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わかる! 使える! 契約書の基本

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顧客情報の不正利用 競業的行為をやめさせる方法はあるか 5

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つづき

(3) 争点3(1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告らからその顧客情報を取得した場合,それは,不正の手段によるものか。仮に不正の手段によるものでない場合,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告らの顧客情報を1審原告らから示され,退職後に図利加害目的で1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,1審被告 Y1 及び同 Y2 が秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から1審原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について

〔1審原告らの主張〕
ア 原判決は,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,営業報告書等を不正に複写するなどしていたとは認めるに足りず,また,その個人所有物である携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を抹消していないが,そのことが不正の手段による顧客情報の取得には当たらない旨を説示する。

しかしながら,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,個人情報を記録したものを一切保有していないと明記された本件誓約書を1審原告ネクストに提出しているにもかかわらず,その携帯電話に顧客情報を保持し続けたのであって,これは,詐欺に類する不正の手段であるから,原判決は,訂正されるべきである。

イ 1審被告レントレックスが1審原告らと類似の業務を行っており,かつ,その顧客のうち多数が1審原告らから引き抜かれた者であることから明らかなように,1審被告らは,競業目的及び1審原告らに対する図利加害目的を有していた。また,1審原告ネクストの元従業員から1審原告ネクストの顧客情報を集中的に開示されれば不正開示を疑うのは当たり前であって,1審被告らは,悪意重過失があった。さらに,1審原告ネクストは,全従業員に対してテスト等の教育を実施しているから,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,他の従業員が教育を受けていたことを知らなかったはずがない。


〔1審被告らの主張〕
ア 前記のとおり,1審原告コミュニティは,顧客との間で,1審原告ネクストとの売買契約締結時に,常に賃貸管理委託契約を締結していたわけではないし,1審原告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が全ての顧客との関係で1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約業務に携わっていたか否かについて,何ら主張立証をしていない。また,1審被告らは,1審被告レントレックス設立後に顧客に対してその立上げの挨拶をしていたにすぎず,本件書面の送付も,顧客に企業規模で判断されないようにするためにすぎないし,顧客の質問に対応するために敷金流用等の問題について触れただけであって,業務内容等の類似性も,投資用マンションの賃貸管理業において通常予定されている範囲内のものであって,顧客が1審被告レントレックスに賃貸管理委託契約を移行したのは,1審原告らが提供しないサービスを提供したからである。このように,1審被告らは,競業目的も図利加害目的も有していない。

イ 1審被告 Y1 及び同 Y2 は, A や B が1審原告ネクストを退職後に顧客と面識をもったとの説明を受けていたし,他の元同僚が1審原告コミュニティの業務を行っていたのかどうか明らかでなく,彼らが秘密保持義務を負っていたかどうかも認識できない。このように,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,元同僚らが1審原告コミュニティに対して秘密保持義務を負っているにもかかわらず,これに反して顧客情報を開示したと知っていたとは認められず,また,知らなかったことに過失もない。

(4) 争点4(1審被告らの故意・過失)について


〔1審原告らの主張〕
1審被告 Y1 及び同 Y2 は,自ら積極的に顧客に連絡を取って1審被告レントレックスのために営業活動を行っていたのであって,原判決認定のとおり,1審被告Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストの顧客情報を不正使用・不正取得したことについて故意・過失があり,かつ,不正競争防止法に基づく責任があることは,明らかである。


〔1審被告らの主張〕
前記のとおり,1審被告らが使用した顧客情報は,ごく限られたものにすぎず,営業秘密に該当しないし,仮に営業秘密に該当するとしても,1審被告 Y1 及び同Y2 は,そのような認識を持っておらず,そのことについて過失もない。さらに,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの元従業員らが1審原告コミュニティに対して秘密保持義務を負わず,またその対象とならない顧客の連絡先の提供を受けたとの認識のもとにこれらを使用したのであるから,当該使用は,不正使用に該当せず,このことについて故意も過失も認められない。


(5) 争点5(1審原告ネクストと1審被告らとは競争関係にあるか)について


〔1審原告らの主張〕
原判決も指摘するとおり,競争関係は,双方の営業につき,その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる。そして,1審原告ネクストと1審被告らとの間には,投資用マンションの賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業において競争関係があるといえる。


〔1審被告らの主張〕
原判決が指摘する「競合が生じるおそれ」は,単に事業目的を抽象的に比較するのみならず,営業実態に即して判断されるべきであるところ,1審原告ネクストの事業は,投資用マンションの販売業に特化している一方,1審被告レントレックスの事業は,賃貸営業に特化しているから,競合が生じるおそれはない。

(6) 争点6(1審被告らは1審原告らの顧客に対して1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか)について


〔1審原告らの主張〕
原判決は,顧客番号7,28,29,38,39,44,53,54,64及び65の10名について,1審被告らが虚偽の事実を告知した事実を正当に認定している一方で,その余の顧客については信用毀損の事実が認められない旨を説示する。しかしながら,①1審被告らは,1審原告らの信用を毀損する内容のチラシ(甲8)やパンフレット(乙10)という定型的ツールをわざわざ用意していること,

②上記10名の顧客に対する信用毀損行為が,当該ツールに沿う定型的なものであること,③1審被告らが1審原告ネクストの顧客を狙い撃って違法な勧誘行為を行っていたこと,④1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとのサービス内容を比較しても特段後者の方が優れている点はなく(甲30,乙13),むしろ後者が設立間もなく経済的な信用も高くはないにもかかわらず顧客が契約を変更していること,といった事情を総合して考えれば,1審被告らが全顧客に対して,定型的に1審原告ネクストの信用を毀損する事実を告知して勧誘行為を行っていたことが強く窺われる。

よって,上記10名以外の顧客については信用毀損の事実が認められないとする原判決の認定は,誤りであり,原判決は,変更されるべきである。なお,1審被告らの信用毀損行為に関する弁解は,客観的証拠に反するものであって,検討する価値もない。


〔1審被告らの主張〕
1審被告らは,原判決認定のような信用毀損行為をしていない。上記信用毀損行為に関する C の陳述書は,1審被告 Y2 が一般論として述べたことが誤解された上で作成されたものと推認され,信用性が認められない。むしろ,1審原告ネクストの従業員が,1審被告レントレックスの顧客に対して1審被告レントレックスが多数裁判を起こされているなどといった事実を告知していることも,上記推認を裏付ける。


(7) 争点7(1審被告らの故意・過失)について

〔1審原告らの主張〕
1審被告らの故意・過失を認定した原判決は,正当である。1審被告らは,PBRが会社の財務状況と直結していないことを認識しながら,倒産のリスクを強調したチラシ(甲8)を顧客らに送付したものであって,日刊ゲンダイの記事内容を奇貨として,あえて有価証券報告書を確認せずに積極的に利用し,顧客らの不安を煽る故意があったことも明らかである。


〔1審被告らの主張〕
1審被告らは,信用毀損行為を行っておらず,本件書面の送付も,1審原告コミュニティの顧客らを狙って競業を行う目的によるものでもない。また,1審被告Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの従業員であったにすぎないから,企業が倒産の危機に瀕しているかどうかについて認識していない。なお,本件書面に記載されたPBRの数値に誤りはないところ,日刊ゲンダイの記事は,かかるPBRの数値を前提に作成されているから,有価証券報告書を吟味したところで,その内容の正確性を確認することもできない。



(8) 争点8(本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か),争点9(1審被告 Y1 及び同 Y2 は退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったか)及び争点10(1審被告 Y1 及び同 Y2 が退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか)について


〔1審原告らの主張〕
ア 原判決も認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,本件誓約書及び本件就業規則に違反する行為があり,債務不履行責任を免れない。

イ 原判決は,「役職者,又は企画の職務に従事していた者」について競業避止義務を負わせる1審原告ネクストの本件就業規則55条について,退職時点にこれらに該当する者に適用が限られるとの解釈を示して1審被告らの競業避止義務違反に基づく債務不履行責任を否定している。
しかしながら,上記条項は,原判決の解釈によれば,「従事している者」と規定されるべだã§ã‚るばかりか,1審ネクスト在職中に一度でも役職に就いた者は,営業秘密である顧客情報に接するのであるから,上記条項は,このような者の退職後の競業を防ぐことを趣旨とするものである。そして,1審被告 Y1 は,課長職であり,1審被告 Y2 は,係長職であって,いずれも1審原告ネクストの役職者であったのだから,上記条項の適用を受ける。したがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 に上記条項の適用がないとの判断に基づく1審原告らの敗訴部分(顧客番号1,6,9,11,20~22,31,41~43,48,51,58)は,変更されるべきである。


〔1審被告らの主張〕
1審被告 Y1 及び同 Y2 について本件誓約書違反又は本件就業規則違反の問題が生じる余地はない。


(9) 争点11(因果関係及び損害)について


〔1審原告らの主張〕

ア 1審原告ネクストの損害について
(ア) 1審被告らの違法行為への対応費用について
原判決は,1審被告らの違法行為への対応費用を損害として認定しなかった。しかしながら,本件は,数十名にのぼる1審原告らの顧客に対して行われた組織的な顧客奪取事案であって,このような行為を行えば,1審原告らが弁護士を依頼するばかりか,多くの従業員が本来の業務を中止して対応せざるを得なくなることは,通常人ならば十分に予測できし,このような人件費等の費用は,弁護士費用とは別個に通常生ずべき損害である。

よって,1審原告ネクストは,その対応費用として,48万1080円(顧客1名当たり30分×各担当者の時給)を請求する。

(イ) 信用毀損による損害について

原判決は,信用毀損行為が10名の顧客に行われたにとどまること,チラシ(甲8)の記載が日刊ゲンダイに記載されたものであること,売上げの減少等の実害が生じた形跡が窺われないことから,損害額を100万円と認定した。しかしながら,信用毀損行為は,前記のとおり,66名の顧客に対して行われたし,チラシには日刊ゲンダイにはない記載があり,これによって1審原告らの倒産可能性を特に強調した資料として作り替えられている。そして,信用毀損行為により継続的に1審原告らと取引関係にあった顧客を奪われたことは,例えば買増し営業の機会を失うなど,それ自体が実害である。ことに,上場企業としての存続可能性や上場維持可能性を疑われるということは,1審原告らのような投資用不動産販売を営み,顧客の信頼を唯一最大の基礎としている会社にとって致命的である。したがって,信用毀損による損害は,到底100万円にとどまらないし,このことは,仮に信用毀損行為が10名の顧客に限定されるとしても同様であるから,1審原告ネクストは,信用毀損に基づく損害として2000万円を請求する。

(ウ) 弁護士費用について
1審原告ネクストの損害が100万円にとどまらないこと及び事案の悪質性から,弁護士費用は,損害額の1割に限定すべきではない。よって,1審原告ネクストは,弁護士費用として300万円を請求する。

イ 1審原告コミュニティの損害について

(ア) 逸失委託料について
原判決は,一部の顧客について1審被告らの不正競争行為を認めず,また,不正競争行為を認定した顧客については,①損害額を賃貸管理委託契約の契約期間である2年間に限定し,②限界利益率による修正を加え,③寄与度を70%と認定して,逸失委託料相当の損害額を303万3214円と認定した。しかしながら,不正競争行為は,66名の顧客に対して行われたし,少なくとも競業避止義務違反として債務不履行責任が認められるべきである。上記①についてみると,投資用不動産事業の顧客は,副業である当該事業について長期間にわたって賃貸管理会社に管理を委託するのが通常であって,賃貸管理委託契約(甲40)自体に自動更新条項が定められているなど,賃貸管理が2年間で終了することは,皆無であるといってよい。1審原告コミュニティは,平成20年11月頃から行われた1審被告らによる顧客の引き抜き行為により,現実に3年以上もの期間にわたって委託料収入を喪失しており,損害の期間を2年間に限定すべき理由はない。

上記②についてみると,逸失利益の算定において利益率を考慮する方法は,一般的には正当であるが,管理物件数と経費とは,直ちに比例するものではなく,1審原告コミュニティの1万戸以上の管理物件から100件程度の管理物件が減少しても,全体で要する経費は,減少せず,管理手数料(収益)が減少するのみである。したがって,本件においては,賃貸管理という業態に鑑み,利益率の加味は行われるべきではなく,失われた管理手数料(収益)相当額全部が損害として認定されるべきである。

ä¸Šè¨˜â‘¢ã«ã¤ã„ã¦ã¿ã‚‹ã¨ï¼Œï¼‘å¯©åŽŸå‘Šã‚‰ãŒé¡§å®¢ã«æä¾›ã—ã¦ã„ã‚‹ã‚µãƒ¼ãƒ“ã‚¹ã¯ï¼Œï¼‘å¯©è¢«å‘Šãƒ¬ãƒ³ãƒˆãƒ¬ãƒƒã‚¯ã‚¹ã®ã‚µãƒ¼ãƒ“ã‚¹ã¨åŒç­‰ã‹ï¼Œé¡§å®¢ã«æœ‰åˆ©ãªã‚‚ã®ã§ã‚ã‚Šï¼ˆç”²ï¼ “0,乙12),本件で1審被告らが1審原告らの顧客の引き抜きが可能であったのは,1審被告らによる顧客情報の違法な利用と,「元1審原告ネクスト従業員」という一種のブランドを利用したことが大きいばかりか,1審被告らによる信用毀損行為によるものである。したがって,本件では,1審被告らのサービスの寄与度など一切認められる余地はなく,30%の寄与度を認めた原判決は,変更されるべきである。

よって,1審原告コミュニティは,本来,逸失委託料相当額として832万1340円を請求し得るし,仮に,上記損害が認められないとしても,不正競争防止法5条2項に基づき,1審被告レントレックスの管理委託料(毎月最低3500円)により,798万円を請求し得るが,本件訴訟においては,内金113万5020円の請求にとどめるものである。

(イ) 1審被告らの違法行為への対応費用について
1審原告ネクストについて主張したのと同様に,1審原告コミュニティは,対応費用として4万8730円を請求する。

(ウ) 信用毀損による損害について
1審原告ネクストについて主張したのと同様に,信用毀損による損害は,原判決が認定した50万円にとどまるものではない。よって,1審原告コミュニティは,信用毀損に基づく損害として2000万円を請求する。

(エ) 弁護士費用について
1審原告ネクストについて主張したのと同様に,1審原告コミュニティは,弁護士費用として300万円を請求する。

〔1審被告らの主張〕
ア 1審原告ネクストの損害について
本件書面は,日刊ゲンダイの内容がそのまま記載された書面にすぎず,顧客の多くは,サービスを比較した上で,1審被告レントレックスに賃貸管理を移行したのであって,1審原告ネクストの信用は,毀損されていない。よって,1審原告ネクストに損害はない。

イ 1審原告コミュニティの損害について

(ア) 逸失委託料について
原判決別紙顧客勧誘一覧表34の D は,独自の判断で管理会社を変更したものであって(乙47,原審証人 D ),同人との関係では,逸失委託料の損害金との間に因果関係がない。同17の E は,破産手続により管理物件が売却されて新所有者である1審原告ネクストにより,1審被告レントレックスとの賃貸管理委託契約が解約されているから,逸失委託料についての因果関係が遮断されている。また,1審原告コミュニティは,原判決が認定した27名の顧客等に係る建物管理原価についても支出を免れた以上,建物管理原価額約2億6197万円(甲17)についても控除した上で,利益率が算定されるべきである。さらに,1審被告レントレックスに管理委託契約を移行した多くの顧客は,1審原告らのサービスに不満を有していたところ,その自由意思により1審被告レントレックスに対して管理委託契約を移行したものであって,このような顧客から1審被告 Y1 及び同 Y2 に対して連絡をした事案も少なくないことを考慮すると,逸失
委託料との間の因果関係は,それ自体否定されるべきである。仮にそうでないとしても,少なくとも80%の寄与度減額を行うべきであり,1審原告コミュニティに生じた損害は,逸失委託料として算定された損害金の20%に限定されるべきであり,さらに,契約期間(2年間)の50%である1年間に限定して算定されるべきである。

(イ) その余の請求について
そもそも信用毀損行為がない以上,その余の損害は,1審原告コミュニティに生じていない。


つづく