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わかる! 使える! 契約書の基本

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ソフトウェアのリース契約は無効にできるか? おぼえておきたい判例3

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裁判所の結論部分。


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第3 裁判所の判断

1 認定事実
文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる(以下,乙C5及び証人Fの証言を「F証言」,乙C4及び証人Gの証言を「G証言」,甲B5及び証人Hの証言を「H証言」,甲B4及び原告Cの供述を「C供述」,甲A3及び原告Aの供述を「A供述」という。)。

(1) 被告と訴外E社
ア 被告は,主として事業会社との間でリース取引を行う株式会社である。被告は,当初,規模の大きい事業会社を中心にリース取引を行っていたが,平成10年に商品事業部を創設し,以後,個人事業主または小規模事業者を対象とする事業用資産リース(以下「商品事業部リース」という。)を行うようになったが,一般消費者を対象とするリース取引は行っていない。

商品事業部リースでは,多数の契約を迅速に処理し得るよう,ワンライティング方式の書式を用意してサプライヤーに使用させており,その契約の対象は,物のリース,またはソフトウェアの使用許諾権のリースに限られ,ファイナンス・リース契約の本質と矛盾し,役務提供の不履行がリース料不払の主張を招くとの理由で,サプライヤーによる役務の提供そのものをリース契約の対象とすることは予定しておらず,役務の提供をリースの対象にしたいとの申出があっても,被告は契約の締結に応じない(乙C3,F証言)。

イ 訴外E社は,横浜市神奈川区に本社を置き,大阪市淀川区に関西支店を置き,Web制作,DTP制作,ソフトウェア開発,映像制作,音楽配信を事業内容に掲げる会社である。訴外E社は,平成15年12月4日,被告との間で業務協定を締結し,商品事業部リースを取り扱うようになった。上記業務協定は,訴外E社が被告のリースシステムを利用して販売促進を図り,被告は訴外E社の推薦する顧客とリース契約を締結することによって,双方の事業の発展させることを目的とするものであり,訴外E社と被告は,上記業務協定において,要旨以下の内容を合意した(甲A5,甲C4,乙C1)。

(ア) 対象顧客は事業者であること。
(イ) リース取引の対象商品は,訴外E社が取り扱い,被告の承認する商品であって,プログラム・プロダクトが含まれること。
(ウ) 顧客より制度利用の申出があったとき,訴外E社は顧客に被告所定の申込書に必要事項を記入させ,被告宛に申し込むこと,被告は前記申込みに基づき,速やかに顧客の信用調査及び審査を行い,リース契約締結の可否を決定して,その結果を訴外E社に通知すること。
(エ) 被告・顧客間のリー契約の申込みには,被告所定のリース契約書を使用し,リース契約書の授受等リース契約に必要な業務は,被告に代わり訴外E社が行うことができものとすること,被告がリース契約書を受領し,被告所定の手続により,顧客に契約の意思,検収,連帯保証人に保証の意思を確認した後,リース契約が成立するものとし,リース売買契約成立日は,被告の指定する日とすること。
(オ) 訴外E社・被告間のリース物件の売買契約書は,事務合理化のためその締結を省略するが,前記リース売買契約成立日に当然に売買契約が締結されたものとし,訴外E社から被告へリース物件の所有権が移転すること,訴外E社は,顧客にリース物件を直接納入すること。
(カ) 本協定の有効期間中といえども,訴外E社または被告における信用事故の発生,並びに訴外E社,被告のいずれかが本協定の義務を怠ったときは,相手方はいつでも協定を解約し,損害賠償を請求できること。
ウ 商品事業部リースでは,契約の申込があると,コンピューターを使った自動審査により,法人情報,代表者の個人情報による与信審査を行うが,被告がリース物件価格の相当性を審査することは予定されていなかった。また,物件がユーザーに引き渡された後に,ユーザーが物件借受証を発行するという手続も行われなかった(乙C3,F証言)。
エ 前記業務協定締結後,被告の商品事業部から,当初はIが,平成20年4月以降はGが,担当者として一月に一回程度訴外E社を訪れ,営業状況を確認し,契約書を回収するなどしていた。訴外E社は,当初,J株式会社の代理店として,ファクシミリや電話機のリースを主たる業務としていたが,平成17年ころから,本件ソフトを対象とするリースを扱うようになり,その取扱件数は,平成17年度17件,平成18年度3件,平成19年度193件,平成20年度は9月までで188件と急増する一方,電話機等の販売はなくなった。Gは,平成20年4月にIから引継ぎを受ける際,訴外E社は,ソフトウェアを販売する会社と説明されたが,訴外E社を訪問した際に,ソフトウェアの現物を現認したことはなく,買主にどのような形でソフトウェアを交付するのか,CDROMで渡すのか,パスワードを知らせるのかも把握していなかったが,電話確認がされているので,ソフトウェアは納入されていると思っていた。Gが担当するようになり,毎月20ないし30件のソフトウェアの契約があったが,平成20年9月,被告は,業績不振を理由に,訴外E社のリースの取扱を停止し,その後,訴外E社は倒産した(乙C3,G証言,H証言)。

(2) 原告Aの関係
ア 原告Aは,平成17年当時,大阪府茨木市で洋裁教室を経営しており,原告Bは,原告A㠁®è¢«ç”¨è€…または共同経営者であった。イ 原告Aは,平成17年5月,訴外E社のKに勧誘され,訴外E社に対し,洋裁教室のホームページの作成等を依頼した。この時,Kは,原告Aに対し,ホームページ(オリジナル)7ページを作成すること,150点の更新を行うこと,1.5時間の指導を行うこと,ヤフーのビジネスサイトに登録すること,ADSLモデム及び液晶ディスプレイを交付することを約した上で,月額8700円,6年,72か月のリース料金となる旨を告げ,原告Aはこれを了承した。Kは,原告Aの訴外E社に対する「お申し込み受付書」には,上記合意に沿った役務の提供等を記載したが,原告Aを申込者,原告Bを保証人とする,訴外L株式会社に対するリース契約の申込書には,リース物件として,品名・E社オリジナルソフト,メーカー名・E社,品名・ADSLモデム,メーカー名・J株式会社と記載して,原告A及び原告Bに署名させた(甲A4,甲A5,A供述)。

ウ 訴外E社では,WEBプランナーのMらがホームページの作成を担当し,平成17年12月に作成したホームページを納品したが,注文との相違や不具合があったため,原告Aはクレームを付け,Mらは手直しを約したが,完全には修正されなかった(A供述)。
エ 原告Aの洋裁教室は,平成19年7月に兵庫県芦屋市に移転したが,平成20年7月,訴外E社のNが洋裁教室を訪れ,以前作成したホームページをリニューアルするよう提案し,その翌日ころ,NとMとが原告Aを訪ね,前リースの契約残金31万0590円を返還すること,納得のいくホームページを作ること,きめ細かいサポートをすることを約したところ,原告Aは,ホームページのリニューアルを訴外E社に依頼した。
オ 原告Aは,Nに対し,ホームページを作成すること,SEO(検索エンジンの最適化)対策をすること,顧客からのアクセスについての解析をすること,ホームページのトップにフラッシュ(動画またはアニメーション)を入れること,アイテム及びカレンダーを更新できるようにすることなどを依頼し,Nは,平成20年7月18日,訴外E社に対する「お申し込み受付書」に,注文内容として,ホームページ(オリジナル)4ページの作成,検索エンジン最適化サービス,アイテム更新プログラム,アイテム更新追加ページ,カレンダー更新プログラム,フラッシュC,アクセス解析といった,上記依頼に対応する役務の提供を記載した。Nは,これと同時に,被告宛のワンライティング方式のリース契約申込書も作成して,原告A及び原告Bに署名押印させたが,Nは,同申込書のリース対象物件の欄には,E社オリジナルソフトとのみ記載した上,リース料月額2万3730円,リース期間60か月と記載した(本件第1契約)。またNは,同日,被告宛の書面である「リース物件受領書及び契約確認書」に,原告Aの署名押印を求めたが,同確認書には,被告との間で締結した契約に基づき下記物件(E社ソフトと記載されている。)を検収したこと,物件が契約に適合しかつ瑕疵がないことを確認したこと,検収日欄記載の日付をもってその引渡を受けたこと,リース物件については被告が所有権(ソフトウェアについては使用権)を有しているものであり,物件の瑕疵,不具合,使用の有無並びに売主と申込者との間で別途約定された役務提供の有無,履行の程度及び内容のいかんと関係なく,被告に対するリース料の支払義務が発生し,リース期間中解約できないこと等が不動文字で記載されていたが,検収日,契約締結日の欄は,その時点では空白であった(甲A1,甲A2,乙A2,A供述)。
カ 訴外E社は,被告宛のリース契約申込書及びリース物件受領書及び契約確認書を被告に送付し,被告は,信用審査の後,平成20年8月11日,原告Aに電話をかけ,原告A本人であることを確認の上,リース契約の申込みをしたのは間違いないか,リース物件がE社オリジナルソフトであることは間違いないか,リース物件の納入はあったか,リース料は原告AのQ銀行の口座から毎月2万3730円を60回支払うということで間違いないかといった質問を発した。この時点では,訴外E社から原告Aに対し,ホームページ更新等の新たな役務の提供はなく,何らかのソフトウェアの引渡しもなく,原告Aが,訴外E社のサーバーにアクセスして,訴外E社
のソフトウェアを使用できる状態にもなっていなかったが,原告Aは,上記質問をすべて肯定した。この時,被告の担当者は,原告Aに対し,リース契約の対象にホームページの作成等,役務の提供が含まれないかを確認したり,ホームページ作成等の役務の提供を受けられない場合であっても被告に対するリース料の支払は免れない旨を説明したりすることのないまま,原告Aの回答にネガティブな要素はないものとして,平成20年8月11日付で原告Aの検収があったと認め,原告Aと被告との間のリース契約書の契約日の欄,及び前記リース物件受領書及び契約確認書の検収日,契約締結日の欄に,いずれも2008年8月11日と記載した。また被告の担当者は,同日,保証人である原告Bにも,電話でその保証意思等を確認した。被告は,同年8月14日,上記リース契約の物件代金として,121万6845円を訴外E社に支払った(乙A1から乙A5まで,A供述)。
キ 原告Aは,平成20年12月中旬ころ,訴外E社より新たなホームページの下書きを示されたが単純なものであったため,担当者に連絡をとろうとしたがうまく連絡がとれない状態が続き,訴外E社が支払を約した前リースの契約残金の支払も一部しかなされないまま,平成21年7月以降,事実上,訴外E社との連絡が取れない状態となったため,消費者センターや弁護士に相談の上,被告に対するリース料の支払を停止した(A供述)。
(3) 原告Cの関係
ア 原告Cは,豊中市で司法書士及び行政書士事務所を経営しており,原告Dはその妻である。原告Cの事務所には,従前よりホームページがあり,事務所に勤務するHがこれを担当していたが,平成19年に訴外E社のOが原告Cの事務所を訪れた際,Hらは,プロにホームページ゠’作ってもらうことを考え,Oにこれを依頼した。この時,Oは,リース契約にする必要があると述べ,原告Cはこれに応じた。Hは,契約書にE社ソフトと記載されていることに気付いたが,Oから特に説明もなかったので,ホームページ作成のことであろうと考えた(H証言,C供述)。
イ 訴外E社は,原告Cの事務所のためにホームページを作成し,一定の評価を得たため,Hらはそのバージョンアップを考えていたところ,平成20年6月ころ,Oが,登記や建設業の許可といった取扱分野ごと,またパソコンと携帯電話という閲覧方法ごと,計4つのホームページを作ることを提案し,Hがこれを原告Cに相談したところ,原告Cはこれを了解した(甲B6の1?8,H証言)。
ウ Oは,平成20年6月4日に原告Cの事務所を訪れ,前記4つのホームページのうちの1つを作成する旨を約しつつ,被告に対するリース契約申込書のリース物件の欄にはE社ソフトと記載し,リース料は,月額1万6380円を60か月支払う旨を記載した(本件第2(1)契約)。またOは,前記(2)オと同様に,被告宛の「リース物件受領書及び契約確認書」に原告Cの署名押印をさせたが,この時点で,同確認書の検収日,契約締結日,及び上記リース契約申込書の契約日の欄は空白であった(甲B1の1,乙B2の1,H証言)。
エ Oは,平成20年6月9日にも原告Cの事務所を訪れ,さらに3つのホームページ作成の役務の提供を約し,3件のリース契約の申込書類を原告Cに作成させ,うち1件を被告のリース(本件第2(2)契約),うち2件を訴外P株式会社のリースとしたが,契約申込書のリース物件の欄には,いずれもE社ソフトと記載した。また,前記ウと同様,Oは,被告宛の「リース物件受領書及び契約確認書」に原告Cの署名押印をさせた(甲B1の2,甲B3の1及び2,乙B2の2,H証言)。
オ 被告で訴外E社を担当していたGは,契約書をチェックしていて,同じ原告Cから被告宛のリース契約申込書が2通あることに気付き,おかしいと思い訴外E社に確認したところ,対象となるソフトウェアがパソコン用と携帯用の2つあるため契約も2つあり,価格が異なるとの説明を受け,納得した。被告の担当者は,平成20年6月20日,原告Cに電話をかけ,原告C本人であることを確認の上,リース契約の申込みをしたのは間違いないか,リース物件がE社ソフトであることは間違いないか,リース物件の納入はあったか,リース料は原告CのR銀行の口座からの引落しで,毎月1万6380円を60回,毎月2万7090円を60回,支払われることを確認した。この時点では,訴外E社から原告Cに対し,新たなホームページの作成といった役務の提供はなく,何らかのソフトウェアの引渡しもなかったが,原告Cは上記質問をすべて肯定した。また,被告の担当者は,リース契約の対象にホームページの作成等,役務の提供が含まれないかを確認したり,ホームページ作成等の役務の提供を受けられない場合であっても,被告に対するリース料の支払は免れない旨を説明したりすることのないまま,原告Cの回答にネガティブな要素はないものとして,平成20年6月20日付で原告Cの検収があったと認め,原告Cと被告との間のリース契約書の契約日の欄,及び前記リース物件受領書及び契約確認書の検収日,契約締結日の欄に,いずれも2008年6月20日と記載した。被告の担当者は,同日,保証人である原告Dにも電話でその保証意思等を確認した。被告は,同月30日,上記リース契約の物件代金として,84万円と138万9150円を訴外E社に支払った(甲B1の1及び2,甲B3の1及び2,乙B1?5の各1及び2,G証言,H証言,C供述)。
カ 本件第2契約後,Hは,訴外E社とホームページ作成の打合せをしようとしたが,Oらと連絡がとれない状態となり,リース料の引き落としは始まったのに,ホームページの作成等はされないままとなった。交渉の結果,訴外E社は,平成21年6月2日,原告Cに対し,原告Cと被告,原告Cと訴外P株式会社との間のリース契約について,既払金を返金して,既契約を解除する旨を約し,訴外P株式会社の関係では,そのとおりリース契約を解約することができたが,被告については解約できなかったため,原告Cは,被告に対するリース料の支払を停止した(甲B2,H証言)。

(4) 本件ソフトの存在
ア なお,本件各契約のリースの対象は本件ソフトとされるところ,原告はその不存在を主張している。
イ この点について検討するに,訴外E社がリース料総額100万円前後となるオリジナルソフトを開発し,それを年間200本近く販売するとすれば,具体的な商品名を付し,訴外E社の事業の中心として宣伝等を行うものと考えられるが,訴外E社のホームページにそのような宣伝等はなく(甲C4),訴外E社の担当者が本件各契約の契約申込書を作成した際に,E社ソフト,E社オリジナルソフトといった抽象的な名称を用いたことは,前記認定のとおりである。原告Aは平成17年以降,原告Cは平成19年以降,いずれも本件ソフトを対象とするリース契約を締結しているが,いずれも訴外E社が作成したホームページ自体の提供を受けるに止まり,原告らにおいて,本件ソフトの引渡しを受け,あるいは自ら本件ソフトを使用した事実はない。月一
回程度訴外E社に赴いて契約書の回収等を行い,月20ないし30件も本件ソフトのリースを扱ったとされるGでさえ,本件ソフトの現物は見たことがないとされることも前記認定のとおりである。
ウ 上記内容を総合すると,訴外E社の担当者は,原告らに対し,ホームページ作成の役務の提供を約する一方で,その代金の支払方法として被告のリースを利用するに際し,名目上のリース物件として本件ソフトを記載したに過ぎず,E社ソフト,E社オリジナルソフトなるものは,実在しないと考えるのが相当である。


2 当事者の主張に対する判断

(1) 契約の不成立,無効の主張について
ア 前記1で認定したところによれば,少なくとも原告らの認識としては,訴外E社にホームページの作成その他の役務の提供を依頼したことは明らかであり,原告Aとの間で作成された「お申し込み受付書」にもあるように,訴外E社は,原告らに対しては役務の提供を明示する一方,リース契約の申込書には,リースの対象が本件ソフトである旨を記載した上で原告らに署名押印させたため,ある種の齟齬が生じており,原告らは,この点を捉えて契約の不成立,あるいは心裡留保による無効を主張する趣旨と解される。

しかしながら,訴外E社のホームページの作成等が順調に行われた場合,原告らは,代金全額を支払う前にホームページを利用することが可能となり,その後,実質的に代金を分割払するという金融上の便宜を得ることができるのであるから,このような場合に本件各契約を,当初に遡って不成立,あるいは無効とすることは,かえって不合理な結果を生じさせる。

イ 本件各契約は,被告の商品事業部リースであって,ワンライティング方式の書類を使用し,その手続の一部をサプライヤーが行い,物件借受証の発行及びリース会社・サプライヤー間の売買契約書の作成が省略されるなど,手続的に簡略化されてはいるが,なお原告らと被告との間におけるリース契約としての性質を有しており,その前提となる原告らと訴外E社との間の法律関係とは区別されなければならず,被告と訴外E社を,単純に一体と見ることはできない。

前記1で認定したところによれば,原告Aも原告Cも,本件各契約の締結以前に,訴外E社にホームページの作成を依頼し,リース契約を利用してその代金の支払った経験があり,それを前提に,ホームページを更新し,あるいは複数化するため,本件各契約に及んだのであるから,訴外E社からホームページ作成の役務の提供を受けるために,被告のリース契約を利用するという方法について,原告らとして,一応の了解はあったと考えることができる。

ウ そうすると,原告らと訴外E社の合意内容と,それを実現するための手段とした本件各契約との間に,上述したような齟齬が存することは,本件各契約の不成立あるいは無効を,当然に導くものではないといわざるを得ないし,公序良俗に違反するともいえない。

(2) 契約解除の主張について
ア 前記(1)で検討したところによれば,訴外E社と原告らの関係は役務の提供を内容とするものであるが,原告らと被告の関係は,金融の便宜を得るというファイナンス・リースの性質をなお有しており,被告が原告らに役務を提供することが,本件各契約の内容となるものではない。
イ また,既に述べたとおり,原告らの意思は,継続的に役務の提供を受けつつ,その支払方法として被告のリースを利用する点にあると解されるのであって,完成後のホームページを引き渡すことが,本件各契約の内容となるものでもない。
ウ そうすると,訴外E社の役務の提供,あるいはホームページの完成引渡しが遅滞していることを理由に,原告らが,被告との契約である本件各契約を,債務不履行解除することはできないというべきである。

(3) 信義則違反の主張について
ア 問題の所在
原告らは,被告が原告らに本件各契約に基づきリース料を請求することは,信義則に違反し許されないと主張する。既に述べたとおり,被告と原告らとのリース契約である本件各契約は,役務の提供を約する訴外E社と原告らとの関係とは別個のものであり,両者の齟齬が直ちに一方の不成立または無効を招来するものではないが,訴外E社が原告らに対しては役務の提供を約する一方,本件ソフトのリースであるとして被告のリース契約を利用させるという齟齬を生じさせながら役務の提供を止めた場合に,原告らは残リース料を支払わなくても良いとすれば,本件ソフトの代金相当額を訴外E社に支払ったのにこれを原告らより回収できなくなる損失は,被告が負担することになり,逆に,原告らは残リース料を支払わなければならないとすれば,訴外E社より役務の提供を受けられない損失は,原告らが負担するとの問題が生じる。

イ 原告らの責任
(ア) この点について検討するに,原告らは,真実,本件ソフトを取得し使用する意思はないのに,これをリース物件として掲げた契約申込書に署名押印しているが,小規模事業者である原告らにとって,役務の提供がリース契約の対象にならないとの知識は一般的とはいえず,原告らの立
場において,訴外E社が役務の提供を約すると同時に,支払の方法として,被告のリース契約を利用するとの説明を受けた場合に,格別の問題を感じなかったとしても不思議ではないから,上述のような経緯で本件各契約を締結したことについて,原告らに特別の過失があったとまでい
うことはできない。原告らが,自らの利益を図るため,あるいは訴外E社に利益を得させ
る目的で,ことさら本件各契約を締結したとすべき事情も認められない。
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フトウェアのリースでは,役務の提供が混入してくる可能性のあることを認識しているのであるから(F証言),原告らに確認する際も,それに対応した発問をすべきである。具体的には,本件ソフトの使用権の設定の手続がなされ,本件ソフトを使用し得る状態になったか,本件各契
約の対象に,ホームページ作成等の役務の提供は含まれず,本件ソフトのみを対象とする趣旨か,といった適切な質問をすべきであり,これを原告らが肯定した場合には,信義則上,原告らは,役務の提供のないことを主張できないと解する余地もあるが,前記認定のとおり,被告は,物件の現実の引渡が行われる一般的なリースと同様の,平板な発問しかしていない。
(ウ) 以上,被告からの電話による確認に,原告らが回答した事実は,役務
の提供を停止したことによる損失を,原告らに負担させるべき理由とは
ならないし,契約申込の段階で,リース物件受領書及び契約確認書に原
告らが署名したことも同様である。

ウ 被告の責任
(ア) 訴外E社が実質的には役務の提供を約しつつ,支払の手段のために本件ソフトをリースの対象とした事実を知りながら,被告が本件各契約を締結したと認めるに足りる証拠は提出されていない。しかしながら,リース事業者である被告は,サプライヤーが前述のような方法でリース契約を利用した後に役務の提供を止めた場合,被告または原告らに損失が生じることは当然認識しているというべきであるし,被告の担当者においても,訴外E社が,原告らとの間では役務の提供を約する旨の書類を作成した事実を把握していれば,本件各契約の締結には応じていなかった旨を明言することに加え(F証言),被告は,訴外E社と業務協定を締結し,契約手続の一部を委ねているのであるから,訴外E社が,役務の提供を行う趣旨で,顧客にリース契約を締結させることを疑わせる事実が存するときは,この点を確認し,不適切なリース契約を締結しないこととする信義則上の義務を,顧客に対し負っているというべきである。
(イ) これを本件について見るに,前記検討したとおり,客観的には,本件ソフトの存在自体が疑われる状況にあり,被告の担当者においても,その点は認識可能であったこと,プロが業務用に使うホームページ作成ソフトであっても5万円前後で入手可能であり,これを一本入手すれば,
パソコン用,携帯用を含め,複数のホームページを自由に作成できること(甲C27の1?6),原告らは,司法書士事務所または洋裁教室を経営する小規模事業者であり,第三者のためにホームページの作成業務を請け負うことを予定して,高額なプロ用ソフトを購入するとは考えに
くいこと,短期間に高額なソフトを買い替え,あるいは同時に複数のソフトを購入すること自体異例であること,以上の点を指摘することができるのであり,これらを総合すると,本件各契約を扱う被告としては,訴外E社が,真実は役務の提供を目的としつつ,名目上本件ソフトを対
象とするリース契約を利用しようとするものであることを,若干の注意を払えば了解可能であったのに,適切に調査確認せず,本件各契約を含む多数のリース契約を締結したことになるのであって,信義則上の注意義務違反が認められる。

エ まとめ
上述のとおり,訴外E社が原告らに役務の提供を約し,その支払の方法としてリース契約である本件各契約を利用するという齟齬が生じた点について,原告らと被告双方の責任を検討するに,後者が前者を大きく上回っているといわざるを得ない。
よって,原告らとの関係において,役務を提供すべき相手方は訴外E社であり,リース料債務の相手方は被告であって,本来,原告らは訴外E社に対する抗弁をもって被告に対抗することはできないが,本件の事実関係を前提とすると,原告らは,役務の提供がないことを理由とする訴外E社に対する抗弁を,信義則上,被告に対しても主張できると解するのが相当である。


3 結語
(1) 以上検討したところを総合すると,原告らの主位的主張,予備的主張1及び予備的主張2はいずれも失当であり,本件各契約の不成立,無効,債務不履行解除を前提に,既払リース料の返還及び未払リース料についての債務不存在確認の双方を求める原告らの請求は理由がない。
(2) しかしながら,原告らの予備的主張3は認められ,原告らは,信義則上,訴外E社に対する抗弁をもって被告に対抗することができ,具体的には,役務の提供がない以上,未払のリース料を被告に支払う必要がないことになるのであって,連帯保証債務についても同様である(なお,既払リース料にも,役務の提供を受けていないのに,被告に徴求された部分が存するはずである
が,被告が訴外E社に支払った代金全額を回収するといった特段の事情が認められない限り,不当利得の問題は訴外E社との間に存するというべきである。)。
(3) よって,原告らの請求のうち,既払リース料の返還㠂’求める部分は理由がないが,未払リース料部分の債務不存在確認を求める部分は理由があるので,主文のとおり判決する。


大阪地方裁判所第16民事部
裁判官 谷 有 恒
(別紙)契約目録
1 契約締結日 平成20年8月11日
貸主(リース会社) 被告
売主(サプライヤー)訴外E社
借主(ユーザー) 原告A
連帯保証人 原告B
リース物件 E社オリジナルソフト
リース期間 60か月
月額リース料 2万3730円(消費税込み)
リース料総額 142万3800円(消費税込み)
2(1) 契約締結日 平成20年6月20日
貸主(リース会社) 被告
売主(サプライヤー)訴外E社
借主(ユーザー) 原告C
連帯保証人 原告D
リース物件 E社ソフト
リース期間 60か月
月額リース料 1万6380円(消費税込み)
リース料総額 98万2800円(消費税込み)
2(2) 契約締結日 平成20年6月20日
貸主(リース会社) 被告
売主(サプライヤー)訴外E社
借主(ユーザー) 原告C
リース会社(貸主) 被告
リース物件 E社ソフト
リース期間 60か月
月額リース料 2万7090円(消費税込み)
リース料総額 162万5400円(消費税込み)

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おわり