも確認できるモジュラーコネクタに適用した場合,「接触子の先端
に小型電子部品」を付けたものが,プラグを抜差しする空間内に位置することにな
る。プラグを抜差しする空間に,小型電子部品が位置すれば,コネクタがコネクタ
としての役割を果せなくなることから,モジュラジャックコネクタの技術分野にお
ける当業者であれば,このような適用は絶対行わない。したがって,コネクタに係
る引用例に,審決(7頁31行~8頁2行)が指摘した小型電子部品の接続に係る
周知文献(甲6,7)を組み合わせることに対して,阻害要因がある。
このような阻害要因を踏まえても,あえて,引用例に周知文献(甲6,7)を組
み合わせる動機は,引用例,周知文献(甲2~10),及び,審決のいずれにもな
い。

したがって,補正発明は,引用例,甲2~10から自明ではなく,引用発明の接
続圧着端子にかしめ固着される導体を小型電子部品から突設されたものとすること
は,甲6,7に倣っても,当業者は,容易に想到することはできない。
(3) その他の相違点の判断の誤り


ア 相違点1
リン青銅が,青銅に対する錫,リンの割合によって,その弾性,耐摩耗性,耐食
性などの特性が変化するため,補正発明のように,小型電子部品の針金状の単線で
ある導体と,電線を接続する場合の特性と,周知文献(甲2~4)のように,ヒー
タ線とリード線の接続や,蛍光管の単線と電線を略十字に重ね合わせて固着させる
場合とは,求められる特性が異なる。
したがって,周知文献(甲2~4)でリン青銅が使用されているからといって,
引用発明に適用できるとは,一概にいえない。


イ 相違点2,5
これら各相違点について,審決において引用された周知文献(甲2,5,8~1
0)は,いずれもコネクタの分野ではなく,引用例の3頁10, 11行に記載され
ているように,「コネクタソケットに配置するために予め設定されている」接触子
配列穴が決まっていることから,引用例に,周知文献(甲2,5,8~10)記載
の事項を適用することで,かえって接触子が嵩張り,接触子配列穴に挿入できなく
なる可能性がある。
したがって,相違点2,5は,いずれも,引用発明と周知の事項に倣って,当業
者が容易に想到し得たとは,いい切れない。


4 まとめ
よって,本件補正は,独立特許要件に違反せず,却下されるべきものではない。
審決の,上記の各誤りは,いずれも結論に影響するから,審決は取り消されるべ
きである。


第4 被告の反論
1 取消事由1(補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)に対し
て
(1) 原告は,審決がした引用発明の認定のうち,「接触子用素材1の端面と電
線芯線6の端面をかしめ片4bとかしめ片4cとの間に設け,」及び「モジュラー
コネクタ用接触子」との認定に誤りがある旨主張する。
しかし,引用例には,「第3図及び第4図の各かしめ部断面図から理解出来るよ
うに,接触子用素材かしめ部と電線芯線かしめ部とが独立しており,圧着部3にお
いて該芯線6と該素材1とが重なりかしめ付けられることはない。」,「本考案接
触子は,・・・これ等素材と芯線との重なりによる芯線切断の惧れが全くない」と
記載されている。また,第3図には,「接触子用素材1の端面と電線芯線6の端面
とが,かしめ片4bとかしめ片4cの間に設けられて,対面状に当接させて配設し
ていること」が示され,言い換えれば,接触子用素材1の端面と電線芯線6の端面
とが,かしめ片4bとかしめ片4cの間に設けられて,重なりかしめ付けられてい
ない,すなわち,対面状に当接させていると理解できる。してみると,これらの事
項から,引用発明の「接触子用素材1の端面と電線芯線6の端面をかしめ片4bと
かしめ片4cとの間に設け」との認定に誤りはない。
また,引用例には,「モジュラーコネクタに用いて最適な接触子に関する。」と
記載されているから,引用発明の「モジュラーコネクタ用接触子」との認定に誤り
はない。

つづく