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わかる! 使える! 契約書の基本

契約書は経営、起業・独立、副業に必須のスキルです! 自分で契約書がつくれると楽しいですよ

わからないものをこそ、読んでみる (技術的な判例)

オフィシャルサイトでは参考にしていただきたいビジネス契約書のサンプル集を無料でダウンロードできます。
「リン青銅の薄板状金属部材を塑性変形させた接続圧着端子(1)を備え,かつ,・・・・」

と、すでに一行目からしてよくわからないわけであるが、
こういう難解なものをこそ、たまには読んでみたいわけで

技術的な文章というのは、つまり
あるものごとを極端に正確にあらわす必要があるときにつかわれる特殊な文章術のようなもので、
契約書の定義条項の起案には、
非常に役に立つ
ので、
やはり目を通しておく。

さらに、この判例、
争点が、「容易到達性」という、
いかにも観念的なテーマをしっかりあつかっていておもしろい。

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平成24年8月27日判決言渡
平成23年(行ケ)第10346号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成24年6月6日

判 決
原 告 染 矢 電 線 株 式 会 社
訴訟代理人弁理士 千 葉 茂 雄
堀 家 和 博
被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 岡 本 昌 直
長 浜 義 憲
氏 原 康 宏
田 村 正 明

主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由
第1 原告の求めた判決
特許庁が不服2010-16357号事件について平成23年9月5日にした審
決を取り消す。

第2 事案の概要
本件は,特許出願に対する拒絶審決の取消訴訟である。

争点は,容易想到性である。


1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成19年7月13日,名称を「電線接続構造」とする発明につき特許
出願(特願2007-183939,甲11)をし,平成22年2月15日付けで
手続補正をしたが(甲14),同年6月18日付けで拒絶査定を受けたので(甲1
2),同年7月21日に不服の審判(不服2010-16357号)を請求すると
ともに,本件補正(甲13)をした。特許庁は,平成23年9月5日付けで,本件
補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その
謄本は,同年9月28日,原告に送達された。

2 本願発明の要旨

(1) 本件補正による請求項1(補正発明,甲13)

リン青銅の薄板状金属部材を塑性変形させた接続圧着端子(1)を備え,かつ,
一対の第1かしめ片(2a)(2a)を有すると共に内面側に突出する帯状の凸部を有する導体かしめ部(2A)を軸心方向(L)の一方端に形成し,一対の第2かしめ片(2b)(2b)を有すると共に内面側へ突出する帯状の凸部を有する導通線かしめ部(2B)を上記軸心方向(L)の中間部に形成し,一対の第3かしめ片(2c)(2c)を有する被覆かしめ部(2C)を上記軸心方向(L)の他方端に形成した上記接続圧着端子(1)に,小型電子部品から突設される針金状の単線である導体(A)の導体端面(a)と,電線(D)の電線端面(b)と,を対面状に接近乃至当接させて配設し,上記第1かしめ片(2a)(2a)にて上記導体(A)を抱き込み状にかしめ固着し,上記第2かしめ片(2b)(2b)にて上記電線(D)の導通線(B)を抱き込み状にかしめ固着し,上記第3かしめ片(2c)にて上記電線(D)の絶縁被覆部(C)を抱き込み状にかしめ固着し,さらに,上記導体かしめ部(2A)の上記小型電子部品側の端縁部を,上記かしめ固着状態で拡径状にして導体切断防止縁部(10)を形成し,上記導通線かしめ部(2B)の上記絶縁被覆部(C)側の端縁部を,上記かしめ固着状態で拡径状にして導通線切断防止縁部(11)を形成して,上記小型電子部品の導体(A)と上記電線(D)とを連結したことを特徴とする電線接続構造
。


(2) 本件補正前の請求項1(補正前発明。平成22年2月15日付け手続補正
書(甲14)により補正されたもの)
一対の第1かしめ片(2a)(2a)を有する導体かしめ部(2A)を軸心方向
(L)の一方端に形成し,一対の第2かしめ片(2b)(2b)を有する導通線か
しめ部(2B)を上記軸心方向(L)の中間部に形成し,一対の第3かしめ片(2
c)(2c)を有する被覆かしめ部(2C)を上記軸心方向(L)の他方端に形成
した接続圧着端子(1)に,導体(A)の導体端面(a)と,電線(D)の電線端
面(b)と,を対面状に接近乃至当接させて配設し,上記第1かしめ片(2a)(2
a)にて上記導体(A)を抱き込み状にかしめ固着し,上記第2かしめ片(2b)
(2b)にて上記電線(D)の導通線(B)を抱き込み状にかしめ固着し,上記第
3かしめ片(2c)にて上記電線(D)の絶縁被覆部(C)を抱き込み状にかしめ
固着し,さらに,上記導体かしめ部(2A)の一方端側の端縁部を,上記かしめ固着状態
で拡径状にして導体切断防止縁部(10)を形成し,上記導通線かしめ部(2B)の
上記絶縁被覆部(C)側の端縁部を,上記かしめ固着状態で拡径状にして導通線切
断防止縁部(11)を形成して,上記導体(A)と上記電線(D)とを連結したこと
を特徴とする電線接続構造。


3 審決の理由の要点

(1) 審決は,「補正発明は,引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が
容易に発明をすることができたので独立特許要件を欠く」
,「補正前発明も,同様に,引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた」と判断した。


(2) 上記判断に際し,審決が認定した引用例(実願昭63-27684号(実開平1-132064号)のマイクロフィルム,甲1)記載の発明(引用発明),補正発明と引用発明との対比・判断,補正前発明と引用発明との対比・判断は,以下のとおりである。


ア 引用発明

軸心方向の先端から順に,一対のかしめ片4aからなり接触子用素材1を抱き込
み状にかしめ付ける接触子用素材かしめ部,一対のかしめ片4bからなり接触子用
ç´ æ ï¼‘のつぶし部5を抱き込み状にかしめ付ける接触子抜け止めかしめ部,一対の
かしめ片4cからなり電線2の電線芯線6を抱き込み状にかしめ付ける電線芯線か
しめ部及び一対のかしめ片4dからなり電線2の被覆7を抱き込み状にかしめ付け
る電線被覆かしめ部とを有する圧着部3に,接触子用素材1の端面と電線芯線6の
端面をかしめ片4bとかしめ片4cの間に設け,接触子用素材1を前方に突出させ
て圧着すると共に接触子用素材1とは独立して電線芯線6をかしめ付け,圧着部3
において電線芯線6と接触子用素材1とを重ねてかしめ付けないモジュラーコネクタ用接触子。

イ 補正発明と引用発明との対比

(ア) 一致点

「接続圧着端子を備え,かつ,一対の第1かしめ片を有する導体かしめ部を軸心方
向の一方端に形成し,一対の第2かしめ片を有する導通線かしめ部を上記軸心方向
の中間部に形成し,一対の第3かしめ片を有する被覆かしめ部を上記軸心方向の他
方端側に形成した上記接続圧着端子に,針金状の単線である導体の導体端面と,電
線の電線端面と,を対面状に接近乃至当接させて配設し,上記第1かしめ片にて上
記導体を抱き込み状にかしめ固着し,上記第2かしめ片にて上記電線の導通線を抱
き込み状にかしめ固着し,上記第3かしめ片にて上記電線の絶縁被覆部を抱き込み
状にかしめ固着し,導体と上記電線とを連結した電線接続構造。」である点。

(イ) 相違点1

接続圧着端子について,補正発明では,リン青銅の薄板状金属部材を塑性変形さ
せたものであるのに対して,引用発明では,どのような材料でどのように形成した
ものであるのか不明である点。


(ウ) 相違点2
導体かしめ部及び導通線かしめ部について,補正発明では,内面側に突出する帯
状の凸部を有するのに対して,引用発明では,そのような凸部を有していない点。


(エ) 相違点3
被覆かしめ部について,補正発明では,接続圧着端子の軸心方向の他方端に形成
されているのに対して,引用発明では,引用例の第2図及び第3図に示されている
ように,かしめ片4dはかしめ片4a~4cよりも左側(すなわち,軸心方向の他
方端側)に形成されているものの,圧着部3の左端部(すなわち,軸心方向の他方
端)には形成されていない点。


(オ) 相違点4
導体について,補正発明では,小型電子部品から突設されるのに対して,引用発
明では,モジュラーコネクタの接触子用素材であり小型電子部品から突設されたも
のではない点。


(カ) 相違点5
補正発明では,上記導体かしめ部の上記小型電子部品側の端縁部を,上記かしめ
固着状態で拡径状にして導体切断防止縁部を形成し,上記導通線かしめ部の上記絶
縁被覆部側の端縁部を,上記かしめ固着状態で拡径状にして導通線切断防止縁部を
形成しているのに対して,引用発明では,そのような導体切断防止縁部及び導通線
切断防止縁部を形成していない点。


ウ 相違点の判断


(ア) 相違点1について
接続圧着端子の材料をリン青銅とすることは,例えば特開平5-326109号公報
(甲2,段落【0015】参照。)に記載されているように本件出願前周知であり,リ
ン青銅の薄板状金属部材を塑性変形させて端子を形成することは,例えば特開2003
-272725号公報(甲3,段落【0024】参照。),特開2006-49089
号公報(甲4,段落【0022】参照。)に記載されているように本件出願前周知であ
る。

一方,引用例における圧着部3(接続圧着端子)は,接触子用素材1と電線2とを電
気的並びに機構的に一体連結できるものであれば,どのような材料でどのように形成す
るかは当業者が適宜選択し得る設計的な事項である。
したがって,引用発明の接続圧着端子を,リン青銅の薄板状金属部材を塑性変形させ
たものとすることは,上記周知の事項に倣って,当業者が容易に想到し得たことである。


(イ) 相違点2について
かしめ部において接続強度を高めることは当業者にとって本件出願前周知の課題で
あり,その課題を解決するために,かしめ部の内面側に突出する帯状の凸部を有するよ
うにすることは,例えば上記特開平5-326109号公報(段落【0015】参照。),
特開2002-313313号公報(甲5,段落【0016】及び図12参照。)に記
載されているように本件出願前周知である。
したがって,引用発明の導体かしめ部及び導通線かしめ部に,内面側に突出する帯状
の凸部を有するようにすることは,上記周知の事項に倣って,当業者が容易に想到し得
たことである。


(ウ) 相違点3について
被覆かしめ部を接続圧着端子の軸心方向の端部に形成しているものは,例えば上記特
開平5-326109号公報(図2参照。),特開平3-88283号公報(甲6,1
頁右下欄7~8行及び第4図参照。)に記載されているように本件出願前周知である。
一方,引用例の第2図及び第3図における,圧着部3のうちかしめ片4d(被覆かし
め部)より左側の部位について検討すると,引用例には該部位の機能に関する記載がな
いので,引用発明において該部位を設けるか否か(すなわち,該部位を除いてかしめ片
4dを圧着部3の他方端に形成するか否か)は,当業者が適宜選択し得る設計的な事項
である。

したがって,引用発明の被覆かしめ部を接続圧着端子の軸心方向の他方端に形成する
ようにすることは,上記周知の事項に倣って,当業者が容易に想到し得たことである。


(エ) 相違点4について
引用例の「このように,本考案接触子は,・・・電話器用コネクタに限ることなくそ
の他一般のコネクタ用接触子として用いることが可能である等,本考案接触子は構成簡
単にしてその効果が極めて顕著なるものであり,即実用に供し得るものである。」(6
é ï¼ ˜è¡Œï½žï¼—頁2行)との記載より,引用例は,接触子が電話器用コネクタ以外の分野に
用いることが可能であることを示唆している。
また,接続圧着端子が小型電子部品であるヒューズから突設される導体をかしめ固着
するものは,例えば上記特開平3-88283号公報(1頁右下欄8~12行及び第4
図参照。),発明協会公開技報公技番号91-3288号(甲7,1頁左欄及び第1図
参照。)に記載されているように本件出願前周知である。
したがって,引用発明の接続圧着端子にかしめ固着される導体を小型電子部品から突
設されたものとすることは,上記周知の事項に倣って,当業者が容易に想到し得たこと
である。

(オ) 相違点5について
かしめ部において接続の安定性を高めることは当業者にとって本件出願前周知の課
題であり,その課題を解決するために,圧着時に導体が切断されるのを防止するべく圧
着部分の端部の径を拡径に形成した,いわゆるベルマウスを設けることは,例えば上記
特開2002-313313号公報(段落【0016】,【0024】及び図12参照。),
特開2003-100413号公報(甲8,段落【0013】参照。),実願昭57-
196314号(実開昭59-101358号)のマイクロフィルム(甲9,2頁2~
9行及び第1図参照。),特開昭53-104883号公報(甲10,2頁左下欄13
行~右下欄8行及び第4図参照。)に記載されているように本件出願前周知である。
そして,引用発明の接触子用素材かしめ部及び電線芯線かしめ部(導体かしめ部及び
導通線かしめ部)にかしめ固着状態で拡径状にして導体切断防止縁部及び導通線切断防
止縁部を形成する際に,接触子用素材1及び電線芯線6(導体及び導通線)の先端側に
導体切断防止縁部及び導通線切断防止縁部を形成しても切断の影響が小さい点を考慮
すると,導体切断防止縁部及び導通線切断防止縁部を導体かしめ部及び導通線かしめ部
のうち導体及び導通線の根本側のみに設けることは格別なことではない。
また,上記(相違点4について)で述べたのと同様に,導体を小型電子部品から突設
されたものとすると,導体かしめ部のうち導体の根本側は小型電子部品側の端縁部とな
り,導通線かしめ部のうち導通線の根本側は絶縁被覆部側の端縁部となる。
したがって,引用発明の導体かしめ部の小型電子部品側の端縁部に,かしめ固着状態
で拡径状にして導体切断防止縁部を形成し,導通線かしめ部の絶縁被覆部側の端縁部
に,かしめ固着状態で拡径状にして導通線切断防止縁部を形成するようにすることは,
上記周知の事項に倣って,当業者が容易に想到し得たことである。

(カ) 補正発明による効果・結論
補正発明による効果も,引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測し得た程度の
ものであって,格別のものとはいえない。
したがって,補正発明は,引用発明及び上記周知の事項に基づいて,当業者が容易に
発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の
際独立して特許を受けることができない。

エ 補正前発明と引用発明との対比・判断
補正前発明は,補正発明から,電線接続構造,導体かしめ部(2A),導通線かしめ
部(2B),導体(A)及び導体かしめ部(2A)の端縁部についての限定事項を省い
たものである。
そうすると,補正前発明の発明特定事項をすべて含み,さらに,他の発明特定事項を
付加したものに相当する補正発明が,引用発明及び上記周知の事項に基づいて,当業者
が容易に発明をすることができたものであるから,補正前発明も,同様に,引用発明及
び上記周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


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つづく