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グリーとディー・エヌ・エー “釣りゲーム” をめぐる戦い 4

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つづき
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(3) 争点2
(第1審被告らのウェブページに被告影像1及び2を掲載する行為
は,不正競争防止法2条1項1号に該当するか)について

ア 平成21年7月及び8月以前に商品等表示として周知性を獲得したこと
ゲームの影像や動画は,それ自体が商品の出所表示を目的としていなくても,取引上二次的に商品の出所表示の機能を備える場合,商品等表示となる。原告影像には,際立った特徴と新規性があり,第1審原告は,平成19年5月24日の原告作品のリリース以降,これと酷似する被告作品がリリースされる平成21年2月25日までの約1年9か月間,顕著な特徴のある魚の引き寄せ画面を独占的に使用してきた。原告作品には,被告作品がリリースされた平成21年2月25日の時点で460万人の登録ユーザーが既に存在し,魚の引き寄せ画面の影像又はその影像を含む動画による広告宣伝においても,第1審原告のゲームであることが示されている。原告作品の魚の引き寄せ画面は,平成21年7月及び翌8月より以前に,第1審原告の出所表示機能を獲得し,原告作品の魚の引き寄せ画面は商品等表示として周知性を有するに至っている。

イ 複数の画面の一つであっても周知の商品等表示に該当し得ること
ゲームは通常多くの画面から成るが,ユーザーは,最も個性的な特徴があり,新規性のある描写に着目してゲームの出所を認識するものである。原告作品の魚の引き寄せの画面は,最も個性的特徴的で新規性ある画面であり,ユーザーが魚の引き寄せ画面と同時に,その他複数の画面を目にすることになったとしても,魚の引き寄せ画面が持つ自他識別や出所表示の機能を失わせるものではない。

ウ 商品等表示の「使用」
第1審被告らのホームページ中の被告作品紹介画面(甲16,17)では,ユーザーを被告作品に誘導する宣伝をしている。魚の引き寄せ画面の使用が,被告作品の内容を紹介するためのもので,自他識別機能以外の機能が併せ備わっていたとしても,自他識別機能が認められるのであれば,商品等表示の「使用」に当たる。


エ 混同のおそれ
原告作品及び被告作品の取引の実情及び両表示の類似性に照らせば,携帯電話機用ゲームのユーザーが両表示を見たとき,両者を全体的に類似のものと受け取るおそれは十分あり,両表示は類似している。混同のおそれは,取引者,ユーザーを判断主体として判断されるが,原告作品及び被告作品のユーザーは,一般の消費者であり,更に携帯電話機用ゲームでは,若年者も有力な顧客となる。需要者が支払の際に払う注意の程度が他の商品と比べて低く,現実に混同が生じている。

オ 小括
第1審被告らは,原告影像に類似する被告影像1及び2を,周知な商品等表示たる魚の引き寄せ画面の出所表示機能にフリーライドする態様で使用し,混同させるおそれを生じさせており,不正競争防止法2条1項1号に該当する。
(4) 争点3(被告作品を製作し公衆に送信する行為は,第1審原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか)について必ずしも著作権など法律に定められた厳密な意味での権利が侵害された場合に限らず,法的保護に値する利益が違法に侵害された場合であれば不法行為が成立するが,第1審原告は,原告作品で展開される主要画面の選択・配列及び個別の主要画
面の要素の選択・配置について時間・労力・費用を尽くして原告作品という傑作を開発し,リリース後の維持等の努力もあって経済的利益を受けているのであるから,法的保護に値する利益を有している。他方,第1審被告らは,原告作品に依拠して,原告作品に酷似している被告作品を,原告作品と同一の需要者層に向けて配信し,第1審原告が開発した成果物を不正に利用して利益を得ている。第1審被告らは,原告作品に依拠する明白な故意をもって原告作品を模倣し,原告作品と酷似した「魚の引き寄せ画面」及び「主要画面の遷移(要素の選択・配置)」を有する被告作品を製作・配信している。ユーザーを惹き込む原告作品の主要画面の遷移(要素の選択・配置)の魅力ある表現には多大な宣伝広告と維持管理等の費用が投じられ,その結果,携帯電話機用ゲームとして異例なほど全国的な人気を長期にわたって博している。それを,第1審被告らは第1審原告に無断で,営利の目的をもって反復継続して,違法に模倣した被告作品を配信して,原告作品と一致するユーザー層と第1審原告が得べかりし利益を違法に奪取している。第1審被告らが,故意をもっていることは明らかであり,その被害の規模,態様の悪質性等を考慮するなら,公正な競争として社会的に許容される限度を顕著に逸脱し,第1審原告の事業を不当に妨害するものということができ,不法行為(民法709条,719条1項)が成立する。

(5) 争点4(第1審原告の損害)について
ア 著作権法114条2項に基づく損害 8億2200万円

(ア) 第1審被告らは,第1審原告の著作権を侵害する被告作品を配信して利益を得ており,本来の著作権者が同じ利益を得られる蓋然性がある。そして,第1審被告らは,第1審原告と同様の方法で著作物を利用していた㠀‚さらに,原告作品と被告作品は市場が競合し,第1審原告に逸失利益が生じることは明らかであるから,著作権法114条2項が適用される。(イ) 平成21年2月25日から平成23年7月7日までの被告作品の配信による第1審被告ディー・エヌ・エーの受けた利益の総額は,原判決が認定した7億1200万円である。

(ウ) 第1審被告らの著作権侵害行為は,平成23年7月8日から平成24年3
月8日まで(8か月と1日)も継続している。平成23年7月7日までの被告作品の売上げは,3か月当たり5000万円であるから,同月8日から平成24年3月8日までの被告作品の売上げは,以下の計算式のとおり,1億3300万円であり,
第1審原告の損害額は,それに限界利益率83%を乗じた1億1000万円である。5000万円÷(3か月)×(8か月+1日)=1億3300万円1億3300万円×0.83(限界利益率)=1億1000万円

(エ) よって,第1審被告らが,第1審原告の著作権を侵害する被告作品の配信により受けた利益の総額(著作権法114条2項)は,上記(イ)と(ウ)の合計8億2200万円となる。(オ) 第1審被告らが,新たに提出した乙132は,裏付けとなる客観的証拠が添付されていないし,それ以外に主張を裏付ける追加の証拠はない。限界利益の算定に当たっては,変動費と追加投資が必要な場合の直接費用のみ控除が許されるものであるから,第1審原告が請求する損害額を全額認めるべきである。

(カ) 寄与率
魚の引き寄せ画面は,正にゲームの核心であり,その寄与率は,100%であって,これを減殺すべき事情はない。魚の引き寄せ画面は,一般に携帯電話機用釣りゲームでは,ユーザーを吸引する最も魅力あるものとして表現されるのであり,他の画面と不可分一体になっている。原告作品及び被告作品に関していえば,ユーザーによる対価の支払を喚起しているのは魚の引き寄せ画面であり,魚の引き寄せ画面を中心に,ユーザーがゲームに引き込まれ,課金アイテムを購入してまで被告作品のプレイを継続しようとする。アイテム自体の魅力を理由に魚の引き寄せ画面の寄与率を減殺した原判決は,ユーザーには,釣りのプレイと離れてアイテム自体をコレクションする目的があるのではなく,魚の引き寄せ画面で魚をうまく釣り上げるためにアイテムを購入していることを看過している。

(キ) 著作権法114条の5
仮に,性質上損害額の立証が困難であるとしても,著作権法114条の5により,8億2200万円をもって相当な損害額とされるべきである。(ク) 法的保護に値する利益の侵害による許諾料相当の損害(予備的請求)9970万円
著作権侵害が認められないとしても,予備的に,第1審被告らの故意による共同不法行為に基づ,平成21年2月25日から平成24年3月8日までの被告作品の売上高合計9億9700万円の10%の9970万円を,使用許諾料相当損害金として請求する。仮にその立証が性質上困難であるとしても,民事訴訟法248条によって上記の損害賠償金が認められるべきである。

イ 不正競争防止法5条3項1号に基づく損害の額 4985万円第1審被告らは,不正競争防止法2条1項1号に該当する行為により,第1審原告の営業上の利益を侵害した。商品等表示の使用に対し第1審原告が受けるべき使用許諾料相当額は,被告作品の売上げの少なくとも5%を下らない。平成21年2月25日から平成23年7月7日までの被告作品の売上高が8億6400万円を下らないことは,当事者間に争いがなく,平成23年7月8日から平成24年3月8日までの被告作品の売上高は,上記アのとおり1億3300万円であるから,売上げ合計は9億9700万円である。第1審被告らが上記商品等表示を使用したことにより,不正競争防止法5条3項1号に基づき支払うべき使用許諾料相当損害金は,以下のとおり,4985万円である。9億9700万円×0.05=4985万円ウ 法的保護に値する利益の侵害による無形損害 1億円社会的信用ないし営業上の信頼は,全国の多数のユーザーに誤解が生じなければ毀損されないというものではない。原告作品が被告作品を真似たものとの誤解を抱いている者がいることは証拠上明らかであり,第1審原告の社会的信用,営業上の信頼は重大な毀損を被り,損失は甚大である。民事訴訟法248条に基づき,平成21年2月25日から平成24年3月8日までの間に第1審被告らの不法行為(民法709条,710条,719条)によって生じた無形損害を金銭に評価すると,少なくとも1億円が相当である。

エ 弁護士費用相当損害金 9700万円
本件の難易,性質,請求額,内容等に照らせば,本件訴えの提起,追行のために第1審原告が要する弁護士費用のうち,相当因果関係のある第1審被告らの不法行為(民法709条,719条)に基づく損害額は,上記アイウの合計額である9億7185万円の10%の9700万円を下ることはない。

(6) 争点5
(第1審被告らによる謝罪広告の要否)についてア 配信差止め及び損害賠償金では回復し切れない被害の存在

第1審原告は,これまでモバイルゲーム業界の成長・発展に寄与し,原告作品の登録ユーザー約1500万人を含むSNS「GREE」のユーザーへのサービスに尽くし㠁¦ããŸã€‚ところが,第1審被告らの侵害行為の結果,第1審原告の方が被告
作品を模倣したのではないかとユーザーに誤解されるなど,築き上げてきた第1審原告の社会的信用及び営業上の信用が著しく毀損され,ユーザーの間にも少なからず混乱を生じさせている。このような状態は,単に被告作品の配信停止や損害賠償金の支払などの措置によっては解消できず,被告作品の配信が差し止められた以降も第1審原告の被害を拡大させない観点からは,謝罪広告を行うべき必要性が非常に高い。


以上のとおり,全国の多数のユーザーの誤信を解き,第1審原告の社会的信用及び営業上の信用や侵害された著作者人格権の原状を回復し,配信差止め後の被害拡大を防ぐには,第1審被告らによる謝罪広告が是非とも必要である。

イ 第1審被告らの行為態様
第1審被告らは,明らかに模倣の意図をもって原告作品と酷似する被告作品を製作して配信を開始し,莫大な数のユーザーを獲得して,莫大な売上げを得た。その上,第1審被告らは,本訴提起前の交渉時に第1審原告が配信中止の警告を発したにもかかわらずこれを無視し,第1審原告の話合い・交渉での解決のための真摯な働きかけに対しても,交渉を決裂させ,被告作品の配信を継続している。また,第1審被告らは事実の隠蔽を図り,その態様は悪質である。

ウ 謝罪広告の切実な必要性
第1審被告らは,依然として被告作品の配信を継続し,その不誠実な態度は強く批難されるべきである。第1審被告らの明白な模倣の意図,本件訴訟前及び第1審の訴訟手続における不誠実な態度,第1審原告が被った被害は被告作品の配信差止めや金銭面での補償によっても回復は十分ではないことなどに鑑みると,第1審被告らに対し,謝罪広告を命ずべき必要性は極めて大きい。



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つづく