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著作権の買い取りと、黙示の合意 (典型的なトラブル)

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著作権の買い取りと黙示の許諾

絵や文章など、著作権のからむものが
ビジネスの対象となるとき、
著作権の買い取りという手法はよくある。


ようするに著作権を金でかったのだから、
あとは買ったほうが好きにして良いという感覚と、
法律的な著作権の制度とのギャップが、
トラブルを生むことは多い。

典型的な判例があったので掲載。


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平成24年3月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成23年(ワ)第8228号 出版差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成23年12月26日
判 決
愛知県名古屋市<以下略>
原 告 A1
熊本県熊本市<以下略>
原 告 A2
東京都福生市<以下略>
原 告 A3
静岡県伊豆の国市<以下略>
原 告 A4
京都府京都市<以下略>
原 告 A5
大阪府松原市<以下略>
原 告 A6
熊本県熊本市<以下略>
原 告 A7
熊本県熊本市<以下略>
原 告 A8
福岡県北九州市<以下略>
原 告 A9
埼玉県所沢市<以下略>
原 告 A10
東京都青梅市<以下略>
原 告 A11
福岡県福岡市<以下略>
原 告 A12
鳥取県鳥取市<以下略>
原 告 A13
熊本県熊本市<以下略>
原 告 A14
原告ら訴訟代理人弁護士 藤 原 宏 高
同 武 田 昇 平
東京都渋谷区<以下略>

被 告 株式会社石井式国語教育研究会
同訴訟代理人弁護士 樋 口 卓 也
同訴訟復代理人弁護士 淺 海 菜 保 子

主 文

1 被告は,別紙第1書籍目録記載の書籍の印刷,出版,販売又は頒布を
してはならない。
2 被告は,別紙第2書籍目録記載の書籍の印刷,出版をしてはならない。
3 被告は,原告A1に対し,66万円及び内金60万円に対する別紙第
1遅延損害金目録記載1の金員を支払え。
4 被告は,原告A2に対し,115万5000円及び内金105万円に
対する別紙第1遅延損害金目録記載2の金員を支払え。
5 被告は,原告A3に対し,99万円及び内金90万円に対する別紙第
1遅延損害金目録記載3の金員を支払え。
6 被告は,原告A4に対し,33万円及び内金30万円に対する別紙第
1遅延損害金目録記載4の金員を支払え。
7 被告は,原告A5に対し,82万5000円及び内金75万円に対す
る別紙第1遅延損害金目録記載5の金員を支払え。
8 被告は,原告A6に対し,23万1000円及び内金21万円に対す
る別紙第1遅延損害金目録記載6の金員を支払え。
9 被告は,原告A7に対し,23万1000円及び内金21万円に対す
る別紙第1遅延損害金目録記載7の金員を支払え。
10 被告は,原告A8に対し,49万5000円及び内金45万円に対す
る別紙第1遅延損害金目録記載8の金員を支払え。
11 被告は,原告A9に対し,16万5000円及び内金15万円に対す
ã‚‹å ˆ¥ç´™ç¬¬ï¼‘遅延損害金目録記載9の金員を支払え。
12 被告は,原告A10に対し,132万円及び内金120万円に対する
別紙第1遅延損害金目録記載10の金員を支払え。
13 被告は,原告A11に対し,132万円及び内金120万円に対する
別紙第1遅延損害金目録記載11の金員を支払え。
14 被告は,原告A12に対し,33万円及び内金30万円に対する別紙
第1遅延損害金目録記載12の金員を支払え。
15 被告は,原告A13に対し,49万5000円及び内金45万円に対
する別紙第1遅延損害金目録記載13の金員を支払え。
16 被告は,原告A14に対し,33万円及び内金30万円に対する別紙
第1遅延損害金目録記載14の金員を支払え。
17 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
18 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告らの負担とし,その余を被
告の負担とする。
19 この判決は,第3項ないし第16項に限り,仮に執行することができ
る。


事 実 及 び 理 由

第1 請求
1 主文第1項及び第2項と同旨
2 被告は,原告A1に対し,110万円及びこれに対する別紙第2遅延損害金
目録記載1の金員を支払え。
3 被告は,原告A2に対し,192万5000円及びこれに対する別紙第2遅
延損害金目録記載2の金員を支払え。
4 被告は,原告A3に対し,165万円及びこれに対する別紙第2遅延損害金
目録記載3の金員を支払え。
5 被告は,原告A4に対し,55万円及びこれに対する別紙第2遅延損害金目
録記載4の金員を支払え。
6 被告は,原告A5に対し,137万5000円及びこれに対する別紙第2遅
延損害金目録記載5の金員を支払え。
7 被告は,原告A6に対し,38万5000円及びこれに対する別紙第2遅延
損害金目録記載6の金員を支払え。
8 被告は,原告A7に対し,38万5000円及びこれに対する別紙第2遅延
損害金目録記載7の金員を支払え。
9 被告は,原告A8に対し,82万5000円及びこれに対する別紙第2遅延
損害金目録記載8の金員を支払え。
10 被告は,原告A9に対し,27万5000円及びこれに対する別紙第2遅延
損害金目録記載9の金員を支払え。
11 被告は,原告A10に対し,220万円及びこれに対する別紙第2遅延損害
金目録記載10の金員を支払え。
12 被告は,原告A11に対し,220万円及びこれに対する別紙第2遅延損害
金目録記載11の金員を支払え。
13 被告は,原告A12に対し,55万円及びこれに対する別紙第2遅延損害金
目録記載12の金員を支払え。
14 被告は,原告A13に対し,82万5000円及びこれに対する別紙第2遅
延損害金目録記載13の金員を支払え。
15 被告は,原告A14に対し,55万円及びこれに対する別紙第2遅延損害金
目録記載14の金員を支払え。


第2 事案の概要

原告らは,いずれも画家であり,被告が平成17年に発行した別紙第1書籍目録記載の書籍(以下「本件第1書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第1著作物目録記載の絵画(以下「本件第1原画」という。),及び,被告が平成20年に発行した別紙第2書籍目録記載の書籍(以下「本件第2書籍」といい,本件第1書籍と併せて「本件書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第2著作物目録記載の絵画(以下「本件第2原画」といい,本件第1原画と併せて「本件原画」という。)の著作者である。

本件は,原告らが,
① 被告は,原告らに無断で本件第1書籍を増刷し,増刷した書籍を販売しており,本件第1原画に係る原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害している,
② 上記のような被告の態度に照らすと,被告は,本件第2書籍についても,今後,原告らに無断でこれを増刷し,本件第2原画に係る原告らの著作権(複製権)を侵害するおそれがある,
と主張して,被告に対し,著作権(複製権ないし譲渡権)に基づき,本件第1書籍の印刷,出版,販売又は頒布の差止め及び本件第2書籍の印刷,出版の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として,前記「第1請求」記載の金員の支払を求める事案である。


1 争いのない事実等(末尾に証拠を掲記した事実以外は,当事者間に争いのない事実,又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)

(1) 当事者

原告らは,いずれも画家である。

被告は,学習教室の経営,出版事業,教育教材,教具等の製造販売等を行う会社である。


(2) 本件第1書籍の出版
ア 被告は,平成16年に,幼児教育教材「石井式青い鳥文庫シリーズ」の制作を企画した。同企画では,上記シリーズは,2歳ないし4歳の幼児向けの「赤い実シリーズ」,3歳ないし5歳の幼児向けの「白い実シリーズ」,4歳ないし6歳の幼児向けの「青い実シリーズ」に分類され,各シリーズごとに10タイトル(合計30タイトル)の書籍を,平成17年4月から平成18年2月までの間,平成17年8月を除き,毎月出版するものとされた。

そこで,被告は,原告らほか数名の画家に対し,これらの書籍の挿絵とするための絵画(1書籍(1タイトル)につき10枚)の制作を依頼した。

イ 原告らは,上記依頼を承諾し,本件第1原画を制作して(なお,各原画の著作者は,別紙第1著作物目録記載のとおりである。),本件第1原画を被告に引き渡した。

被告は,原告らから本件第1原画の引渡しを受ける際,原告らに対し,これらの原画の画料(以下「本件画料」という。)として,上記書籍1タイトルにつき50万円を支払った(なお,本件画料の性質が,上記原画の著作権を原告らから被告に譲渡することの対価であるか否かについては,後記のとおり当事者間に争いがある。)。

ウ 被告は,平成17年ころ,本件第1書籍を各1万冊出版し,これらを幼稚園等向けに販売した。本件第1書籍は,総ページ数が20ページ(表裏の表紙を含む。)であり,本件第1原画が,各ページに挿絵として掲載されている。


(3) 本件第2書籍の出版

被告は,本件第1書籍を発行したのと同時期に,これと同じシリーズの書籍である,「石井式 青い鳥文庫 白い実 5月号」(タイトル「かぐや姫」),「石井式 青い鳥文庫 青い実 5月号」(タイトル「金の斧と銀の斧」)及び「石井式 青い鳥文庫 青い実 10月号」(タイトル「一本の藁」)を発行したものの,これらの書籍の挿絵については,顧客である幼稚園等の評判が良くなかった。

そのため,被告は,これらの書籍については,原文及び文字のレイアウトは当初に発行したものと同じとしたまま,挿絵だけを差し替えて,新たな書籍を制作することとし,平成19年ころ,原告A10及び原告A13に対し,上記書籍の挿絵とするための絵画(1書籍(1タイトル)につき10枚)の制作を依頼した(甲43,証人B,原告A10本人)。

原告A10及び原告A13は,上記依頼を承諾し,本件第2原画を制作して(なお,各原画の著作者は,別紙第2著作物目録記載のとおりである。),本件第2原画を被告に引き渡した。

被告は,原告A10及び原告A13から本件第2原画の引渡しを受ける際,同原告らに対し,これらの原画の画料として,上記書籍1タイトルにつき50万円を支払った。


(4) 本件第1書籍の増刷
被告は,平成20年4月から平成22年12月までの間に,別紙書籍増刷表記載のとおり本件第1書籍を増刷し(以下「本件増刷」という。),これらを幼稚園等向けに販売した。被告は,本件増刷に当たって,原告らから増刷について改めて許諾を受けたり,追加の画料を支払ったりはしなかった。

(5) åŽŸå‘Šï¼¡ï¼’ã‹ã‚‰è¢ «å‘Šã«å¯¾ã™ã‚‹æŠ—è­°
原告A2の委任を受けた代理人弁護士は,被告に対し,平成22年7月29日付けの内容証明郵便を送付し,その中で,本件増刷は原告らが有する本件第1原画の著作権を侵害するものであると主張し,今後原告らの許諾なく本件第1書籍の増刷をすることを禁じる旨を通告した(甲33)。

また,原告A2及び代理人弁護士は,被告から本件第1書籍の新たな増刷の依頼を受けて本件原画を所持していた株式会社アイ・エヌ・ピー(以下「INP社」という。)に対し,平成22年8月18日付けの内容証明郵便等を送付し,それらの書面の中で,本件第1原画を印刷することは原告らの著作権を侵害することとなる旨を通告し,被告から受注した印刷をしないよう,警告ないし嘆願した(甲34,35)。


2 争点

(1) 被告は,原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか(争点1)
(2) 原告らの損害(争点2)



つづく

 ようするに

①絵を書いてもらうよう依頼

②依頼された絵をひきわたし、報酬をもらった

③その後の絵のとりあつかい(増刷など)についてはよくわからなくなった

→結果、トラブルになった。

という典型的な著作権がらみのトラブル。

次回は両当事者の主張と裁判所の判断。


この手の争いでかならずもちだされる、
「黙示の合意」戦法(?)
が、どこまで通用するかというのもひとつのポイントですね。