わかる! 使える! 契約書の基本

契約書は経営、起業・独立、副業に必須のスキルです! 自分で契約書がつくれると楽しいですよ

顧客情報の不正利用 競業的行為をやめさせる方法はあるか 4

オフィシャルサイトでは参考にしていただきたいビジネス契約書のサンプル集を無料でダウンロードできます。
つづき
(2) 争点2

(1審被告 Y1 及び同 Y2 は,退職後に1審原告ら又は秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から取得した1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか)について

〔1審原告らの主張〕

ア 1審原告ネクスト及び同コミュニティは,投資用不動産販売運用事業を行う上で有機的一体となって業務を遂行しており,現に,ISOといった情報品質評価に際しても1つの組織として評価を受けているし,両者の従業員についていずれに属するかを問わず,両者の情報管理体制について認識させるよう教育を施している。したがって,1審原告ネクストの元従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2 ら)は,原判決の認定のとおり,1審原告ネクストに対して本件就業規則上の秘密保持義務を負っている一方,1審原告コミュニティに対しても
信義則上の秘密保持義務を負っていることが明らかである。

また,1審原告ネクストの従業員は,顧客が賃貸管理委託契約締結を決断した場合,顧客と1審原告コミュニティとの間の契約書を交付して,顧客による署名押印をもらうほか,1審原告コミュニティから得た情報に基づいて,当該顧客と1審原告コミュニティとの間の契約に関する賃料の設定などを行っているが,1審原告ネクストの従業員によるこのような1審原告コミュニティの業務の代行は,法的には,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティの代理人又は使者として当該契約を締結するなどしているものと評価される。したがって,1審原告ネクストの従業員は,1審原告コミュニティに対し,委任類似の関係にあり,民法644条又はその類推適用によって善管注意義務を負っており,その内容として,顧客情報等について秘密保持義務を負っているものと解され,当該義務は,企業の秘密を保持するという性質上,在職中はもちろんのこと退職後であっても継続するのが当然である。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの従業員として,上記善管注意義務に基づく秘密保持義務を負っており,かつ,他の従業員も同様の義務を負っていたことを認識し,又は容易に認識することができた以上,1審被告らに不正競争防止法2条1項7号及び8号の不正使用行為についての故意又は過失があることは,明らかである。

イ 原判決は,①顧客から1審被告 Y1 宛に電話がかかってきた事案(顧客番号1,6,9,11,21,41,42,48,51),②面識のある顧客についてNTT番号案内を利用して勧誘行為を行った事案(同43),③面識がない顧客に対してNTT番号案内等で勧誘行為を行った事案(同20,31,58,64),④「知人」を介して顧客情報を再取得した事案(同22)について不正使用行為があったとはいえない旨を認定している。
しかしながら,上記①は,顧客らが1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストの従業員であるとの前提で連絡してきたことを奇貨として勧誘行為がされたもので,連絡先を除く顧客情報が不正に使用されたことが強く窺われるし,上記②は,勧誘行為の時期に照らし,1審被告レントレックス設立のための営業目的をもってされたものというべきである。さらに上記③及び④は,1審被告レントレックス設立直後に集中的に勧誘行為が行われていることからすれば,1審被告らがこれらの顧客について1審原告らの顧客情報を不正使用したことが明らかである。

よって,上記①ないし④の各事案は,いずれも不正競争防止法2条1項7号又は8号に該当し,仮にそうではないとしても,
本件就業規則に基づく競業避止義務違反として債務不履行責任が生ずる。

ウ 1審原告らの顧客情報が1審被告 Y1 及び同 Y2 に帰属する余地はないし,1審原告らは,販売とその後の管理が一体となった投資商品として不動産を販売しており,1審原告ネクストが物件を販売する際に,1審原告コミュニティは,必ず賃貸管理契約の営業や契約締結業務を行っている。また,前記のとおり,1審原告らは,顧客情報を共有し,一体としてこれについての管理体制を確保しているから,1審原告ネクストの元従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2 ら)は,退職後も,1審原告コミュニティに対する関係でも秘密保持義務があることが明らかである。さらに,A や B らは,1審原告ネクスト在職当時の顧客担当者として,秘密保持義務に反して顧客情報を1審被告 Y1 及び同 Y2 に開示したものである。


〔1審被告らの主張〕

ア 1審原告らの顧客情報は,
その従業員にも帰属するから,その利用には何ら違法性がない。

仮に,上記顧客情報が1審原告らに帰属するとしても,当該顧客情報のうち,年収等を除く氏名や連絡先等は,企業活動とは切り離された従業員と顧客との間の人的関係を営む上でも不可欠の情報である以上,当該従業員(1審被告 Y1 及び同Y2 並びにその元同僚ら)にも帰属すると理解されるべきである。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,人的関係に基づく限りにおいて顧客と接触したにすぎないから,1審被告 Y1 らによる営業活動は,何ら違法と評価されるものではない。

イ 1審原告ネクストの従業員が平成20年以前に1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約の締結業務を行っていたと認めるに足りる的確な証拠はないし,仮に,関連企業として,単に業務上署名捺印を求めるように指導されていた賃貸管理委託契約の締結業務を一部行っていたからといって,それのみをもって,1審被告 Y1及び同 Y2 が1審原告コミュニティとの関係で,当然に信義則上秘密保持義務を負うとすることは,不合理である。むしろ,1審原告ネクストは,顧客との間で,売買契約締結時に,常に1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約を締結していたわけではないし,1審原告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が全ての顧客との関係で1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約業務に携わっていたか否かについて,何ら主張立証をしていない。仮に,1審原告ネクストの元従業員(1審被告 Y1 及び同Y2 ら)が1審原告コミュニティとの関係でも秘密保持義務を負うとしても,それは,1審原告ら双方の関係で顧客情報を示されたことが必要であると考えられるところ,そのような事実は,全ての顧客との関係では主張立証されていない。また, A 及び B は,1審原告ネクスト退職後に知り得た顧客情報を1審被告Y1 に提供したものであり,1審原告ネクスト在職中に知り得た顧客情報を提供したものではないから,顧客番号15,23,26,30,35,38,39,44,45,50及び53ないし56については,1審原告らとの関係で秘密保持義務の対象とならない。他の顧客についても,同じく1審原告ネクスト退職後に顧客からの連絡を受けてその連絡先が判明した者もいるが,これらの顧客についても,1審原告らとの関係で秘密保持義務の対象とはならない。

ウ 1審原告コミュニティに係る賃貸管理委託契約の締結業務は,郵送等により別途されることも少なくなかったものであり,また,実際に締結業務の一部を行うとしても,それは,単に署名押印を求める程度のものにすぎないから,到底代理と評価されるものではないし,1審原告ネクストの従業員は,それ以上に,1審原告コミュニティの業務を代行するなどしていない。したがって,1審被告 Y1 及び同Y2 並びに元同僚を含む1審原告ネクストの従業員は,1審原告コミュニティに対し,善管注意義務の内容としての秘密保持義務を負っていない。

つづく