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浮世絵の研究と著作権 3

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つづき

著作権侵害に加えて、
不法行為も成立するかどうか?

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2 争点2(一般不法行為の成否)について

【原告の主張】 原告の祖父であるP3は,明治末期以来,長年にわたり莫大な自費を投じて膨大な錦絵を収集し,それら錦絵の制作された当時の世相,歴史的背景を綿密に調べ,研究を続けた結果,「浮世絵版画は美術品として作られたものではなく,かわら版から発展したものであり,江戸時代の庶民の玩具であり,幕末期以降は事件報道を行うことにより一種のジャーナリズム的役割を果たした」旨の,それまで誰ひとり思いつかなかった極めてユニークな結論を得て,昭和10,11年に,これを「近世錦繪世相史」(全8巻。甲9の1~3)において発表した。 被告は,上記P3の労苦にただ乗りし,P3の説を多少アレンジして,自説として三度も発表し,名声を上げ,かつ経済的利益を上げたものである。しかも,被告は,「近世錦繪世相史」(甲9の1~3)に「最も刺激を受けた」ことを自認しながら(甲14の1),本件番組1ないし4での発言,本件単行本及び本件文庫本での記述に当たって,自説がP3の説に依拠することを一言も示さなかったのみならず,「近世錦繪世相史」(甲9の1~3)を参考文献として示すことすらしなかった。 したがって,被告の行為については,仮に著作権侵害に当たらないとしても,一般不法行為が成立する。

【被告の主張】

 錦絵は美術として作られたものではないという考え,日本人の浮世絵観は外国人の見方を踏襲したものという考え,浮世絵ないし錦絵が玩具ないし遊びであるという考え,浮世絵ないし錦絵が情報提供媒体として作成されたという考えは,いずれもそれ自体は創作的な表現ではなく,著作物ではない。また,そのような「考え」は何人かが独占できるものでもない。また,被告著作物部分は,いずれも,被告の考えを被告の言葉によって表現したものであって,原告著作物のデッドコピーでない。 著作権侵害に当たらない著作物の利用行為は,著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情があるがない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当であるところ,本件においてそのような特段の事情は何ら存在していない。 したがって,一般不法行為は成立しない。

3 争点3(原告の損害額)について

【原告の主張】

 本件番組1ないし4について本件番組1ないし4は,番組を録画して保管し,随時視聴する者が大勢いるほか,現在でもNHKアーカイブスの利用により,日々新たな視聴者が発生している。したがって,本件番組1ないし4における被告の発言により生じた原告の逸失利益及び精神的苦痛に対する慰謝料の合計額は1000万円を下らない。 本件単行本について本件単行本の販売によって被告の得た利益は,初版分が870万円,再版分が290万円と算定される。また,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,本件単行本の発行後,1年間あたり50万円を下ることはなく,19年間で950万円と算定される。 本件文庫本について本件文庫本の販売によって被告の得た利益は,114万3000円と算定される。また,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,本件文庫本の発行後,1年間あたり30万円を下ることはなく,9年間で270万円と算定される。 小括以上によれば,原告の損害賠償請求額は,3494万3000円であるところ,本訴において,そのうち1000万円について請求する。

【被告の主張】争う。


つづく