わかる! 使える! 契約書の基本

契約書は経営、起業・独立、副業に必須のスキルです! 自分で契約書がつくれると楽しいですよ

グリーとディー・エヌ・エー “釣りゲーム” をめぐる戦い 5

オフィシャルサイトでは参考にしていただきたいビジネス契約書のサンプル集を無料でダウンロードできます。

前回の続き

----


〔第1審被告らの主張〕
(1) 争点1-1(被告作品における「魚の引き寄せ画面」は,原告作品における
「魚の引き寄せ画面」に係る第1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害するもの
か)について

ア 原判決について
原判決は,単なるゲームのルールや表現手法の共通点を,それは単なるアイデア
又は釣り針に掛かった魚の様子といった事実であるのに表現と誤って認定し,仮に
表現であるとしても少なくともありふれた表現を創作性のある表現と誤って認定す
るとともに,何らの証拠に基づかず原告作品と被告作品との相違をゲームの製作者
であれば比較的容易に思い付く演出にすぎないなどと誤った判断をした。その結果,
これらのゲームのルールや表現手法といったアイデアや釣り針に掛かった魚の様子
といった事実を保護することとなり,極めて長期間にわたって第1審原告以外の第
三者が同一のアイデアや事実を含む創作活動ができないという結果を生む,極めて
不当な判決である。


イ 共通点がアイデア又は事実にすぎないこと
原判決は,原告作品と被告作品の極めて抽象的な範囲における共通点を理由とし
て,原告作品の魚の引き寄せ画面についての創作性を認め,翻案権侵害を肯定した。


(ア) しかし,原判決が原告作品の魚の引き寄せ画面において創作性を認めた「水
中の魚を黒い魚影で表示し,魚影が水中全体を動き回るようにした点」とは,魚の
具体的な形状や動きとは無関係に,単純に魚を黒い魚影で描いていること及び魚が
水中全体を動き回ることであり,また,「水中の背景は全体に薄暗い青系統の色で
統一し,水底と岩陰のみを配置した点」とは,岩陰の形状や位置,数とは無関係に
何らかの岩陰が水底に描かれるという点ということになる。上記のような抽象的な
共通点は,いずれもアイデアないし事実そのものにすぎない。


(イ) 原判決が原告作品の魚の引き寄せ画面の創作性を認めた「魚を引き寄せる
タイミングを,魚影が同心円の一定の位置に来たときに決定キーを押すと魚を引き
寄せやすくするようにした点」は,単なるゲームのルールを述べているにすぎず,
著作権の保護の対象外であることは明らかである。また,原判決が創作性を認めた
「水中の中央に,三重の同心円を大きく描いている点」は,単に同心円を画面中央
に配置しているという位置と,その大きさについて述べているにすぎないし,「魚
影が水中全体を動き回るようにした点」についても,魚影の具体的な表現や他の対
象物との位置と無関係に,単に抽象的に水中全体を動き回る点を示しているにすぎ
ないから,これらも,単に釣りゲームにおいて比較的大きな同心円内にランダムに
動く魚影が入ったときに決定ボタンをクリックすると魚を引き寄せやすくなるとい
うゲームのルールの共通点を述べているにすぎない。
これが表現と認められ,創作性を認めて著作権の保護の対象とすると,原告作品
の魚の引き寄せ画面におけるゲームのルールや操作性,すなわち,ランダムに動き
回る魚と円の位置によって魚の引き寄せやすさが異なるといったルールを採用した
釣りゲームはいずれも著作権侵害となってしまい,本来保護の対象とはしてはなら
ない「原作品によってヒントを得たとか着想を感じ取ったというにとどまる場合」
についてまで,著作権の保護の対象としてしまう。


(ウ) 以上のとおり,原判決が認定する両作品の共通点は,単なるゲームのルー
ル・表現手法といったアイデアや,実際の海中の様子・釣り針に掛かった魚の様子
という事実又はかかる事実を釣りゲームに採用するというアイデアの共通点を述べ
ているにすぎず,したがって翻案とはなり得ない。
ウ 仮に表現であるとしても創作性がないこと


(ア) 原告作品は,釣りゲームとしても,また,携帯電話機向けフラッシュゲー
ムとしても,ありふれた表現やルールを採用したものにすぎない。
原判決は,実質的には釣りゲームとしてありふれた水中影像に,同心円を用いて
同心円の一定の位置に魚影がいるときにクリックすれば釣り上げやすくなるという
ルールの組合せに創作性を認めた。


(イ) しかし,同心円の的を除けば,原告作品の魚の引き寄せ画面の影像は,家
庭用ゲーム機向けの釣りゲームをはじめとする多くの釣りゲームにおいて採用され
ている極めてありふれた表現である。
また,同心円を用いて同心円の一定の位置に対象物がいるときにクリックをする
という程度のルールや表現は,携帯電話機向けフラッシュゲームのみならずゲーム
一般において広く採用されている極めてありふれたルールや表現である。携帯電話
機向けのゲームを含めたコンピュータゲームでは,あるゲームのルールを異なるジ
ャンルのゲームに応用することは極めてありふれた手法である。特に,1つのボタ
ンしか利用しない携帯電話機向けフラッシュゲームでは,同心円を用いて同心円の
一定の位置に対象物がいるときにクリックをするという程度の抽象化されたルール
を採用した場合に採り得る表現上の選択肢は,極めて限られたものである。


(ウ) 携帯電話機向けフラッシュゲームにおいては,円を含む一定の範囲に対象
物が入った場合に決定ボタンをクリックするというゲームは多数存在しており,原
告作品の魚の引き寄せ画面は,このようなフラッシュゲームにおいてありふれたル
ールと表現を採用しているにすぎない。特に,ゲーム製作における「当たり判定」
において,点と円の位置関係で「当たり」を判定する仕組みは極めて基本的かつ単
純なものであって,かかるルールを釣りゲームに採用することや,かかるルールを
採用した場合に同心円を用いることになることは誰がやっても同じになる程度のあ
りふれた表現である。
原告作品と被告作品は,従来存在していた釣りゲームにおけるファイト影像(魚
の引き寄せ画面)における水中影像に,ゲーム一般に極めて一般的だªãƒ«ãƒ¼ãƒ«ã‚’採用
したという点において共通しているにすぎず,かかる共通点は,アイデアないし事
実における共通点にすぎず,仮に,一部表現部分が含まれているとしても,ありふ
れたものであり創作性のない表現部分における共通点にすぎないから,翻案権侵害
は成立し得ない。


エ 相違点から本質的な特徴を感得できないこと


(ア) 原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面とでは多数の相違点が存在してお
り,他方で,両作品の魚の引き寄せ画面の共通点は単なるアイデア部分,又は,従
来の釣りゲームやフラッシュゲームでも採用された極めて創作性の低い表現にすぎ
ないことから,被告作品に接する者が原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得
することはできない。とりわけ,原告作品にはない被告作品の特徴は,これまでの
釣りゲームにはなかった第1審被告らの強い個性が表れたものであり,被告作品の
魚の引き寄せ画面と原告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が画面全体から受ける
印象を異にする。したがって,かかる観点からも翻案権侵害は否定される。


(イ) 仮に,原告作品の魚の引き寄せ画面において創作者の個性が発揮されてい
るとしても,その表現部分は,①横長の長方形の水中画面中において水中画面の左
右端及び下端に接するとともに,水中画面下中央部に向かって傾斜するなどの具体
的な形状の岩陰,②水中・海底・岩の色よりも薄い青色の円とドーナツ形状部分の
組合せからなる具体的な同心円の形状,③ユーザーからみて奥から,同心円,横向
きの魚影,岩を順次配置することによって奥行きを表現すること,といった全ての
具体的な表現を組み合わせた影像である。また,原告作品は的の中心部に近い位置
に魚影が重なったときにクリックすればより引き上げやすくするというルールを理
解させるために「PERFECT」,「GREAT」,「GOOD」及び「BAD」という4段
階の表示をすることによってそのルールを表現している。このような具体的な表現
を採用することによって,原告作品の魚の引き寄せ画面は,弓道の的を連想させる
的をユーザーから見て最も奥に配置するとともに,ごつごつした岩場の奥で,釣り
針に掛かった魚がユーザーから見て左右に方向を転換して暴れ回る様を表現すると
ともに,的の中心部に近い位置に魚影が重なったときにクリックすればより釣り上
げやすくなるという印象を与えている。

これに対し,被告作品の魚の引き寄せ画面では,上記のような原告作品の魚の引
き寄せ画面の具体的表現と同一ないし類似の表現は採用されていない。しかも,被
告作品の魚の引き寄せ画面は,①水中の色とは異なる,緑と赤の11枚のパネルか
らなるダーツの的を想起させるような視認性の高い円形の的を正方形の水中画面中
央部に配置し,緑と赤のパネルをランダムに入れ替えることによって,運不運をユ
ーザーに想起せしめ,遊技性が極めて高いゲームであることを印象づけると共に,
②水中画面下方から離れた海底に配置された2つの岩陰(その形状は,原告作品の
ものと全く異なる)を配置し,③円形の的を魚影や岩陰よりもユーザーから見て手
前に配置することによって奥行きを表現し,更には正面から見た魚影を表現してい
る。そして,一本釣り,必殺金縛り及び確変といったカットイン機能を搭載し,こ
れに対応する影像を表現している。さらに,被告作品は11枚のパネルからなる的
のうち,緑のパネルに魚影が重なったときにクリックすれば引き寄せやすくなる,
ひいては11枚のパネルからなる的の中でクリックすればよいというルールではな
いことを理解させるために「Good」及び「Out」という2段階の表示をすることに
よってそのルールを表現している。このような具体的な表現を採用することによっ
て,被告作品の魚の引き寄せ画面は,ダーツの的を連想させる的をユーザーから見
て最も手前に配置するとともに,水中の色とは異なる緑・赤の配色を施して,その
形状や配色をユーザーに印象づけるとともに,魚影が遠方から手前に引き寄せられ
る印象を与え,更には,ランダムに入れ替わるパネルやカットイン機能によって運
不運をユーザーに想起させている。このような表現は,原告作品の魚の引き寄せ画
面はもとより,他の釣りゲームや携帯電話機向けフラッシュゲーム等において採用
されていないものであって,第1審被告らの強い個性が表れている部分である。
このように,原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面は,共通する事実やアイデ
アについて,その具体的な表現が全く異なっており,しかも,被告作品には,上記
のような創作性の高い表現がされている。そして,魚の引き寄せ画面を含む一連の
流れにおいても,多数の相違点が存在していることも併せ考慮すると,原告作品と
被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が画面全体から受ける印象を異にすること
は明らかであって,被告作品の魚の引き寄せ画面から原告作品の魚の引き寄せ画面
の本質的な特徴を直接感得することはできないから,被告作品の魚の引き寄せ画面
は,もはや原告作品の魚の引き寄せ画面の複製ないし翻案ということはできない。

オ 原判決の結論の不当性

(ア) 原判決は,このように原告作品の魚の引き寄せ画面に採用された,特許登
録も得られないような極めてありふれたルール(アイデア)にヒントを得たにとど
まるような作品についても,著作権侵害としてしまい,ゲームにおけるジャンルの
形成を阻害するだけではなく,釣りゲームという普遍的なゲームジャンルにおいて
極めて簡単なゲームのルールさえ使用できなくなる結果を生み,ゲーム製作に対す
る甚だしい萎縮効果をもたらすものである。

(イ) 極めて単純なゲームである原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面の翻案
を検討するにあたっては,ゲーム製作に対する自由な創作を確保するという観点か
らも,ゲームのルールや操作性に関わる共通点についてはいずれもアイデアであり,
ã¾ãŸï¼Œå…·ä½“çš„ãªè¡¨ç¾ã‚’é›¢ã‚Œã¦æŠ½è±¡çš„ã«é¸æŠžã®å¹…ãŒå­˜åœ¨ã—ã¦ã„ãŸã¨ã—ã¦ã‚‚ï¼ Œãã‚Œã‚‰ãŒ
釣りゲームやゲーム一般においてありふれた影像やルールの組合せにすぎないもの
は,やはりありふれた表現とみるべきであり,更には具体的な表現を比較してそれ
が相違する場合においては,本質的な特徴を直接感得できないと判断されるべきで
ある。

カ 過剰差止め
被告作品は,著作権侵害ではないとされた主要画面等のウェブページと,著作権
侵害ではないとされるキャスティング画面と著作権侵害と認定された魚の引き寄せ
画面からなるフラッシュファイルとで構成されており,このウェブページとフラッ
シュファイルとは分離可能である。原判決は,1つのサーバー内に1枚の著作権侵
害をする画像が存在している場合に,そのサーバーに記録され公衆送信される他の
分離可能な適法な画像等のコンテンツの配信までも差し止めたものであって,過剰
差止めである。
(2) 争点1-2(被告作品における主要画面の変遷は,原告作品における主要画
面の変遷に係る第1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか)について
ア ウェブページ閲覧機能を用いた携帯電話機用ゲームであり,かつ釣りゲーム
である原告作品において,その創作性が認められる範囲を検討するに当たっては,
以下の視点で検討する必要がある。
(ア) 釣りという普遍的なテーマをモチーフにしたゲームであることからの制約
具体的には,釣り人の行動や常識をベースにしてゲーム化したものであることに
より,ありふれた表現とならざるを得ない部分が多く存在すること
(イ) 携帯電話機用のウェブページであることからの制約
具体的には,携帯電話機における制約や利用者の利便性向上の観点からの制約か
ら,ありふれた表現とならざるを得ない部分が多く存在すること
(ウ) ソーシャルゲームであることからの制約
具体的には,ゲームにソーシャル性を持たせるためにランキングや掲示板を設置
することが必要であり,これらを設置した上でリンクを配置した場合には誰がやっ
ても同じようなありふれた配置とならざるを得ない部分が多く存在すること
(エ) 釣りゲームとしてのありふれたアイデア・表現であること
具体的には,家庭用ゲーム機しか存在しなかった頃から,釣りゲームは,釣り場
を選んで釣りをして,釣った魚によってお金やポイントを得て,新たな釣具を購入
し,釣具を装備して,また釣りをするというサイクルによって成り立っており,ま
た,一定のノルマをクリアすることによって新たな釣り場で釣りをすることができ,
さらには,釣りの過程はキャスティング,アワセ,ファイトという3段階で構成さ
れており,ファイトの影像として水中を描いたものが存在するのであり,これらの
ありふれたアイデアないしアイデアに基づいたありふれた表現に創作性が認められ
ないこと

以上(ア)ないし(エ)の視点の下,単なるアイデア部分及びありふれた表現を除いた
部分において,原告作品と被告作品とが同一性を有するといえるのかを検討する必
要がある。
イ 画面の遷移とリンクの配置の共通点はアイデアないしありふれた部分にすぎ
ず,また,原告作品の特徴的表現を直接感得できない。
携帯電話機向けウェブサイトのリンクの配置の常識や釣り人の行動や常識を釣り
ゲームに適用するという観点から,原告作品の画面遷移やリンクの配置は,アイデ
アないし極めてありふれたものであって,これらに創作性を認めることはできない。
他方で,リンクの配置や画面遷移に関して,原告作品と被告作品とでは,多数の
相違点が存在しており,かかる観点からも,被告作品が原告作品の著作権を侵害し
ていることにはならないことは,明らかである。
ウ トップ画面,釣り場選択画面,キャスティング画面,魚の引き寄せ画面及び
釣果画面という各画面の素材の選択・配列の共通点も,アイデアないしありふれた
部分にすぎず,また,原告作品の特徴的表現を直接感得することができない。

(3) 争点2(第1審被告らのウェブページに被告影像1及び2を掲載する行為
は,不正競争防止法2条1項1号に該当するか)について
ア 周知な商品等表示とはなり得ないこと
そもそも原告影像は,その性質上商品等表示とはなり得ない。特に,原告作品は
携帯電話機向けのゲームであって,かかる性質からもゲーム影像が商品等表示とし
て機能し得ないことは明らかである。原告影像が,「グリー」「釣り★スタ」とい
う表示に代え,あるいはこれらの表示と同様に商品を表示するものとして用いられ
ているわけではなく,到底,商品等表示として需要者から認識されているとはいえ
ない。

被告影像1は平成21年2月25日までに掲載され,被告影像2も被告作品の配
信開始に近接した時期に掲載されたものであるところ,原告影像がそれ以前に周知
に至ったとはいえない。

イ 商品等表示として使用していないこと
被告影像1及び2は,いずれも単に被告作品の内容を紹介するための画像として
使用されているものであって,商品等表示として使用されているものではない。

ウ 類似していないこと
原告影像と被告影像1及び2とは類似しない。

エ 混同しないこと
原告作品と被告作品とは,「グリー」「釣り★スタ」と「モバゲータウン」「釣
りゲータウン2」といった表示によって識別されているものであって,混同するこ
とはあり得ない。


---

さらにつづく