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顧客情報の不正利用 競業的行為をやめさせる方法はあるか 7

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つづき


3 争点3(1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告らからその顧客情報を取得した場合,それは不正の手段によるものか,仮に不正の手段によるものでない場合,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告らの顧客情報を1審原告らから示され,退職後に図利加害目的で1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,1審被告 Y1 及び同 Y2 が秘密保持義務を負った1審原告らの元社員から1審原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について


(1) 不正の手段による取得(不正競争防止法2条1項4号)について

ア 営業報告書や電子データ等のコピーについて
原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の事実認定欄記載のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告コミュニティから本件顧客情報を取得した場合において,担当者やその補助者として記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先又は顧客から教えてもらって携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を基に連絡したものである。

1審被告 Y1 及び同 Y2 が本件顧客情報に関する営業報告書や電子データ等を不正に複写するなどしていたことについては,これを認めるに足りる証拠がない。イ 携帯電話番号の抹消懈怠について前記第2の4(2)に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストに提出した本件誓約書2項及び3項において機密情報の返還と不保持を誓約したにもかかわらず,1審原告ネクストを退職する際に携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を抹消していない。しかしながら,上記携帯電話は,1審被告 Y1 又は同 Y2 の個人所有物であって,自由に管理し得るものであることを考慮すると,上記の事実をもって,窃取,詐欺又は強迫に類した不正の手段によるものとはいい難いというべきである。ウ したがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティからその営業秘密である本件顧客情報を取得したのは,不正競争防止法2条1項4号所定の不正の手段によるものということはできない。


(2) 1審原告コミュニティからの開示による取得及び図利加害目的(不正競争防止法2条1項7,8号)についてア 1審原告コミュニティからの開示による取得について前記2に認定のとおり,1審原告ネクスト営業部所属の従業員は,1審原告コミュニティからも本件顧客情報を開示されて取得しているものといえる。したがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティの営業秘密である本件顧客情報を取得したのは,1審原告コミュニティから示されたことによるというべきである。

イ 図利加害目的について

(ア) 証拠(甲30,41,原審1審被告 Y1 本人)によれば,①1審被告レントレックスが賃貸管理委託契約の解約を代理した人数は,1審原告コミュニティと賃貸管理委託契約を締結していた者以外の者が数名であるのに対し,1審原告コミュニティと賃貸管理委託契約を締結していた者が38名に上ること,②原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の信用毀損欄に○と記載された顧客(信用毀損行為が本件訴状送達後である平成21年9月14日にされた顧客番号64の顧客を除く。)の事実認定欄記載のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,平成20年11
月頃から平成21年1月頃までの間,1審原告らの顧客9名(顧客番号7,28,29,38,39,44,53,54,65)に対し,1審原告ネクストに倒産のおそれがあるという1審原告ネクストの営業上の信用を害する事実を記載した本件書面を送付したり,1審原告ネクストが,大量の在庫を抱えて中古の買取りもできなくなっている上,債務超過で倒産のおそれがあり,1審原告コミュニティも,敷金に手を着けたり家賃の送金も遅れたりしており,1審原告ネクストが倒産すれば,連鎖倒産するなどと1審原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知したりしたこと,③1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとは,投資用マンションの賃貸管理業において競争関係にあり,両者の各サービス内容は,いずれも,賃借人から家賃を集金して顧客に送金するだけの家賃保証がない集金代行方式と,顧客から賃借して賃借人に転貸することで家賃保証があるサブリース方式とに分類され,集金代行方式の管理委託料が最低で1か月3500円,サブリース方式の家賃保証が最高で家賃の95%相当額と類似していることが認められる。以上の各事実に前記2(1)に認定の事実を総合すれば,1審被告 Y1 及び同 Y2は,1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行っていた際,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的を有していたものと優に推認することができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。

(イ) そして,前記第2の4(1)及び(2)並びに第4の1(1)イに認定のとおり,1審原告ネクストでは,本件就業規則や退職者が提出する誓約書で機密保持義務や競業避止義務が規定されるとともに,情報セキュリティに関する周知・教育のための措置が実施されていたものである。それにもかかわらず,1審被告 Y1 及び同Y2 は,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的で,1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行っていることに加えて,1審被告 Y1 及び同 Y2 ã«ã‚ˆã‚‹æœ¬ä»¶é¡§å®¢æƒ…å ±ã®ä½¿ç”¨ã¯ï¼Œé¡§å®¢ç•ªå·ï¼–ï¼”ã‚’é™¤ãï¼Œï¼‘å¯©è¢«å‘Šãƒ¬ãƒ³ãƒˆãƒ¬ãƒƒã‚¯ã‚¹ã®è¨­ç«‹ç›´å‰ãªã„ã—ç›´å¾Œã§ã‚ã£ã¦ç¢ºãŸã‚‹é¡§å®¢ã‚’æœ‰ã—ã¦ã„ãªã„å¹ ³æˆï¼’0年10月頃から平成21年2月頃に集中して行われていることことに照らすと,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストを退職した後に1審原告コミュニティの本件顧客情報を使用して1審原告コミュニティの顧客に連絡し,営業活動を行ったことは,不正競争防止法2条1項7号所定の不正の利益を得る目的又は本件顧客情報の帰属主体である1審原告コミュニティに損害を加える目的(図利加害目的)によるものであるというべきである。

(ウ) 以上に対して,1審被告らは,①1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティの顧客に連絡して営業活動を行ったのは,投資用マンションの販売にのみ重点を置いて買増しができない顧客には情報を提供せずに放置するという1審原告らの営業方針に疑念を抱いていたため,サービス面で競い合う目的によるものである上,②1審原告ネクストでは従業員が営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であり,成約した場合にも少額のインセンティブしか支払われず,退職後に顧客への対応を求められることもあるから,上記営業活動には正当な理由があり,図利加害目的がない旨主張する。しかしながら,1審被告らの上記主張を前提としても,1審原告コミュニティを狙った競業が正当化されるものではない。したがって,この点に関する1審被告らの上記主張は,採用することができない。また,1審被告らは,1審被告レントレックス設立後に業務の枠を超えた人的関係を有する顧客に対してその立ち上げの挨拶をしたにすぎず,本件書面の送付等も不正なものではなく,業務内容が類似することも通常予定される範囲内であるから,図利加害目的がなかった旨を主張する。しかしながら,前記(ア)に認定の事実に照らすと,1審被告らの行為は,いずれも単なる立ち上げの挨拶等を遙かに超えるものであって,1審被告らの上記主張は,到底採用の限りではない。


(3) 悪意重過失による取得(不正競争防止法2条1項8号)について

ア 前記1(1)ア(ウ)に認定のとおり,1審原告ネクスト営業部所属の従業員は,顧客と1審原告コミュニティとの間における賃貸管理委託契約の締結業務も担当している上,前記1(1)イに認定のとおり,1審原告コミュニティの従業員等とともに情報セキュリティに関する研修を受けたり共通のハンドブックを配布されたりしていたのであるから,1審原告コミュニティに対しても本件顧客情報の秘密保持義務を負っていることを認識していたものと優に推認することができる。このため,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクスト営業部に所属していた A , I ,
B , J , K 及び L から本件顧客情報を取得した場合において, A ほか上記5名が,1審原告コミュニティに対しても秘密保持義務を負っているにもかかわらず,これに反して本件顧客情報を開示していることを知っていたものということができる。

イ したがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティに対する秘密保持義務を負った1審原告ネクストの元従業員から本件顧客情報を取得したことは,悪意によるものというべきである。

4 争点4(1審被告らの故意・過失)について

前記1(1)ア(ウ)及び(エ)並びに前記1(1)イに認定の事実に証拠(甲55の1・3,乙62,63,原審1審被告 Y1 ,同 Y2 各本人)を総合すれば,1審被告Y1 及び同 Y2 は,平成16年10月26日や同年12月20日に1審原告ネクストの営業本部が発出した社内通達や平成17年から毎年行われている情報セキュリティに関する研修等により,本件顧客情報が集約された顧客ファイルが平成16年末から営業本部によって一元管理されていることや本件顧客情報が非公知の情報資産であることを認識していたものと認められるから,本件顧客情報が1審原告らの営業秘密に該当する旨認識していたといえる。にもかかわらず,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストを退職した後,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的で,本件顧客情報を使用して1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,営業秘密の不正使用という不正競争(不正競争防止法2条1項7号)の故意があるものといえる。そして,1審被告 Y1 が代表者を務める1審被告レントレックスも,上記故意があるものといえる。また,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,前記3(3)のとおり,1審原告コミュニティに対する秘密保持義務を負った1審原告ネクストの元従業員から悪意によって本件顧客情報を取得し,これを使用して1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,不正開示された営業秘密の不正使用という不正競争(不正競争防止法2条1項8号)の故意があるものといえる。そして,1審被告 Y1 が代表者を務める1審被告レントレックスも,上記故意があるものといえる。

したがって,1審被告らには,営業秘密の不正使用又は不正開示された営業秘密の使用についての故意があるというべきである。






つづく