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顧客情報の不正利用 競業的行為をやめさせる方法はあるか 8

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つづき

5 争点5(1審原告ネクストと1審被告らとは競争関係にあるか)について

(1) 不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」とは,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的に照らし(同法1条),現実の市場における競合が存在しなくとも,市場における競合が生じるおそれがあれば足りるものと解される。

(2) 証拠(甲1,3,6,8の1・2,甲15,23,28,29,59,61,81の1,甲85,乙10,36の1,乙40,原審証人 H )によれば,1審原告ネクストは,その目的に「不動産の売買,仲介,賃貸,管理およびコンサルティングに関する業務」を掲げ,実際に,投資用マンションの売買だけでなく,その賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業を行っている一方,1審被告レントレックスは,その目的に「1不動産の賃貸管理業,2不動産の売買,交換,仲介,保有ならびに運用,3不動産コンサルティング業」を掲げ,実際に,投資用マンションの賃貸管理だけでなく,その賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業を行っていることが認められる。したがって,1審原告ネクストと1審被告レントレックスは,投資用マンションの賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業において,市場における競合が生じるおそれがあるといえる。また,1審被告 Y1 は,1審被告レントレックスの代表者として,1審被告 Y2 も,1審被告レントレックスの従業員として,その業務を行っている者であるから,1審原告ネクストと1審被告 Y1 及び同 Y2 の間でも,市場における競合が生じるおそれがあるといえる。したがって,1審原告ネクストと1審被告らとは,競争関係にあるというべきで
ある。

(3) 以上に対して,1審被告らは,1審原告ネクストと1審被告レントレックスとでは,それぞれ投資用マンションの販売業又は賃貸営業に特化しているから,競合が生じるおそれはない旨を主張する。しかしながら,1審原告ネクストと1審被告レントレックスとは,上記のとおり,いずれも投資用マンションの賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業を行っているのであるから,市場における競合が生じるおそれがあることは,前記のとおりであって,1審被告らの上記主張は,その前提を欠くものとして,採用することができない。


6 争点6(1審被告らは1審原告らの顧客に対して1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか)について

(1) 1審被告 Y1 及び同 Y2 が平成20年11月ころから平成21年1月ころまでの間に1審原告らの顧客9名に対して1審原告らに倒産のおそれがあるという1審原告らの営業上の信用を害する事実を告知したことは,前記3(2)イ(ア)に認定のとおりである。また,原判決別紙顧客勧誘一覧表中の顧客番号64に係る当裁判所の判断欄記載のとおり,1審被告 Y2 は,平成21年9月14日,上記顧客に対し,1審原告らが多くのオーナーから訴えられているなどと1審原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知している。

(2) しかしながら,証拠(甲14,15,17,18,乙62,原審証人 H ,弁論の全趣旨)によれば,①平成20年度(同年4月1日~平成21年3月31日)の1審原告ネクストは,総資産が約228億円,総負債が約64億円の約164億円の資産超過であり,同年度の1審原告コミュニティも,総資産が約37億円,総負債が約31億円の約6億円の資産超過であること,②PBR(株式純資産倍率)とは,株価を1株当たりの純資産額で除したものを指し,企業価値に対する株価の割高感・割安感を測る指標にすぎず,企業の財務状況と直結するものではない
こと,③1審原告ネクストにおいて大量の在庫を抱えていた事実はなく,1審原告ネクストは,中古マンションの買取りを積極的に行っていたこと,④1審原告コミュニティにおいて敷金を着服したり家賃の送金が遅れたりしていた事実はないこと,⑤1審原告らが平成21年当時に多くの投資用マンション所有者から訴えられていた事実はないことが認められる。これらの事実を総合すれば,平成20年当時の1審原告らに倒産のおそれはなかったものと優に推認することができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。よって,1審被告らは,1審原告らの顧客10名に対し,1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した(不正競争防止法2条1項14号。信用毀損)というべきである。

(3) 以上に対して,1審原告らは,1審被告らによる信用毀損行為が定型的ツールを使用したものであり,1審原告ネクストの顧客を狙い撃ちしたものであるばかりか,1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとではサービス内容に大きな差異がないことから,全顧客に対して信用毀損行為をした旨を主張する。しかしながら,前記の顧客10名を除く他の顧客に対して,1審原告らの信用を毀損するチラシ等の客観的な文書が配布されるなどしたと認めるに足りる証拠はないものというほかなく,1審原告らが指摘する事実をもってしても,これらの他の顧客に対しても信用毀損行為が行われたと認めるには足りない。よって,1審原告らの上記主張は,採用できない。

(4) 他方,1審被告らは,本件書面で倒産するおそれがある企業として挙げたのは48社もあり,1審原告ネクストはその1社にすぎなかったから,1審原告らの営業上の信用は害されていない旨主張する。しかしながら,前記3(2)イ(ア)ã«èªå®šã®ã¨ãŠã‚Šï¼Œï ¼‘審被告 Y1 及び同 Y2 は,
本件書面の送付と併せて,1審原告ネクストに倒産のおそれがあり,1審原告ネクストが倒産すれば,1審原告コミュニティも連鎖倒産するなどと電話で告知していたのであるから,1審原告らの営業上の信用は優に害されているというべきである。したがって,この点に関する1審被告らの上記主張は,採用することができない。

また,1審被告らは,信用毀損行為に関する C の陳述書(甲65)等が信用できないなどと主張する。しかしながら,1審被告らによる信用毀損行為は,本件書面等の客観的な証拠からも明らかであって,1審被告らの上記主張は,採用し得ない。

7 争点7(1審被告らの故意・過失)について

(1) 前記第2の1(2)及び(3)並びに第4の3(2)イ(ア)に認定のとおり,1審被告 Y1 は1審原告らへの信用毀損行為を始める平成20年12月頃(顧客番号43,53,54)の約7か月前に当たる同年5月14日まで,1審被告 Y2 も1審原告らへの信用毀損行為を始める同年11月ころ(顧客番号7の顧客)の約1か月半前に当たる同年9月16日まで,それぞれ1審原告ネクストの従業員として稼働し,いずれもそれまで1審原告らの概況を内部から知り得た上,1審被告 Y1 及び同Y2 は,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的を有していたものである。
これらの事実を総合すれば,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告らの顧客に対して告知した1審原告らの営業上の信用を害する事実が虚偽であったことを認識していたものと優に推認することができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。よって,1審被告らには,1審原告ネクストに対する信用毀損についての故意があるというべきである。


(2) 以上に対して,1審被告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告ネクストが倒産の危機に瀕しているかどうかについて認識しておらず,また,本件書面につき,1審被告レントレックスが設立されたばかりで倒産する可能性があると思われかねないため,顧客に対して大手企業でも倒産する可能性があり,規模で選ぶのではなくてサービスで選ぶよう訴える趣旨で作成されたものであるから,その目的は正当であり,1審被告らに故意も過失もない旨を主張する。しかしながら,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審被告レントレックス設立直前まで1審原告ネクストの従業員であった以上,その信用状態について認識を欠いていたとは到底認め難い。また,本件書面についてみると,1審被告らの主張を前提としても,本件書面の記載内容は,明らかに1審原告ネクストの信用を毀損するものであることが明らかであって,このような虚偽の事実で信用毀損行為を行うことが正当化されるものではない。この点に関する1審被告らの上記主張は,採用することができない。


(3) 小括
前記1ないし4に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審被告レントレックスの業務として,不正の利益を得る目的又は1審原告コミュニティに損害を加える目的(図利加害目的)をもって,1審原告コミュニティから示され,あるいは1審原告コミュニティに対する秘密保持義務を負っている原告ネクストの元従業員から取得した,その営業秘密である本件顧客情報を使用した(不正競争防止法2条1項7,8号)ほか,前記5ないし7に認定のとおり,1審原告らと競争関係にあるところ,故意により,1審原告らの顧客に対し,1審原告らの営業上の信用を害
する虚偽の事実を告知したものである(同項14号)。

そして,1審被告 Y1 は,1審被告レントレックスの代表者として自ら,あるいは当時自己の妻を除けば唯一の従業員であった1審被告 Y2 と意思を相通じて前記図利加害目的による本件顧客情報の使用又は信用毀損を実行したものであるから,不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に当たり,不正競争防止法4条に基づき,1審被告レントレックスと連帯して,1審原告らに生じた前記損害の全てについて賠償する責任を負う。また,1審被告 Y2 は,1審被告レントレックスの従業員として,前記図利加害目的による本件顧客情報の使用又は信用毀損の一部を実行したにとどまるものではある。しかしながら,前記3(2)イ(イ)に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2は,いずれも不正競争防止法2条1項7号所定の不正の利益を得る目的又は本件顧客情報の帰属主体である1審原告コミュニティに損害を加える目的(図利加害目的)でこれらの各行為に及んでいることや,信用毀損については本件書面など定型的な手段も用いられていることに加えて,これらのうち1審被告 Y1 が直接実行した各行為がいずれも1審被告 Y2 が1審被告レントレックスのほぼ唯一の従業員であった時期にされていることに照らすと,1審被告 Y2 は,上記各行為をいずれも1審被告 Y1 と意思を相通じて実行したものと推認され,この認定を妨げるに足りる証拠はない。したがって,1審被告 Y2 は,以上の全ての不正競争行為について不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に当たり,やはり不正競争防止法4条に基づき,1審被告レントレックス及び同 Y1 と連帯して,1審原告らに生じた前記損害の全てについて賠償する責任を負うものというべきである。

8 争点8(本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か),
争点9(1審被告 Y1 及び同 Y2 は退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に
競業的行為を行ったか)及び
争点10(1審被告 Y1 及び同 Y2 が退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか)について


(1) 本件誓約書2ないし4項各違反並びに本件就業規則12条15号,54条2項及び56条4項各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について前記のとおり,1審被告らは,1審原告らに対し,図利加害目的による本件顧客情報の使用(不正競争防止法2条1項7,8号)及び信用毀損(同項14号)により損害賠償責任を負うものであるから,これと競合する本件誓約書2項ないし4項の各違反並びに本件就業規則12条15号,54条2項及び56条4項の各違反の
債務不履行に基づく損害賠償請求については,判断を要しない。

(2) 本件就業規則55条(競業避止義務)前段及び後段各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について
本件就業規則55条前段は,「社員のうち役職者,又は企画の職務に従事したことのある者が退職し,又は解雇された場合」ではなくて「社員のうち役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合」と規定していることから,1審原告ネクストを退職した時に役職者又は企画の職務に従事していた者を対象とするものと解される。そして,本件就業規則を通覧しても「役職者,又は企画の職務に従事していた者」の定義は見当たらないところ,同条が元従業員について一定期間の競業等を禁止して営業の自由等を制限していることに鑑みると,ここ
にいう「役職者,又は企画の職務に従事していた者」の範囲については謙抑的に理解すべきものである。そして,1審原告ネクストには多数の課長及び係長がいることや,これらの者がいずれも専ら又は主として特定の見込み客又は顧客に対する営業活動等に当たっており,例えば前記1(1)ア(ウ)及び(オ)並びにイに認定のとおり,本件顧客情報についても制限的なアクセスしか得られないことに照らすと,これらの者による退職又は解雇後の競業が1審原告ネクストに与え得る損害は,相対的には限定されており,これらの者による退職又は解雇後の競業による1審原告ネクストの損失を予防するには,本件就業規則の他の条項及び本件誓約書により秘密保持義務を課することで対処することで足りるものというべきであって,ここにいう「役職者」は,少なくとも課長以下の従業員を含まないものと解するのが相当である。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,いずれも1審原告ネクストを退職した時,上記の意味における「役職者」ではなく,また,「企画の職務に従事していた者」でもないから,同条前段違反の債務不履行責任を負う余地はない。次に,本件就業規則55条後段は,対象者が明記されていないものの,対象者が同条前段のそれと異なる場合,明記されるのが通常である上,禁止行為のみが「また」という接続詞で同条前段の禁止行為と並べて規定されているから,対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが自然である。また,同条前段が禁じる1審原告ネクストの承認を得ない離職後6か月間の日本国内における競業と同条後段が禁じる1審原告ネクスト在職中に知り得た顧客との離職後1年間の取引は,禁止の強度がおおむね同程度と解されるから,そのような観点からも対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが相当である。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,いずれも1審原告ネクストを退職した時,上記の意味における「役職者」ではなく,また,「企画の職務に従事していた者」でもないから,同条後段違反の債務不履行責任を負う余地もないというべきである。


9 争点11(因果関係及び損害)について


(1) 1審原告ネクストの損害
ア 1審被告らの違法行為への対応費用 0円1審原告ネクストとの関係で生じ得る1審被告らの違法行為への対応費用は,1審原告らの顧客10名に対して1審原告ネクストの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことによって生じ得る費用がこれに当たる。しかしながら,10名の顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に要する費用につき,弁護士費用を超えて通常生じる損害と認めることはできないというべきであり,これに反する1審原告ネクストの主張は,採用できない。
イ 信用毀損による損害 100万円前記のとおり,1審原告ネクストは,1審被告らの前記信用毀損行為により,顧客に企業の存続可能性を疑われるなど,上場企業として大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面に記載された事実は,実際,日刊ゲンダイに掲載されたものである上,1審被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に書面の送付や電話での告知をしたにとどまり,これによって,その後の売上げの減少等といった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考慮すれば,1審原告ネクストの信用毀損による損害額は100万円(顧客番号64については,うち1万円)とするのが相当である。

ウ 弁護士費用 10万円
本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して10万円(顧客番号64に係る信用毀損の弁護士費用は,うち1000円)とするのが相当である。
エ 1審原告ネクストの損害合計 110万円
(2) 1審原告コミュニティの損害
ア 逸失委託料 ï¼“ï¼˜ï¼•ä¸‡ï¼‘ï¼“ï¼ —7円
(ア) 損失としての逸失委託料
1審原告コミュニティは,1審被告らの前記図利加害目的による本件顧客情報の使用により,顧客に賃貸管理委託契約を解約され,原判決別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の限界利益額欄に金額(顧客情報の不使用による棄却を意味する0円を除く。なお,顧客番号30の当裁判所の判断の不正競争行為欄の「顧客情報使用」を「×」と,その余の部分をいずれも「0」と,それぞれ改め,顧客番号43の当裁判所の判断の不正競争行為欄の「×」を「顧客情報使用」と,2年分の逸失委託料欄の「0」を「84,000」と,限界利益額欄の「0」を「71,400」と,それぞれ改める。)が記載されている27名の顧客から得ていた管理委託料を失った(顧客番号2,3,5,10,12ないし14,17,19,24,25,27,32ないし37,43,45,47,49,50,52,55,57の顧客。顧客番号49の顧客は2名と数える。)。そして,証拠(甲19)によれば,1審原告コミュニティが上記顧客との間で締結していた賃貸管理委託契約の契約終了日及び以後の逸失委託料は,同別紙中の1審原告らの主張欄記載のとおりであると認められる。


(イ) 相当因果関係ある損害としての逸失委託料
1審原告コミュニティは,1審被告らが前記図利加害目的による本件顧客情報の使用をしなければ,前記顧客27名から相当期間賃貸管理を受託して管理委託料を得ることができたものと認められる。上記相当期間は,1審原告コミュニティが顧客との間で締結する賃貸管理委託契約の契約期間が2年であり,自動更新条項はあるものの(甲40),顧客は2年満了時に更新の是非を判断するのが通常であるから,2年をもって相当と認める。その上で,2年を限度とする前記逸失委託料に1審原告コミュニティの限界利益率(粗利から変動経費を除いた限界利益が収入に対して占める割合)を乗じたいわゆる限界利益の額の限度で,上記行為等に起する損害と認めるのが相当であり,1審原告らの主張等によっても,この認定を左右するには足りない。

本件についてこれをみると,1審被告レントレックスは,いずれの前記顧客からも,2年以上賃貸管理を受託していたから,相当因果関係ある損害としての逸失委託料は2年分となり,合計503万4480円となる(別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の2年分の逸失委託料欄に記載の「5,097,840」を「503,4480」と改める。)となる。また,証拠(甲17)によれば,平成20年度の1審原告コミュニティは,賃貸管理業に係る賃貸管理収入と賃貸収入の合計約9億4594万円から賃貸営業費約1億3863万円を控除した限界利益額(約8億0731万円)の上記賃貸管理収入と賃貸収入の合計額に対する限界利益率は,約85%であることが認められる(小数点以下四捨五入)。そうすると,相当因果関係ある損害としての逸失委託料は,前記2年分の逸失委託料に前記限界利益率を乗じた合計427万9308円となる(別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の限界利益額欄に記載の「4,333,164」を「4,279,308」と改める。)となる。

以上に対して,1審被告らは,顧客番号17の管理物件について1審原告ネクストにより1審被告レントレックスとの賃貸管理委託契約が解約されている(乙69~71)から,逸失委託料についての因果関係が遮断されている旨を主張する。しかしながら,顧客の賃貸管理委託契約の解除などしたことは,1審被告レントレックスにおいても不正競争行為の時点で予見不可能であり,後記の顧客等の事情による減額における一事情として考慮すれば足りる。

また,1審被告らは,1審原告コミュニティが建物管理原価についても支出を免れた以上,建物管理原価額約2億6197万円(甲17)についても控除した上で,利益率が算定されるべきである旨を主張する。しかしながら,1審原告コミュニティは,顧客を失うことで直ちに上記建物管理原価の全てについて支出を免れるものではないから,1審被告らの上記主張は,失当である。

(ウ) 顧客等の事情による減額等
証拠(甲28,乙10,21,22,24,26ないし32,34,36の1,乙38,39,43,45ないし47,55,62,63,原審証人 D ,同 G )によれば,前記顧客27名が1審原告コミュニティとの賃貸管理委託契約を解約するに当たり,これらの顧客が有していた1審原告らのサービスに対する一定程度の不満や,1審被告レントレックスが売却の際の仲介手数料を6万円のみと相当安くするサービスを提供していたこと等の顧客側の事情も,ある程度影響していたことが認められる。そこで,前記の相当因果関係ある損害としての逸失委託料の発生に
は,1審被告らの前記図利加害目的による本件顧客情報の使用が90%の限度で寄与しているものと認め,10%を控除するのが相当である。そうすると,逸失委託料としての損害額は,前記限界利益額に前記10%の減額を行い,合計385万1377円(1円未満切捨て)となる(別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の損害額欄の記載のうち,「49,980」を「64,260」と,「75,684」を「97,308」と,「62,118」を「79,866」と,「86,108」を「110,7108」と,顧客番号30の「87,679」を「0」と,顧客番号43の「0」を「64,260」と,合計欄の「3,033,214」を「3,851,377」と,それぞれ改める。なお,仮に不正競争防止法5条2項に基づいて損害額を算定したとしても,1審被告レントレックスの得た委託管理料についても限界利益率を乗じた上で上記の顧客 等の事情による減額を行えば,結局,上記金額と径庭はない金額となる。)。

イ 1審被告らの違法行為への対応費用 0円
1審原告コミュニティとの関係で生じ得る1審被告らの違法行為への対応費用は,1審被告 Y1 及び同 Y2 において1審原告コミュニティや元同僚から取得した営業秘密である本件顧客情報を使用したことによって生じ得る費用がこれに当たるものといえる。しかしながら,27名の顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に要する費用を,弁護士費用を超えて通常生じる損害とは認め難い上,1審原告らは上記27名の顧客に係る陳述書を作成していないから,これらの費用を損害として認めることはできないというべきであり,これに反する1審原告コミュニティの主張は,採用できない。

ウ 信用毀損による損害 50万円
1審原告コミュニティは,1審被告らの前記信用毀損行為により,顧客に企業の存続可能性を疑われ,賃貸管理委託契約を解約されかかったなど,企業として大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面には,1審原告コミュニティに関する記載がなかった上,1審被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に電話での告知をしたにとどまり,これによって,賃貸管理委託契約が解約されてしまうなどといった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考
慮すれば,1審原告コミュニティの信用毀損による損害額は50万円(顧客番号64の顧客については,うち5000円)とするのが相当である。

エ 弁護士費用 40万円
本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して40万円(顧客番号64の顧客に係る信用毀損の弁護士費用は,うち500円)とするのが相当である。

オ 1審原告コミュニティの損害合計 475万1377円10 1審原告らの請求の当否以上によれば,1審原告ネクストの請求は,1審被告らに対しては,連帯して損害賠償金110万円並びにうち108万9000円に対する不正競争行為の後の日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち1万1000円に対する不正競争行為の日である同年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,1審被告レントレックス及び同 Y1 に対しては連帯して上記108万9000円に対する不正競争行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金596円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却されるべきである。また,1審原告コミュニティの請求は,1審被告らに対しては,連帯して損害賠償金475万1377円並びにうち474万5877円に対する不正競争行為の後の日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち5500円に対する不正競争行為の日である同年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,1審被告レントレックス及び同 Y1 に対しては連帯して上記474万5877円に対する不正競争行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金2600円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却されるべきである。

11 結論

以上の次第であるから,1審被告らの本件控訴及び1審原告ネクストの附帯控訴は棄却されるべきものであるが,原判決は,1審原告コミュニティの附帯控訴に基づき,本判決の主文2項のとおり変更されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣
裁判官 井 上 泰 人
裁判官 荒 井 章 光
別紙
当事者目録
被控訴人兼附帯控訴人(以下「1審原告ネクスト」という。)
株 式 会 社
エ フ ・ ジ ェ ー ・ ネ ク ス ト
同所
被控訴人兼附帯控訴人
(以下「1審原告コミュニティ」という。)
株 式 会 社
エフ・ジェー・コミュニティ
上記2名訴訟代理人弁護士 岡 本 政 明
実 野 現
岡 本 直 也
佐 藤 匠
大 城 季 絵
控訴人兼附帯被控訴人
(以下「1審被告レントレックス」という。)
株 式 会 社 レ ン ト レ ッ ク ス
控訴人兼附帯被控訴人(以下「1審被告 Y1 」という。)
Y1
控訴人兼附帯被控訴人(以下「1審被告 Y2 」という。)
Y2
上記3名訴訟代理人弁護士 土 釜 惟 次
佐 々 木 良 行
一 瀬 太 一
飯 田 健 司

おわり