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雑誌のタイトルはマネしてよいか? 面白い判例 2

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当事者の主張の対立ぶり、
論点のつくりかたがおもしろい。




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【原告の主張】

以下のとおり,原告標章は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識さ
れているものである。

(1)原告標章の商品等表示性

ア 原告旧標章
前提事実(2)のとおり,原告は,昭和62年11月1日から原告雑誌を刊行しており,平成16年3月号までは,原告雑誌の表紙上段に,大きく目立つ態様で,原告旧標章を付して使用していた。増刊号でも,題号とは別に,その表紙に出所を識別できる態様で,原告旧標章を付して使用していた。

イ 原告標章
原告は,平成16年4月号から現在まで,原告雑誌の表紙上段に,大きく目立つ態様で,原告標章を付して使用してきた。増刊号でも,題号とは別に,その表紙に出所を識別できる態様で,原告標章を付して使用してきた。

原告標章は,原告旧標章と比べると,「A」の文字がギリシャ文字の「Λ」に近づけられており,「R」の文字の右下の部分がやや右下に延ばされているものの,これらの差違は微細なものにすぎず,原告旧標章と原告標章は,実質的に同一の構成のものである。

ウ 原告標章の商品等表示性

原告雑誌の表紙における誌名(題号)の表記は,雑誌上部中央の誌名を記載す る部分 に, いずれ もアル ファ ベット (書体 は「Times New Roman」と同等のもの)の大文字で「HEART」と大きく表わし,「HEART」の T の文字の右上端に,やや大きく,何月号であるかについて示す各号表示があり,その下部に,各号表示よりも小さく,アルファベットの小文字で,「nursing」と小さく記載されているというものである。

具体的な表記の態様は,以下のとおりであり,実寸は,「HEART」の部分(原告標章)が横13.3㎝×縦3㎝,「nursing」の部分が横3.5㎝×縦0.5㎝である。

このように,「HEART」の部分は,「nursing」の部分と比べると,圧倒的に大きく,表紙上段に最も目立つように記載されている。「nursing」の部分は,原告雑誌が看護雑誌であることを意味するものにすぎないし,上記の態様で表記されているにすぎないから,需要者の注意を引くものではない。

また,実際に,原告雑誌は,取引者,需要者(購読者)から,「ハート」と呼称されており,原告標章は,原告の商品表示として認識されている。

エ 後記【被告の主張】に対する反論

循環器疾患に係る医療に従事する看護師を読者として雑誌を出版する場合に,誌名の一部に「HEART」の語を用いなければ,当該雑誌が何を内容としているのかを表すことが困難であるということはない。

例えば,「循環器」,「心臓」,「疾患」,「看護」及び「ケア」等の語を,単独で又は組み合わせて使用することが可能であり,誌名選択の幅は非常に広い。したがって,普通名詞であるからといって,商品表示となりえないということはない。

(2)原告標章が,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されていること原告標章は,被告雑誌が刊行された時点において,需要者である循環器疾
患に係る医療に従事する看護師を中心に,原告の商品表示として広く認識されていた。以下の事実は,これを裏付けるものである。

ア 原告雑誌の販売実績等

原告雑誌は,現在まで20年以上もの長期間にわたり継続的に刊行されている。
発行部数は,各号につき概ね4000部を超えており,増刊号を含めた年間総発行部数は,平成3年ころには5万8000部を,平成15年には7万2000部を超えており,その後,現在に至るまで7万部前後で推移している。原告雑誌は,大型書店を中心に店頭販売もされており,長年にわたり,多くの需要者が原告標章を目にする状況が継続している。

イ 原告雑誌の需要者
原告雑誌は,循環器疾患に係る医療に従事する看護師を主な購読者(需要者)とする専門誌である。具体的には,循環器内科,心臓血管外科及び集中治療室(ICU)等の病棟に所属する看護師が需要者であり,その数は全国で合計6万4599人程度である。

原告雑誌は,病院・医療センター・専門学校などによって定期購読がされており,これらの施設に勤務する看護師等も読者となるから,上記アの販売実績等からすると,需要者のうち相当割合の者が閲覧しているものである。

ウ 原告雑誌以外の同種の刊行物
上記のとおり,原告雑誌は,循環器疾患に係る医療に従事する看護師を主な読者とする定期刊行物であるところ,同様の刊行物としては,訴外日総研が刊行する隔月の会員制雑誌である『呼吸器・循環器 急性期ケア』があるのみである。
したがって,原告雑誌は,長年にわたり,この分野における主要な定期刊行物であった。

エ 広告・宣伝

(ア) 学会誌広告
原告は,看護学会のプログラムや学会誌等において,原告標章を付した原告雑誌の表紙を掲載し又は原告標章をそのまま掲載した多数の広告をしてきた。

(イ) 各種セミナーの開催等
原告は,第4回日本循環器看護学会学術集会において,「ナースが知っておきたいわが国の保険診療の現状」と題するランチョンセミナーを共催し,その際に原告標章を使用している。また,原告主催のセミナーにおいても原告旧標章及び原告標章を使用してきた。



【被告の主張】

以下のとおり,原告標章は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識さ
れているものではない。

(1)原告標章の商品等表示性

原告の商品表示である原告雑誌の題号は,「ハートナーシム³ã‚°ã€ãªã„し「HEΛRT nursing」であり,原告旧標章ないし原告標章ではない。また,原告標章及び原告旧標章の「HEART」は,「心臓」又は「循環器」を指す普通名詞であり,何ら独自性がなく,心臓又は循環器に関する雑誌を発行しようとするときに普通に用いられる表示であって,商品等表示とはなりえないものである。したがって,原告標章は,原告の商品表示ではない。

(2)原告標章が,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されていないこ
と

原告雑誌が需要者の間に広く認識されているとしても,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているのは,原告標章ではなく,「ハートナーシング」ないし「HEΛRT nursing」である。


2 争点2(被告標章は,原告標章と同一又は類似の商品表示であるか)について


【原告の主張】

以下のとおり,被告標章は,原告標章と同一又は類似の商品表示である。

(1)原告標章
原告標章は,別紙原告標章目録記載のとおり,アルファベットの大文字で「HEART」と横書きしてなる標章であり,書体は,いわゆる「Times New
Roman」と同等のものが用いられている。

(2)被告標章
被告標章は,別紙被告標章目録記載のとおり,アルファベットの大文字「HEART」と横書きしてなる標章であり,書体は,いわゆる「Times New Roman」と同等のものが用いられている。

(3)類否
原告標章と被告標章は,外観,称呼及び観念において同一であり,両者は
同一ないし類似していることが明らかである。

ア 外観
原告標章と被告標章は,いずれもアルファベットの大文字で「HEART」
と横書きしてなる標章であり,書体も共通である。

イ 称呼
原告標章と被告標章の称呼は,いずれも「ハート」である。

ウ 観念
原告標章と被告標章からは,いずれも「心」「愛情」の観念が生じる。


【被告の主張】
以下のとおり,被告標章は,原告標章と同一又は類似の商品表示ではない。

(1)原告標章

前記1【被告の主張】のとおり,原告は,原告の商品表示として原告標章を使用していない。原告の商品表示は,「ハートナーシング」ないし「HEΛRT nursing」である。

また,「HEART」は,「心臓」又は「循環器」を指す普通名詞であり,何ら独自性がないものであるから,原告の商品表示である原告雑誌の題号の要部でもない。原告は,原告雑誌のほかに「消化器外科ナーシング」,「オペナーシング」,「ブレインナーシング」などの題号を付した雑誌を刊行しており,このことからしても,原告標章のうち「ナーシング」(看護のための専門誌)の部分の方が「ハート」の部分よりも重要である。

(2)類否

以下のとおり,原告の商品表示と被告標章とは,類似しない。

ア 外観

原告の商品表示である原告雑誌の題号の外観は,被告標章と異なる。また,原告雑誌には,必ずカタカナ表記で「ハートナーシング」と併記されているのに対し,被告雑誌には,「HEART」以外のカタカナ表記はなく,「ナーシング」の記載もない。

イ 称呼

原告の商品表示である原告雑誌の題号から生じる称呼は,「ハートナーシング」であるのに対し,被告標章から生じる称呼は,「ハート」であり,明らかに異なっている。

ウ 観念

原告の商品表示である原告雑誌の題号から生じる観念は,「心臓看護」又
は「循環器看護」であるのに対し,被告標章から生じる観念は,「心臓」又
は「循環器」であり,類似しない。

3 争点3(被告の行為は,原告の商品(原告雑誌)と混同を生じさせるものであるか)について


【原告の主張】

以下のとおり,被告の行為は,原告の商品と混同を生じさせるものである。

(1)被告雑誌の需要者
被告雑誌の主な購読者(需要者)は,原告雑誌と同様に,循環器疾患に係
る医療に従事する看護師である。

(2)取引の実情
原告雑誌は,書店において,表紙が客に見える状態で棚に陳列する,いわゆる「面出し」の状態で陳列されており,表紙で最も注意を引くのは,上部中央の誌名を記載する部分に大書された原告標章である。

書店において,分野を同じくする出版物は同一のスペースに陳列されるのが通常であるところ,上記のとおり被告雑誌の主な購読者(需要者)は原告雑誌と共通であるから,被告雑誌は原告雑誌と同じコーナーに陳列されている。このような状況で,購読者は,表紙上部中央に被告標章が大書された被告雑誌を目にすることになる。

(3)混同のおそれ

前記1【原告の主張】のとおり,原告標章が,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されていること,前記2【原告の主張】のとおり,原告標章と被告標章とが同一又は類似のものであること,上記(1)のとおり,原告雑誌と被告雑誌の需要者が共通であることに加え,上記(2)の取引の実情からすれば,需要者が,被告雑誌を原告雑誌であると誤認,混同するおそれは極めて高い。

執筆者ないし編集企画者が,被告雑誌を原告雑誌であると誤認,混同するおそれもある。実際に,原告雑誌を購入しようとして,誤って被告雑誌を購入した例が生じている。

(4)被告の故意
原告は,原告雑誌を含む17の雑誌について,古いものでは昭和57年から刊行しており,いずれも各専門分野における読者層に好評をもって受け入れられ,着々と出版の実績を上げてきたものである。

ところが,被告は,原告が出版している上記17の雑誌名と同一ないし類似する表示について,平成19年4月以降,指定商品16類の「雑誌等の商品」に係る商標として次々と商標登録出願している。また,被告代表者は,かつて,株式会社オリーブの代表者であっ㠁Ÿéš›ï¼ŒåŒç¤¾ã®å•†å·ã‚’杏林ファルマ株式会社と変更したが,杏林製薬株式会社から商号の使用差止と商号抹消登録を求めて提訴され,敗訴している(東京地裁平成18年(ワ)第17405号,知財高裁平成19年(ネ)第10014号)。そして,上記杏林ファルマ株式会社の住所は,本件訴訟提起時における被告の住所地と同じである。

このことからも,被告が不正競争の意図を有することは明らかである。

【被告の主張】

以下のとおり,被告の行為は,原告の商品と混同を生じさせるものではない。

(1)被告雑誌の需要者
被告雑誌の主な購読者(需要者)は,循環器疾患に係る医療に従事する看
護師に限られるものではない。被告雑誌は,「ナース・コメディカルのための
ハートケア誌」であり,看護師のみではなく,専門外の医師,学生,薬剤師,
理学療法士等,広く医療関係者を対象とするものである。

(2)取引の実情
書店等において,原告雑誌が全て面出しの状態で陳列されているとは限ら
ない。原告雑誌は,種類が多いため,書店でまとめて棚に並べられることが
多く,背表紙にはカタカナ表記で「ハートナーシング」と記載されている。
これに対し,被告商品は書店で平積みにされることが多い。

(3)混同のおそれ
ア 前記2【被告の主張】のとおり,原告の商品表示である原告雑誌の題号
と被告標章とは類似しないから,混同のおそれはない。


イ 書籍には,「ISBN ナンバー」が付されており,書店や取次店は,この番
号を用いており,表紙の大きな文字だけを見て取り次ぐのではないから,
書店や取次店が混同することはあり得ない。

ウ 以下のとおり,読者が原告雑誌と被告雑誌を混同するおそれもない。

(ア) 原告雑誌がB5判であるのに対し,被告雑誌はA4判である。

(イ) 原告雑誌は「HEART」の部分の色彩が黒であるのに対し,被告雑誌
は赤である。

(ウ) 被告雑誌の方が原告雑誌よりも頁数が多く,全てカラー頁であるのに
対し,原告雑誌は増刊号を除くと,ほとんど白黒頁である。原告雑誌の
増刊号は,全頁2色刷であるが,カラー頁ではない。

(エ) 原告雑誌の定価が本体価格1800円であるの対し,被告雑誌の定価
は2000円である。原告雑誌の増刊号の定価は4000円もする。

(オ) 原告雑誌と被告雑誌の表紙には,それぞれの出版社名も記載されてい
る。

(カ) 前記(1)のとおり,被告雑誌の読者は,広く医療関係者であり,記事の難易度が原告雑誌より高度なものである。

(4)前記【原告の主張】(4)について

本件と関連性のない主張である。

4 争点4(損害額)について


【原告の主張】

原告は,被告の行為により本件訴訟を提起することを余儀なくされた。本件事案の内容及び本件訴訟の経緯等からすれば,被告の行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,少なくとも100万円を下回ることはない。


【被告の主張】

否認する。