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わかる! 使える! 契約書の基本

契約書は経営、起業・独立、副業に必須のスキルです! 自分で契約書がつくれると楽しいですよ

契約解除の有効性?! まるでドラマな面白い判例 4

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先日から読みこんでいる面白い判例
まだまだ続く。

いよいよ争点に対する、
当事者の主張が繰り広げられる。

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3 争点に関する当事者の主張

(1) 争点1(本件専用実施権設定契約は,本件解約通知から2か月が経過したことにより終了したか)について

[原告の主張]

本件専用実施権設定契約では,契約期間は1年間とされ,2か月前の解約予告により契約期間中でも契約を解約することが可能である(同契約第4条)。

原告は,平成21年10月15日に被告MFI社に対して本件解約通知をしており,同日から2か月間が経過したことにより,本件専用実施権設定契約は終了した。

なお,被告MFI社の専用実施権の登録は,期間を「本特許権の存続期間」として登録されており,本件専用実施権設定契約の内容と異なっているが,このような登録方法は,実際の専用実施権設定契約のとおり専用実施権の期間を区切って登録すると,期間を更新する都度別途の登録が必要となる事務的な煩雑さを避けるため,実務上広く行われているものである。


[被告らの主張]

原告及び被告MFI社は,平成20年8月20日付けで本件覚書を作成し,本件専用実施権設定契約の第4条の規定を削除して,専用実施権の存続期間を,特許登録原簿に登録されているとおり本件特許権の存続期間とした。

したがって,本件覚書の締結後に,原告が本件専用実施権設定契約の第4条に基づき同契約を解約することはできない。

なお,原告及び被告MFI社が本件覚書を作成したのは,原告らが,本件専用実施権の登録手続を依頼したE弁理士に対して本件専用実施権設定契約書を送付したところ,同弁理士から,本件専用実施権設定契約では存続期間に制限を設けているのに対し,専用実施権の登録では存続期間が本件特許権の存続期間となっているとの指摘を受けたためである。

当時,原告の代表取締役であったAと,被告MFI社の代表者であったDは,本件専用実施権設定契約書は,原告が以前(平成15年)に株式会社サイモンズ(以下「サイモンズ社」という。)との間で締結した専用実施権設定契約書(甲9。以下「原告・サイモンズ社間の専用実施権設定契約書」といい,同契約書に基づく契約を「原告・サイモンズ社間の専用実施権設定契約」という。)の内容をそのまま踏襲したものであり,存続期間の定め(第4条)も,原告・サイモンズ社間の専用実施権設定契約書の記載に倣ったものにすぎず,原告と被告MFI社との間では,上記専用実施権に特段期間制限を設ける必要はなかったことから,両者で合意の上,本件専用実施権設定契約における期間制限の規定を削除することとし,本件覚書を作成したものである。

また,本件覚書は2通作成されたが,2通とも被告MFI社において保管されており,原告(A)の手元にはなかった。


[被告らの主張に対する原告の反論]



Aは,ペンジュラム社との間で本件株式譲渡契約を締結する以前に,ペンジュラム社に対して本件覚書を示したことはなく,その説明をしたこともない。むしろ,Aは,本件株式譲渡契約の締結に先立ち,ペンジュラム社に対し,本件専用実施権設定契約の契約書を示した上,同契約は当事者が2か月前に予告することにより解除することができ,原告・サイモンズ社間の専用実施権設定契約もそのようにして解除したと説明していた。

また,Aは,ペンジュラム社に対し,DやE弁理士との関係を穏便に終わらせたいので,その説得期間として2週間及び予算1億円(2か月を待たずに専用実施権を解除するためのDやE弁理士らへの和解金)が欲しい旨の申し出をしていた。


 ペンジュラム社が原告を買収する目的は,原告の有している本件特許権を取得し,同特許を活用してビジネスを行うことであったが,ペンジュラム社は,Aの上記説明を聞き,同社が原告を買収すれば,本件専用実施権設定契約の第4条に基づき同契約を解約することができると認識した。

仮に,後記[原告の反論に対する被告らの反論]のとおり,ペンジュラム社が,本件専用実施権設定契約書の存在を知らず,被告MFI社の専用実施権の存続期間が特許登録原簿記載のとおり本件特許権の存続期間であると認識していたのであれば,ペンジュラム社は,Aから原告の株式を買い取ることはなかった。

他方,ペンジュラム社は,被告MFI社に専用実施権が設定された状態では本件特許を活用することができないので,Aとの間で9月30日付け株式譲渡契約を締結するに当たり,決済日を同年10月13日とし,仮に,Aが,上記決済日までに本件専用実施権設定契約を解約して,被告MFI社の専用実施権の登録を抹消した場合は,Aに対する報酬として,2000万円及び平成21年9月30日以後に原告がパチンコ関連企業から取得する本件特許の使用料の20%を支払うことを約束した(甲25。以下「本件合意書」という。)。

また,ペンジュラム社は,本件合意書において,Aに対し,1年間に1300万円を本件特許権が失効するまでの間支払うことを約束した(なお,本件合意書の有効期間は,平成21年10月13日までと定められた。)。


 ところが,Aは,被告MFI社(D)の了解を得ずに9月30日付け株式譲渡契約を締結していたため,専用実施権の抹消依頼に関する被告MFI社との交渉は難航した。このような被告MFI社の反対を受けたAは,ペンジュラム社に対し,9月30日付け株式譲渡契約を白紙に戻したいとの申し出をするなどしたが,最終的には,平成21年10月13日,ペンジュラム社との間で10月13日付け株式譲渡契約を締結し,原告の代表取締役を退任した。

また,Aは,上記契約の締結に当たり,ペンジュラム社に対し,本件専用実施権設定契約は同契約第4条第2項に基づき解約することができることを保証した。
Aは,上記のとおり原告の代表取締役を退任すると,同日,原告との間で顧問契約を締結した(乙4の15。 以下「本件顧問契約」という。)。

本件顧問契約では,Aが原告の顧問に就任し,顧問報酬を年800万円とすること,同契約の有効期間は契約締結の日から1年以内とし,有効期間満了の1か月前までに原告又はAが契約終了の通知をしない限り,契約は更に1年間有効となり,以後も同様とすることなどが定められた。


 Aに代わって原告の代表取締役に就任したBは,就任後直ちに,被告MFI社に対して本件解約通知を行った。これに対し,被告MFI社は,本件覚書を原告に送付し,上記解約は無効であると主張した。

これに驚いたB及び原告代表者(以下,両名を併せて「Bら」ということがある。)らは,平成21年11月22日,原告代理人らとともにAの事務所を訪れ,本件覚書の作成経緯等について尋ねた。

これに対し,Aは,本件覚書を作成したことは覚えていない,本件覚書により本件専用実施権設定契約第4条第2項の規定が無効になるのであれば本意ではない旨を述べ,原告代理人らの求めに応じ,上記回答を記載した書面(甲28の1)を作成した。


 以上のとおり,本件覚書は,本件株式譲渡契約の締結後に,突然登場したものである。

また,本件専用実施権設定契約の締結日(平成20年7月10日)と本件覚書の日付(同年8月20日)は極めて近接しているが,仮に,原告と被告MFI社とが本件覚書の内容を合意したのであれば,本件専用実施権設定契約書の該当条項を削除すれば足りるものであり,本件覚書が同覚書の日付の日に作成されたことには疑問がある。

これらの事情を考えると,本件覚書は,ペンジュラム社による原告の買収に対して難色を示していたDが,Aと共謀して,ペンジュラム社が原告を買収しても本件専用実施権設定契約を解除できないように画策するために作成した,内容虚偽の文書であるといえる。

Aは,本件株式譲渡契約を締結し,Aが原告の代表取締役を退任した後に,原告との間で,Aを原告の顧問とする顧問契約を締結することを予定しており,ペンジュラム社のBらも,Aに対し,上記顧問契約は本件特許の存続期間中継続されると約束していたが,ペンジュラム社から示された顧問契約書の案では,顧問契約の期間が1年間とされ,1年ごとに更新する形となっていることに不安を感じていた。

また,Dも,Aに対し,Aはペンジュラム社に騙されており,顧問契約は数年で打ち切られる可能性があると指摘し,Aの不安を煽っていた。

そのため,Aは,買収後の原告がAに対する顧問料の支払を止めることがないよう,ペンジュラム社に揺さぶりをかけるための安全弁として,Dの求めに応じて本件覚書を作成したものである。

このように,本件覚書は,ペンジュラム社による原告の買収を妨害するためだけに作成されたものであって,本件覚書のとおり本件専用実施権設定契約の内容を変更する意思の下に作成されたものではない。

したがって,本件覚書は,内容虚偽の文書であり,又は心裡留保により無効である。




さらにつづく。。。